1巻発売記念SS 異世界? 転生、ミーノ君!
申し訳ありません。
投稿するの忘れてました。
1巻発売記念、WEB用ショートストーリーとなっています。
ゲロよりもドブよりも悪辣な臭いが最後の記憶だった。
ふわふわとした感覚の中で、最悪な臭いの記憶が再生される。全身が怠く、痛みでのたうち回りながら憎しみの最後を迎えた。
そんな最後を迎えたはずの本田実だったが、新たな産声を上げて転生していた。
「ミィー! ミィー! ミィー!」
産声が少しおかしな気がするが、喉からはこの音しか出て来なかった。
転生したのだと理解したのは、目が見えるようになり母親の顔が認識出来てからだ。
「ミーノ、起きたのね。黒い目は珍しいわね。英雄様の翼と同じ色、きっと祝福されたのね」
実ことミーノを抱き上げる母は美人、だと思う。他の箇所に、容姿が気にならないくらいの特徴があるのだ。
ピクピクと動く猫の耳、ゆらゆらと揺れる猫の尻尾。ニャニャと触れてみると、暖かくてそれが作り物でないと分かる。
そう、母は獣人と呼ばれる種族だったのだ。
それはつまり、母から産まれたミーノも白猫の獣人として新たな生を受けていた。
「ミィーーー」
不満がある訳ではない。どんな形であれ、生きていられるのだ。前世での、本田実として失敗した事を二度としないように胸に刻み、今度こそ生を真っ当する。
そう小さな手を握って決意を固めるのだが、タッタッタッと軽快な足音を聞いて、心が折れそうになっていた。
「ママー、私にもミーノ抱っこさせてぇ」
現れたのは、母に似た白猫の獣人シャーリーだ。今世の姉になり、年齢はまだ五歳くらい。
「シャーリー廊下は走らないの、危ないでしょ」
「えー、大丈夫だよぉ、物には当たらないから」
「物じゃなくて、パパに当たったでしょう」
「あれはわざとだよ!」
「余計駄目でしょ⁉︎」
昨日、父に抱っこされていると、シャーリーに突撃されて転びそうになったのだ。父も猫の獣人なので、一回転して無事に着地したが、生きた心地がしなかった。
「いいから、抱っこさせてぇ〜」
「はいはい」
無情にも母の手からシャーリーに渡る。
悲しげに「ミィ」と泣いても、「かわいい」とギュッ!と抱きしめられてしまう。
「ミィ〜」
体が締め付けられて苦しい、という思いは誰にも届かなかった。
お昼が過ぎると、母親はミーノを自動で動くベビーカーに乗せて、買い物に出掛ける。
シャーリーは友達と遊びに行っており、今は近くにはいない。おかげで周囲の景色に意識を向ける余裕が出来た。
ベビーカーからは、雲ひとつない青空が見える。というより、転生してから雲を見た記憶が無い。その代わりに沢山の島が浮いており、地上と島、島と島を繋ぐ光が走っていた。
そして何より、大きな大きな巨大過ぎる樹木が聳え立っていた。
「今日も、ユグドラシル様のご加護がありますように」
母が巨大な樹木に祈っている。
俺もあの圧倒的な存在に祈るように「ミィ」と鳴いた。
ここは実在する神、世界樹ユグドラシルによって守られた世界。
なんの因果か、二度目の人生を歩む事になった世界である。
どうか、1巻手に取ってもらえると嬉しいです!
それでは、失礼いたします。




