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「セラちゃんが治してくれた病人のリストが溜まったら、それを司教様に見せようと思うんだ。そうしたら協力を受け入れてくれるかも」
「そうですね。司教様に信用してもらえるよう頑張ります!」
私は勢い込んで返事をした。今は出来ることからやるしかなさそうだ。
教会を離れる前に、司教様には見えない場所からこっそり精霊を呼び寄せてみた。
精霊を拒む教会のこの空気の中ではすぐに消えてしまうとは思ったけれど、それでも教会にいる病人に力を送ってくれないか頼んでみる。
精霊たちは、少しだけ言うことを聞いてくれた。
遠くから見ていると、瘴気が少しだけ和らぐ様子が見えた。
どうか司教様が協力を受け入れてくれますようにと思いながら、教会の前を後にした。
***
司教様に協力する機会は意外に早くやってきた。
というか予想もしなかったことに、司教様の方から宿にやってきたのだ。
すっかり日が落ちた頃、私は魔術師団の方達に呼ばれて、四階のホールにいた。魔術師団の方達は随分歓迎してくれて、紅茶を出してくれたり、魔術師団の今までの活動を教えてくれたりした。
そんな風に過ごしていると、突然扉が勢いよく叩かれた。ルークさんが扉を開けると、そこには真っ青な顔をした司教様が立っていた。
「ルーク・アーレント……! 精霊師に会わせてくれ!」
その日は朝から土砂降りで、日が落ちた今も雨が降り続いていた。
司教様は服も髪もびしょ濡れになっている。そして、びしょ濡れの彼の腕の中には、小さな女の子が抱えられていた。
「司教様! その子は……メアリーちゃんだっけ? 一体どうしたの?」
「メアリーが死にかけているんだ! 精霊師をすぐに呼んでくれ!」
「落ち着いて、司教様。セラちゃんはここにいるから」
ルークさんはなだめるように言う。
私は急いで席を立ち、司教様の前へ向かった。
「司教様、メアリーちゃんがどうなさったんですか?」
「昼間から高熱が出て全く下がらないんだ。今は呼吸をすることすら苦しそうで、頻繁に意識を失ってしまう。メアリーは元々体が強くないのに、このままでは死んでしまうかもしれない」
司教様は真っ青な顔で、目に涙すら浮かべて説明する。
司教様の腕の中を覗き込むと、メアリーちゃんは真っ赤な顔をして、ひゅうひゅうと苦しそうに息をしていた。メアリーちゃんの首にも、手足にも、瘴気がぐるぐると絡みついている。
ここまで濃い瘴気に覆われているのを見るのは初めてだ。




