≪第九章『序』―潜む者、企てる―≫
「さて、アダム。今日も頼みごとがあるんだけどいいかな?」
「ツギハドコダ」
彼女達はまた始まりの園にいた。
「そうだね。これまでは目立たないような辺境の村や町ばかりをお願いしちゃってたけど今回は少し趣を変えてもらおうかなって思ってる」
彼女はアダムが目覚めてからと言うもの、各地の村や町を秘密裏に襲わせている。
ある時は闇に紛れて、またある時は日が昇りきった真昼。とにかく様々な場所にアダムを向かわせた。
アダムはその理由にまで興味はなかったが、彼女の目的がはっきりしている以上そこに何か感情を抱く意味はないと考えていた。
そこにどんな考えや思惑があろうと、どんな過程を経ようと、彼女の目的は常にアダムと共にある。
「行って欲しいのは王都。ちょっとここらで君の存在を大々的にアピールしてきて欲しいんだよね。できるかな?」
「ヨカロウ。キボハ」
「規模?そうだな、任せるよ。とにかく派手にお願いね」
「マカサレタ」
そう言ってアダムは消えた。
「君が誰よりも早く眠りについていてくれて本当に助かったよ」
アダムはそれ故に先代魔王の最期を知らない。
しかし彼はそれを知ろうとはしなかった。それは知ったところで意味がないことを知っているから。
「今だって、君がいなきゃそもそも始まりの園の中をここまで自由にも動けなかった」
始まりの園には、彼女も未だに把握していないことが五万とある。そもそも魔法か何かで固定され踏み入れないエリアすら存在し、もう知る由すらない状態。
しかしアダムが目覚めたことで幾つかその拘束も緩んでいたのである。
しかしそのことにアダムは何一つ興味を示さなかった。
アダムは聡明である。しかし、故に深くを知ろうとはしない。
彼は彼の知識と力が勇者を討つ為に与えられたことを知っている。ただ王の剣としてあることを自ら望んでいる。
「僕だって腕っぷしじゃ君にも負けないだろうけど、君はとにかく誰よりも魔王様を望んでいるし、誰よりも大局が見えている」
彼女は先代魔王によって創られた二体目の魔物だ。それと同時に唯一人を模した形で創られた個体でもある。故にどの魔物よりも賢しく、どの魔物よりも欲深く、どの魔物よりもイレギュラーが多い。
「君があの女に一緒に眠らされていたらと思うと、ぞっとするね」
彼女には彼女の目的がある、意志がある。
「さて、僕も僕の仕事を始めようかな」
そう言って彼女はまた仮面を付けた。
彼女の仮面はあらゆる嘘を許さない。
彼女の仮面はあらゆる真実を覆い隠す。
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