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無職は今日も今日とて迷宮に潜る【3巻下巻12/25出ます!】【1巻重版決定!】  作者: ハマ
8.ネオユートピア

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ダンジョン攻略24

12月25日3下巻発売!

 ダンジョン81階に到着すると、早速ヨットを取り出して海に浮かべる。

 海とはいってもダンジョンの海なので、浮かない可能性があったが、どうやら大丈夫そうだった。


 俺は杖を取り出して、トウッとヨットに乗り込むと、帆を下ろして出発進行! と風を当てる。だが、次の瞬間だった。真下から触手が伸びて来て、俺のヨットを破壊してしまったのだ。


 宙を舞う俺。

 何かの残骸が目の前にあり、それがヨットだと気付くのに数秒掛かった。

 それだけ高く打ち上げられたというのもあるが、俺の脳みそが理解するのを拒んでいたというのも大きいだろう。


 嘘だろ? ……許さん!


 杖先からレーザーを放って触手を薙ぎ払い、海を割ってイソギンチャクのお化けを燃やし尽くした。


 よくも俺のヨットを!


 風を操り残骸をかき集める。

 まだ致命傷ではないはずだ。今直ぐに治癒魔法を、いや蘇生魔法を使えば、俺のヨットは生き返るはずだ!


 なんてはずもなく、残骸は残骸でしかなかった。

 物を直す魔法なんて知らないし、スキルだって無い。

 もう、元には戻らない。


 くっ! 悔しさのあまり、杖を握り締めてしまう。

 痛い⁉︎ と悲鳴が聞こえるが、俺は構わず握り締めた。

 これは願いだから、俺には出来なくても、他の奴なら出来るかも知れないから。だから、必死にお願いするのだ。


 するとどうだろう、奇跡が起きてしまう。

 俺の魔力を吸い上げた杖から根が伸びていき、ヨットの残骸を取り込んで行く。そしてそれは、ヨットの形を取り戻して行き、前よりも頑丈な一隻が完成した。


 これで文句ないでしょ⁉︎ と杖から声が届く。

 流石はイルミンスール、俺の要望に応えてくれる。


 再び帆を張り、出発進行! と風を送る。

 今度こそ順調に進み始め、直ぐに速度を上げて行く。

 そして、再び真下からの攻撃にさらされた。


 空中に浮くが、今度はヨットは破壊されなかった。流石イルミンスールである。

 やるじゃないか! こいつ頭大丈夫かと思ってごめん!

 ちゃんと武器をヨイショしつつ、ヨットに魔力を送り魔法を使う。


 このヨットは、イルミンスールの杖で作られている。ならば、このヨット自体が杖と呼んでもいい代物になっている。


 拡散した光魔法は、広範囲にいる水中のモンスターを消滅させ、海を沸騰させた。

 こりゃやばいと、帆に風を送り離脱する。

 ギリギリだった。

 先程までいた場所が、水蒸気爆発を巻き起こし、巨大な水柱を上げていた。


 この程度の爆発で俺が死ぬことは無いが、空高く舞い上がって移動がリセットされるのは嫌だった。

 

 杖が大きくなったことで、魔法の威力は分散されたが、元が強力なせいで気にする必要は無かった。

 とはいえ、次は調整して魔法を使った方が良さそうだな。




 ヨットを手に入れてからというもの、探索は順調に進んだ。

 順調に進んだけど、変わらない風景に心が病みそうになった。

 移動が船に乗っているだけというのも、地味にやることが無い。もちろん、風は送り続けているけど、そんなのは片手間ですむ。


 とにかく暇。

 暇過ぎて熱唱して時間を潰しているのだが、途中で喉がやられてしまって歌えなくなってしまった。

 漫画でも読もうかと思ったら、収納空間に漫画は残っていなかった。漫画なんて読む暇ないと、フウマに渡していた。


 何をして時間を潰そう。

 そう考えていると、水の上に宝箱があるのを発見した。


 おお、ここにも宝箱ってあるんだ。

 そう感心して近付くと、うんまあ、罠だったね。

 疑似餌よろしく、舌の先にそいつが欲しがる物を投影する能力なのだろう。下には巨大な魚がおり、ヨットごと飲み込もうとしていた。


 ビーッと始末すると、そいつの腹の中から本物の宝箱が現れた。しかも一つではなく五つも。

 こりゃ大漁大漁と宝箱を回収する。

 てっきり海だから海底にあるものだと思っていたが、どうやらモンスターからドロップする仕組みのようだ。


 中身を確認して行くと、うん、まあ当然だよね。

 五つ目の宝箱を開けた時、トラップが発動した。


 強烈な光に包まれながらも、即座に動けるよう警戒する。だが、何か起こることもなく、モンスターの亡骸が無くなっているくらいで特に変化は無かった。


 ……いや、あった。


 背後に、前の階に続く道があった。

 つまり、振り出しに戻ってしまったというわけだ。ちくしょう。



---



 開き直った。

 一回地上に戻り、暇つぶしに良さそうな物を購入して、ベッドで休んだ翌日、再々チャレンジのダンジョン探索を開始した。


 もうこれで最後にしよう。

 これで、九十階層まで行くのだ。


 ヨットに乗り込み、当たり前のように仕掛けて来るイソギンチャクを葬り、出航する。

 全速力で進んでも、船の速度は海のモンスターには勝てない。


 並行して進むシャチのようなモンスターは、不可視の力を走らせ、俺のヨットを掴もうとする。

 空間把握のスキルが無くても、その力は感じ取れる。

 不屈の大剣で不可視の力を切り裂き、横薙ぎの剣閃でシャチのモンスターを斬り飛ばした。


 水中から魚群が現れる。

 こいつらは、前にも現れたモンスターだ。

 当たり前のように、光属性魔法で焼き払う。これで終わり、そう思ったが違った。

 海に落ちた瞬間に傷が治り、復活したのだ。


 空を飛ぶだけでなく、こんな能力まで持っているのか。本当に奈落のモンスターに近付いて来たな。これは、気を引き締めないといけないな。


 なので、跡形もなく消滅させる。


 奈落に近付いていても、まだまだ物足りない。俺の脅威にはならない。


 風でヨットを操り、魔法でモンスターを倒し、漫画を読みつつ進んで行く。やがて夜になり、ヨットの上で仮眠をするが、ペースを落とさずに突き進む。

 そんな渡航が数日続くが、それでも終わりが見えない。

 上空に上がって確かめたいが、元の場所に戻るかもと思うと、とてもじゃないけど試す気にもならなかった。


 一週間が過ぎる頃、暇つぶしに持って来た物が無くなった。

 二週目から三週目は、暇過ぎてスキル【自動人形生成】を使って、人魚のオートマタを作り、モンスターと戦わせてみた。

 四週目から五週目は、俺の鎧を模倣した戦士を作ってみたり、いろんな武器を持たせて、動きを調整したりした。

 六週目から七週目は、【自動人形生成】を改良に改良を重ねて、戦艦を作り出した。おかげで、収納空間に入れていた大量の土は無くなったが、満足する逸品が出来上がった。


 戦艦に乗り込むと、俺の意思に従って出航する。

 残念ながらヨットよりは遅いが、これは仕方ないと諦めるしかない。何故ならこれは、男のロマンを詰め込んだ物なのだから。


 男なら一度は憧れる戦艦。

 名前にヤマトなんて付いてたら、テンション爆上がり間違い無いだろう。

 最強の戦艦で、世界中の海軍を相手に無双する。そしてゆくゆくは世界征服。

 海賊王なんて目じゃないくらいの、スケールの大きな夢物語。


 男ならみんな、心が熱くなるだろう……。


 ……うん、ごめん嘘ついた。


 全然テンション上がらないや。

 一人で大きな船に乗っても、寂しいでしかない。

 こういうのは大勢で、力を合わせて成し遂げるから楽しいのだ。一人だけだと、ただ海を眺めているだけで終わる。

 なんて寂しいんだろう。

 モンスターも戦艦から放たれるレーザーに焼かれて死んでしまう。我が艦は圧倒的ではあるが、俺のメンタルをゴリゴリに削ってしまう。ついでに、戦闘中は魔力の減りもリミットブレイク・バースト並みに減っている。


 なんて非効率な戦艦なんだろうか。

 このままだと、五日間くらいで魔力も底を突きそうだ。


 一日稼働させたら、またヨットで行こう。

 そうしようと決めて、俺は寝室に向かった。



 翌日、船艇に行ってみると、宝箱が百個近く積まれていた。

 これはどうしたのだろうかと眺めていると、外で戦艦がモンスターを倒すと、モンスターからドロップしたであろう宝箱が取り込まれていた。


 どうやら、俺が寝ている間に、モンスターを倒して集めた宝箱だったようだ。


 俺はとりあえず、全部外に放出……なんてもったいないことも出来ず、愚かにも開けようとしている。


 ……ダメだ。ここで開けてトラップが発動したら、また一からスタートになるかも知れない。

 そんなことになったら、この二ヶ月近くが無駄に終わってしまう。それは決して許されない。


 なのに、何故か手が宝箱に伸びてしまっている。


 まずい、これはまずい。

 何とかしないと、何とか目の前から消さないと……と考えて、収納空間に全部ぶち込んだ。


 ふう、目に毒だったぜ。


 これは全部終わってから開封しよう。

 どうせ何が出ても俺は使わないだろうから、最悪封印しっぱなしでも問題ない。


 今も増え続ける宝箱を背に、俺は外に出る。

 イルミンスールの杖を取り出して、ヨットに姿を変化させると、戦艦を収納空間に取り込んだ。


 浮遊感があるが、それも直ぐに終わり海に着水する。

 同時に、真下にいるモンスターを魔法で倒す。


 戦艦は目立つようで、多くのモンスターをおびき寄せていた。これはもう、夜間だけ出すようにした方が良さそうだ。


 それからも、何も無い日々が続く。

 夜だけは戦艦を取り出して、ゆっくり休んだり。

 暇なので、鎧の戦士と模擬戦してみたり、人魚の自動人形を出しっぱなしにしていると、自我っぽい物が芽生え始めていたりといろいろあった。


 人魚の扱いはまた考えるとして、ようやくだ。

 ようやく目的地に到着した。


 そこには島があり、島には似つかわしくない建造物があった。

 鉛色の楕円形の大きな建物で、どこに入り口があるのかも分からない。

 ここが、この階層の終着点。

 建築物をぐるっと周り杖の指し示すところへ行くと、地面から球体が現れた。


 敵か? と警戒するが、特に何もなくただ文字で『暗号を示せ』とだけ書かれていた。

 何だよ暗号って? と思っていたらイルミンスールの杖から蔦が伸びて来て、その球体に触れる。すると、文字がすらすらと並べられ、『生命ある世界に救済を』と記されていた。


 何のこっちゃ、という感想は置いておいて、暗号は合っていたらしく建物の一部が開いた。


 ここで気付いたのだが、もしかしてこの階層は、この海にある暗号を回収して、最終的にここにたどり着くのではないだろうか。

 俺の推測は合っていたのか、杖から「そうだよ」いう思念が送られて来る。


 マジか。

 ここに到着するまで二ヶ月近くも経っているのに、別の場所にも行かないといけないって、こんなの無理ゲーじゃん。


 二号はよくクリア出来たな。

 感心していると、この階を突破するのに五年掛かったのだという。

 ずっと潜っていたわけではないだろうが、それでも凄まじい。

 俺はほとんど暇していたのに対して、あいつは徒歩で各地を渡りたどり着いたんだ。どれだけ大変だったか、想像も付かない。


 きっと俺だったら発狂している。

 そんで、フウマと喧嘩してイルミンスールの杖をへし折っていただろう。


 ……冗談のつもりで想像してみたら、案外ありそうで怖かった。


 まあ、そんなのは放っておいて次の階である。と思って建物に入ったのだが、そこに階段は無かった。


 あるのは五つのポータルと、更に奥に続く廊下。

 杖は廊下の先を指し示しており、この奥に何かがあると教えてくれる。


 俺は奥に進む。


 その先にあった物は、ダンジョンの終わりとその時代だった。

81階層

海のフィールドにある四箇所の島から暗号を回収し、最終的に中央の島に向かう。各島には、次に向かうべき島の位置が記されており、最低でも二ヶ月以上の移動時間が必要になる。

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― 新着の感想 ―
人魚ーwまじでどうするんだろう? この力つかえば杖も元?の人型の姿再現できるな 戦艦がレーザー装備の自動宝箱回収機になって笑う宝船やん そしてダンジョンもいよいよかぁ五つのポータルとはいったい……
ダンジョン終わっちゃった………(・ω・)
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