初恋トリックオアトリート
【慎太郎五歳のハロウィンにて】
慎太郎「ば、ばあーっ……!」
檜山「あれ、慎太郎君」
慎太郎「ひっ、ひやまさん! ばあっ!」
檜山「かっこいいマントと帽子をつけてるね。そっか、今日はハロウィンなのか。つかさ君はカボチャさんかな」
つかさ「ひやま、おかしください」
慎太郎「こら、つかさ! “ひやまさん”だろ!」
檜山「あはは、いいよいいよ。それよりお菓子だね?」
つかさ「とりと、とり!」
檜山「とり?」
慎太郎「つかさ、トリックオアトリートがまだ言えなくて……」
檜山「そっか。慎太郎君は言える?」
慎太郎「はい! ひやまさん、トリックオアトリート!」
檜山「よくできました。はい、君達の分」
つかさ「あんがと!」
慎太郎「ありがとうございます!」
つかさ「おにーちゃん、あけてぇ」
慎太郎「これは家に帰ってから食べよ? 我慢できる?」
つかさ「んぶぅ」
檜山「……慎太郎君」
慎太郎「は、はい」
檜山「これ、内緒のおかし。つかさ君とお父さんお母さんには秘密だよ」
慎太郎「え」
慎太郎(……青くて大きいあめだま。きれい)
慎太郎「な、なんでおれに?」
檜山「慎太郎君、お兄ちゃんとして頑張ってて偉いから。僕からのご褒美」
慎太郎「……ふぁ」
つかさ「おにーちゃん、かえるー! かえってたべるー!」
慎太郎「あ、え、う、うん! あ、あの、ひやまさん! ありがとうございます!」
檜山「うん、気をつけて帰ってね」
つかさ「ばいばい、ひやま!」
慎太郎「こら! ひやまさんだってば!」
檜山「あはははー」
【家に帰って】
慎太郎( ……ほんとにきれい。青くて、大きくて、おいしそうなあめだま)
慎太郎( ……ひみつ)
慎太郎(つかさにも、父さんにも母さんにも、内緒。ひやまさんとオレだけのひみつ……)
慎太郎「 〜〜〜〜!」じたばたじたばた
慎太郎(どうしよ、食べられない……!)
【お正月にて】
檜山「え!? まだあの飴玉持ってるの!?」
慎太郎「……」こくこく
檜山「えー、早く食べ……いや、うーん」
檜山(もう数ヶ月経ってるし、今から食べたらお腹壊すかもだな……。かといって捨てろとも言えないし……)
檜山「……だ、大事に、持ってて。絶対食べちゃダメだよ……」
慎太郎「……!!」こくこくこくこく
檜山(ちっちゃい子って難しいなぁ……!)




