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無職は今日も今日とて迷宮に潜る【3巻下巻12/25出ます!】【1巻重版決定!】  作者: ハマ
2.ダンジョン21階〜30階

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五十八日目

 朝から起床すると、大きく口を開けてあくびする。


 女王蟻の蜜を少しだけ飲んでクイッと目を覚ます。

 残りペットボトル一本となった蜜を眺めて、悲しい気持ちになる。可能ならむしゃぶりついて、全て飲み干したいところだが、そんな真似をして蜜を失っては、明日から何を楽しみに生きていけば良いのか分からなくなってしまう。


 蜜が無くなったら……俺は…。



 蜜を収納空間に直して、朝食を摂り出掛ける準備をする。

 今日は先日失ったテントを購入するために、ダンジョン近くにあるショッピングモールに向かう予定だ。


『探索者協会はダンジョンから採れる資材を独占しています! ダンジョンから得られる物は、全て平等に還元されるべきなのです! それをネオユートピアなる一部の富裕層のために使用されています! こんな事を許していいのでしょうか!? 神が与えた……』


 駅を降りると街頭演説している人がいる。

 選挙関連のものかと思ったが、どうやら違うようである。

 そんなに主張するなら自分で潜って、自分で販路を確保すれば良いのになと思いながら、素通りしてショッピングモールに向かった。



 テント高いなー。

 相変わらずの高額なテントに腰が引けてしまう。

 これまで使っていたのは、ソロキャンプ用のテントを動画サイトを見ながら加工した代物だ。

 また同じ物でも問題ないのだが、僅かな間にグリーンスライムに消化されるほど弱いのは心許ないし、それではゆっくり休めない。


 前回よりも多くの探索者用のテントが展示されており、客も多くなっている。

 パーティで見に来たのか、五人以上のグループがチラホラと見える。


 俺も一人寂しくテントを見て回るが、やはり高い。

 セール品と書いてある物もあるが、それでも数百万円している。一体、何でそんなに高いんだと疑問に思ってしまう。

 素材もあるのだろうが、それだけならここまで高額にはならないはずだ。


 少し気になってテントを注意深く見ていく。

 テントの表面、内側、裏側と隅々まで見て写真を撮ったりしていると、背後に店員が立っていた。


 あっすいません。

 別に変なことしようとしたわけでは……。

 はい、気を付けます。


 どうやら他のお客さんの邪魔になっていたようだ。

 俺は横に避けて、普通のキャンプに使用されるテント売り場へと向かう。そこでまた同じように、ソロキャンプ用のテントを購入した。


 それからギルドに向かうと、ミシンと布、魔法陣を縫う糸を購入した。


 展示されているテントを見て気付いたのだが、テントの裏側に無数の魔法陣が刺繍されていたのだ。

 一つひとつの魔法陣は小さかったが、その数と種類が非常に多かった。魔法陣の配置も効果に関係しているかもしれないが、裁縫スキルを持つ俺ならば真似できるのではと思ったのだ。

 著作権などの問題はあるかも知れないが、個人で使う分には問題ないだろう。てか、見つからなければ大丈夫さ、きっと。


 購入した物を収納空間に入れると、俺はダンジョンに向かった。




 ダンジョン21階


 今日もしけたオークの顔を拝んでいる。

 顔つきは凶暴なのに、どこか疲れているようにも見えるのは何故だろうか。

 きっと、上司から無理難題を言われて精神的に参っているのだろう。


 現に盾を持った人相手に、棍棒でひたすらに打ち付けている。

 アレは俺もやらされたなぁ。

 勿論、打つ側ではなく打たれる側だが。


 あの人達もオークも大変だなと思いながらその様子を眺めていた。すると、その内の一人がこちらに気付いて近付いて来る。


 はい、何でしょう?

 えっはい田中ですけど、おたくはどちら様でしょう?

 ガーディアンHDの社員?

 ああ、で、なんか用で?

 え、後藤田部長クビになったの!


 俺は笑った。

 あの部長がクビになった。はっきり言ってざまあみろである。人にあんな拷問のような事をやらせたのだ。当然の報いではないだろうか。


 ただ、彼等からすれば笑えない状況らしく、後藤田部長がこれまでやって来た業務が、全て彼等に伸し掛かって来たようだ。

 後藤田部長がやっていた業務。

 工房から寄せられた装備品のテスト、商品の改善案や取引先への新商品のプレゼン。その他諸々を行っていたようで、後藤田部長が抜けた穴は大きいそうだ。


 ヘェ〜と話を聞いていると、社員からため息を吐かれた。

 気持ちは分かるけどなと同意されて、後藤田部長は逆恨みする上に、手段を選ばないところがあるから気を付けろと忠告された。


 ……大丈夫だよね?


 少しだけ怖くなった。

 冗談ですよねと尋ねるが、その社員は首を振ってマジだと答える。そして、なにかを思い出したように口を開いた。


「ああ、田中。お前まだ会社に名前あるから、ちゃんと退職手続きしに来いよ」



 え?



ーーー


田中 ハルト(24)

レベル 17

《スキル》

地属性魔法 トレース 治癒魔法 空間把握 頑丈 魔力操作 身体強化 毒耐性 収納空間 見切り 並列思考 裁縫 限界突破 解体

《装備》 

俊敏の腕輪 暴君の戦斧 神鳥の靴 守護の首飾り 魔鏡の鎧

《状態》 

デブ(各能力増強)


ーーー

明日の投稿で終わって、書き溜めに入ります。

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― 新着の感想 ―
おもしろい(´・ω・`)
[一言] まさかの、退職届不受理。 え、まじ? 労基、GO!(_7
[一言] デブネタを引っ張り過ぎ。
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