9-11
「す、すぐに精霊を呼びます! メアリーちゃんを寝かせてあげてください!」
私が言うと、魔術師団の方達がソファに布を敷いてベッドのようにしてくれる。司教様はゆっくりメアリーちゃんをそこに降ろした。
「大丈夫か? メアリー。頑張ってくれよ」
司教様はメアリーちゃんの頭を撫で、不安そうな声で言う。
私はメアリーちゃんの寝るソファの前で跪いた。
精霊に力を送ると、精霊は今回も集まってきてくれた。昼間、町の病人の家を回ったのと同じように精霊に瘴気を祓ってくれるよう頼む。
精霊は私の頼んだ通り、メアリーちゃんの首や手や足に絡まる瘴気のそばにいって、光の粒で浄化してくれた。
「……すごい光だな」
横ではらはらと様子を見ていた司教様の、驚いたような声が聞こえてくる。私は胸を張って説明した。
「ええ。精霊たちが集まって浄化してくれているんです!」
「精霊たちがか……」
「精霊さんたち、この町では全然存在を信じてもらえないのに、人間たちのために頑張ってくれてるんですよ! とっても健気で優しくていい子たちなんです!」
つい説明する口調に力がこもってしまった。
精霊が嫌いな司教様に伝わるかはわからない。でも、伝えずにはいられなかったのだ。
司教様は神妙な顔で私の言葉を聞いていた。
精霊たちが浄化してくれたおかげで、メアリーちゃんの体に巻きついていた瘴気はみるみるうちに消えていった。
すっかり瘴気が消えると、苦しそうに目を閉じていたメアリーちゃんが、ゆっくり瞼を開ける。
「……司教さま」
「メアリー! 治ったのか!?」
ぼんやりと司教様を見たメアリーちゃんに、司教様は慌てた様子で近づく。メアリーちゃんはほっとしたように表情を緩めた。
「もう苦しくないです」
「そうか、そうか、それはよかった……!」
司教様はメアリーちゃんの手を取って泣き出しそうな声で言った。
後ろで見ていた私は、メアリーちゃんがよくなってくれたことにほっと息を吐く。シリウスが私の肩口から顔を出した。
『よかったね、セラ。お手柄じゃん』
「いつも通り精霊に頼んだだけだけどね……」
『よくなったんだしいいじゃん。それにしてもあの司教様、意外とちゃんとした保護者なんだね。かなりプライド高そうなのに、あんなにびしょ濡れになって嫌っていたルークやセラの元へ頼みにくるなんて』
シリウスは司教様に鼻先を向けて、感心したように言う。
確かにメアリーちゃんを何とかするために、あれほど嫌悪していた精霊や精霊師を頼るなんて、なかなかできることではない。




