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郭の外

瞼を通り抜けてきた光は太陽の光だった。早朝だ。ノイズはない。苔の生えた地面。旧校舎の屋上だった。

「先輩!」

屋上には伊藤先輩の姿はなく、ジェイクが倒れていた。

「おい、大丈夫かよ」

さっき見たジェイクの状態を考えたら大丈夫なわけはなかったのだが、仰向けの彼の表情は決して虚ろなものではなかった。

「ん・・・あ、洸佑、俺」

ジェイクが目を開いた。俺は安心だか喜びだか分からないめちゃくちゃな感情で目が潤んだ。俺の涙がジェイクの頬に落ちる。

「ばか、なに泣いてんだよ」

「うるせー、無事でよかった」

俺はそのままジェイクの胸に顔を伏せた。確かに心臓の音がする。生きてるんだ。

ジェイクは俺の頭に手を載せる。

「なぁ、でもどうして俺たちは助かったんだ?」

「伊藤先輩が」

「え」

「ジェイクと俺に偽の写真を渡していたんだよ。恐らく14人の話は正しかったみたいなんだけど、持たされた写真は偽物だった。それを使って自分は本物の写真を握って犠牲になるつもりだったんだ。ジェイクにも古川先輩がこの写真で助かったなんて嘘までついて」

「なんでそこまでして俺たちを…」

俺は先輩に渡された偽の写真を見る。そう言えば裏側に何か書いてあったような。そう思い写真を裏にする。そこには、

『あちら側に行ったら僕はもう力になれない。二度と関わったらいけない。生きて。』

そう記されていた。そう、伊藤先輩は僕らの代わりにあちら側に行ったんだ。

厄災は止められなかった。また3年後にも起こるかもしれない。

でも、僕らはもう関わってはいけない。

伊藤先輩が、勇磨が、賢哉が犠牲になって繋いでくれたこの命を無駄にはできない。

ジェイクと俺は明るみだした空の中、旧校舎を抜け家路についた。

「終わったんだよな」

「うん。これで終わり。また3年後は分からないけど」

俺たちは、あとは黙って歩いた。背負うものは多かった。でも、生きていた。俺はジェイクとも途中で別れて自宅を目指す。

ポケットの中に入っていたウォークマンを取り出してイヤフォンを付ける。

お気に入りの曲を選曲して再生ボタンを押す。

ザザッ

一瞬ノイズが入ったような気がしたが、すぐに曲が流れだした。


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