表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/40

≪第八章―役立たず、隣の村に着く―≫ (前編)

 あの日から、また幾らかの日が経った。

 魔力(俺の)で動くこの馬車には乗っている俺達の休憩さえあればいい。

 結果途中の村や町を大幅にすっ飛ばし、ついに俺達はアリサの元々の目的地であるテナー村に到着した。

 しかしまぁ――。


「わかってはいたけどここには本当に何もないな」

「ニアナ村から出てきてるあんたに言われたらおしまいね」

「いやでもこれだぜ?家は一軒だし、もう柵だってボロボロだ。まず生活感が見える時点でニアナの方がずっとマシだ」


 そもそもあの家だって十年前からあれ一軒のままだ。畑もなければ水場もない。なんなら人が住んでいる気配もない

 これを村だと言い張るのはもう勇気がいるとかそういうレベルではない。

 水の入ったボトルを持ってきて、「同じ液体だからこれはワインだ」とか言い出すのと同じ次元である。

 正直、この村が村と名乗っていることはもちろん、存続していること自体も不思議で仕方がない。


「師匠。こいつは……」

「まぁ、良い機会じゃろう」


 そう言って、ソフィアさんが俺の目をじっと見つめながらゆっくり近づいてきた。

 もう鼻息が掛かる距離。

 相手がうん百歳だとかそう言うことは関係ない。こんな距離にこんな綺麗な女性の顔があったらそれだけで男はもうどうにかなってしまうもはずだ。


「ソ、ソフィアさんっ?」


 あまりの緊張からばっちり声が裏返った。

 ついでに、視界の端にこれ以上ないくらいの満面の笑みを浮かべるアリサが映った。多分この一連のことが終わったら良くて半殺しだろう。この状況からでも発動しておける水系統の魔法とかあればいいのに。

 そんな俺の悲壮な覚悟をよそに、間近に迫ったソフィアさんが口を開いた。


「スバルよ。目に魔力を集めるのじゃ」

「目に、ですか?」

「あぁ、目じゃ。ただしそれだけでは意味がないからの。イメージは――」

「――どんなものにもピントが合って、なんでも見えるメガネのレンズよ」


 ソフィアさんのセリフを遮るように、アリサがニコニコしながらそう言った。


「そ、そうか、アリサ。ありがとう」


 アリサが怖くて仕方ない。アダムと向かい合った時にすら匹敵する恐怖が俺を押しつぶそうとしている。俺より年下のこんな笑顔が可愛い女の子に対して、だ。

 背中から嫌な汗が吹き出し続けている。


「えぇ、そうよ、スバル。だから今すぐ目に魔力を集めなさい。そしてあたしを良ーく見て欲しいわ。そうね、それが良いわ」


 よくわからないが多分言う通りにしないと殺される。

 震える体で、必死に目へ魔力を集めていく。

 ただ目の前のアリサが怖すぎてそもそも魔力を維持できない。


「そうじゃな。一応言っておくと、これが出来るようになれば個人差はあるが魔力を感じ取ることもできるようになるのじゃ。魔法使い同士の戦いがそれだけで決まる、とは決して言えんがそれが大きいというのも事実。少なくとも使いこなせて損はあるまい」


 と、今必要なのかどうかよくわからない情報を与えてくれる伝説の魔女様。

 そんなことより今この場を生きて脱する方法を教えて欲しい。


「ふむ、そう言えばあともう一つ伝えねばならんことがあったの」


 徐々に『なんでも見えるメガネのレンズ』とやらのイメージが固まってきた。


「それは魔力の大きさについてじゃ」


 今まで見えていなかったものが俺の目に映し出されていく。


「魔力の大きさはその術者の魔力量も重要じゃがそれだけでは決まらぬ」


 俺の目に映るのは、そう、アリサの魔力。


「魔力の大きさは魔力量に感情が比例して強くなるのじゃ。覚えておくように」


 あぁ、ソフィアさんごめんなさい。生きる伝説たるあなたにこんなことを思うのは大変おこがましいのですが一度だけ無礼をお許しください。

 んなことはもう言われなくても分かってるからさっさとこの目の前のを何とかしてくれ。確実に殺される。


「ハッ、ハハハハ……」


 人間、知らない方が幸せでいられる事もある。

 それは生きていれば少なからず存在するだろう。


「さぁ、スバル。何が見えたかあたしに教えてくれないかしら。あたし魔法に弱くって」


 あぁ、アリサ。お前はすごい魔法使いだ。

 恐ろしい出来栄えの術式を馬車に彫ることができる。自分の実力を客観的に捉えることができる。人を想って涙を流すことができる。

 それに何より、こんな俺にも力があることを教えてくれた。守れるものがあると教えてくれた。

 間違いなくソフィア・モルガンの弟子だよお前は。

 だから頼むアリサ。せめて理由を教えて欲しいんだ。


「な、なぁアリサ。少し落ち着いて話さないか?そうだな、まずは、そう、昨日の夕飯のこととか。それか、えーと……!」

「嫌よ」


 そんなに魔力が大きくなるくらい君は何を怒っているのかだけでいいから。


「地獄で呪われろォォォッ!」


 火が、水が、風が、雷が、土が。五つの系統全ての魔法が俺の視界を埋め尽くした。

 俺、生きてたら予め発動しておける水魔法を開発するんだ。

 でも、流石ソフィア・モルガンの弟子だ。五系統を全て同時に発動するなんてとてもじゃないが考えられない。

 薄れ行く意識の中、俺はぼんやりとそんなことを考えていた。


ということで自転車操業での投稿です。

全体でそれくらいになるかわかっていませんが「(前編)」です。お許しください。


ご一読頂き、ありがとうございました。

これからも定期的に上げられるように頑張ります。

もしよければブクマとページ下部、評価ポイントをお願い致します。励みになります。

あと批判も、というよりむしろ批判を待っておりますので感想等もお時間あれば頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ