情景を食う
商品名:芳醇なバターの味わい 塩バター味ポップコーン
種別:スナック菓子
メーカー:セブンイレブン
季節の菓子というものがあるように、その場所その場面でのこれぞという菓子がある。映画館で食うポップコーンなどは代表的なものであろう。
映画館という施設は色々な菓子を取り揃えてはあるが、やはり一番はポップコーンであり、ホットドッグやチュロスなどは外道と言ってしまって差し支えない。
そんなポップコーンではあるが、私の食人生を振り返ってみても、映画館以外で食したことはとんとないのである。
もちろん皆無というわけでは無いのだが、食った記憶はかすかにあれど、味の記憶はほとんどない。思うに、調味料のせいであろうと推測する。
トウモロコシという野菜は非常に多芸で、多種多様な菓子に使われている。カールしかりうまい棒しかりキャベツ太郎しかりである。これらに共通するのは、調味料によるくどい味付けである。
以前ハッピーパウダーについて一言述べたことがあるが、調味料というのは何にでもかければ良いというものではない。かけられる食材にも吟味が必要なのである。
トウモロコシの天与の分というのは、おそらく調味料に添えられてこそであると私は思う。
ポップコーンというのはコーンの形状を残した菓子である。だがそれが逆に「美味いコーンを食わせねば」という使命感につながり、調味料を抑える失敗につながったのであろう。
その悪習を見事なまでに打ち砕いたのがセブンイレブンの料理人で、濃厚な塩バターの味はまさに至高である。
やはりバターは塩と合わせるのが抜群にうまい。このとき、互いの味を損なわぬようになどと余計なことを考える必要はない。バターも塩も美味いのだから、気にせず多めに入れればよいのだ。コーン自体も非常に軽いため、ビールの缶を持つ間もないほどに指が止まらぬのである。
しばらく食べ続けてふと気づくと、指の付け根あたりまでがべとべとに濡れている。これこそ美味さの証ではある。
食通を自認するものとしてはいささか体裁が悪いのも確かであるが、ここは映画館ではないのだから、気にすることもなかろう。




