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無職は今日も今日とて迷宮に潜る【3巻下巻12/25出ます!】【1巻重版決定!】  作者: ハマ
1.ダンジョン1階〜20階

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十七日目

 今日は朝から履歴書の作成を行なっていた。

 昨日言われてブチギレはしたが、確かにそうだなと思うところもあったのだ。


 昨日のうちに証明写真も撮っておいたし、取り敢えず今日は応募書類も作成しようと手を動かす。


 履歴書を書いていると、昨日貰った名刺が目に付いた。

 本田という苗字は、ホント株式会社を作った創業者一族の名前だ。親族経営を行なっているのは知ってはいたが、副社長という地位に就いている彼女が、どうして一人でダンジョンにいたのか疑問が残った。


 ああ、因みに彼女の年齢は三十代後半だった。

 見た目は二十代後半だったが、彼女の若々しい姿からこの年齢を想像するのは難しいだろう。


 俺はスマホをいじって、ホント株式会社のホームページにアクセスする。

 トップページに会社名と業務内容、最近の情報などが載っている。メニュー画面に触れて会社役員を選択すると、彼女の顔写真が表示されており、その下に副社長の文字。

 どうやら名刺の情報に間違いはないようだ。


 彼女と会う約束をしたのは明日の昼、会社に来てくれと言われたのだ。

 助けたのはこっちなのに来いとは何事だ!とは思ったが、お礼はしっかり行うと言われたので渋々頷いた。


 まあ、明日またあの会社に行くのかと思うと気が滅入るが、副社長を助けた事でデカい顔が出来るかもしれない。

 そしたら昨日の面接官に文句言ってやろうと思っている。


 ん?器が小さい?

 そんなもん最初からだ。




 履歴書を書き終えた俺は、郵便局から発送してダンジョンに向かう。


 今日は12階で採掘をしようと考えている。

 ピッケルを買ったは良いが、使うのを忘れていた。

 一応、動画サイトでダンジョンの採掘方法を見て勉強したし、どんな物が売れるかも調べてあるので大丈夫だろう。


 邪魔なモンスターを蹴散らし、ピッケルを収納空間から取り出して壁を削って行く。


 ヨッホヨッホとガンガン削って行くが、一向に売れそうな物が出て来ない。

 場所が悪いのかと思い場所を移動していると、他に採掘を行っている探索者を発見した。

 四人組の探索者で、男性一名女性三名のハーレムパーティだ。


 少しだけ殺意が湧いた。


 四人組は背筋に悪寒が走ったのか、ビクッとしてキョロキョロ見回していたが、気のせいだと思ったのか作業に戻った。


 そのパーティの作業をこっそりと観察していると、一人だけ違う事をしている子がいた。

 服装からして魔法を専門としている装備に身を包んでおり、大きめの杖を掲げて壁に向かって何かをやっていた。


 少しすると壁が砂に変わると大きく崩れ、鉄鉱石や魔鉱石が流れ落ちていた。


 おお、その手があったか!?


 俺はその手法を見て感心した。

 地属性魔法ならではの発想だ。


 そそくさと移動すると、彼女に倣って壁に手を当て地属性魔法を行使する。

 イメージは岩だけを土に…いや違うな、採取対象の鉄鉱石と魔鉱石を除外して土に変えるイメージを作り上げる。範囲が広くなればそれだけ魔力を必要とするので、3m先までの範囲に限定して発動する。


 壁が土に変わり崩れる。

 そして巻き込まれた。


 グエッ!ペッペッ


 範囲が広すぎた。

 砂まみれになった体を叩いて落とす。

 立ち上がり、砂だらけになった一面を見ると、幾つかの鉱石が落ちていた。砂を足でどかすと、その中にも鉱石が埋まっており、全て回収するとそれなりの数になった。


 正直な話、効率が悪い。

 時間的なもので考えるなら、この方法が適しているのだろうが、魔力の消費具合を考えるとあと一度やったら空っぽになる。仲間がいるのならそれでも良いが、モンスターが現れる中で、一人でやるにはリスクが高過ぎる。


 あの子も仲間がいるからやれたのであって、一人ならば絶対やってはいないだろう。


 まあ、これだけでも十分な収入になるから文句はないが。



 回収し終わって、背後からモンスターに襲われた。

 大剣を背後に回してゴブリンの攻撃を受けると、振り向き際に大剣を返し、その体を切り裂いた。


 続くビックアントの酸をゴブリンを盾にして受けると、即座に距離を詰めて上から突き刺す。

 残るゴブリンが攻撃のタイミングをうかがっていたが、勝てないと判断したのか踵を返して逃げ出した。


 モンスターも逃げるのか。


 そんな感想が浮かび、土の棘がゴブリンを串刺しにする。


 …ゴブリン。

 そこで一つ名案が浮かんだ。




 壁に手を当て壁の中をトレースする。

 見えない感覚が壁の中を進み、そこに何があるのか知らせてくれる。距離で言うと5m程進んだところで感覚は途切れた。

 次に地属性魔法を使い、反応した物だけを引っ張り出すように魔法を行使する。するとどうだろう、ずるずると一つまた一つと壁から鉱石が落ちて来た。


 よっしゃ!


 予想通りの結果にガッツポーズする。


 これは良い。

 魔力の消費を抑えれるし、邪魔な砂が発生しない。先程の地属性魔法だけと比べても、魔力の消費は三分の一だ。

 この方法があと一回は使える。



 俺は移動して良さげな場所を見つけた。

 特に何も考えずに、またトレースして採掘しようと壁に手を当てた。


 すると、キシャーと気合いの入った叫び声と共に、当てた手を貫いてロックワームがこんにちはしたのだ。


 イデーーーッ!?!?


 小さいロックワームは俺の手を貫通して暴れ回っている。

 ロックワームを掴んで手から引き抜くと、地面に叩きつけて踏んで倒した。


 痛みに震える手を治癒魔法で回復していく。

 何で壁にモンスターが?その疑問は再び壁をトレースする事で判明した。


 ちょんちょんと壁をつついて何もない事を確認すると、表面だけを広範囲でトレースしてみる。


 するとどうだろう、所々にロックワームの反応がある。

 ロックワームの子供なのか、道端で出現する個体よりも小さい。

 別にロックワームの生態系なんて知りたくもないが、どうやら岩に卵を産み付けるか、岩の中で子育てしているようだ。


 取り敢えず、トレースして地属性魔法で採掘するのは慎重にやった方が良いことは分かった。


 てかちょっとしたトラウマだ。

 昔見た映画を思い出すくらいには悍ましかった。



 ダンジョンを出て換金していると、どこかのハーレムパーティがはしゃいでいたので殺意が湧いた。




ーーー


田中 ハルト(24)

レベル 11

スキル 

地属性魔法 トレース 治癒魔法 空間把握 頑丈 魔力操作 身体強化 毒耐性 収納空間 見切り

装備  俊敏の腕輪 不屈の大剣

状態  デブ(各能力増強)


ーーー

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