8-3
「失礼いたしました。一刻も早くセラフィーナのおかけしたご迷惑を挽回しようと気が急いておりました。しかし、婚約者の変更を頭の片隅にでも留めておいてもらえないでしょうか」
「変えるつもりはないと言っているだろう。七年前から俺の気持ちは変わっていない。セラフィーナでなかったら、シャノン公爵家の令嬢と結婚するつもりはない」
エリオット様ははっきりそう言った。
エリオット様は私に視線を向けることすらなく、付け入る隙なんて全くないように思えた。
七年前に感じたのと同じ屈辱感が胸に広がっていく。
なぜセラフィーナなのだろう。
どうしてあんな出来損ないが選ばれるのかわからない。
妹よりも私の方が、ずっと王太子殿下の妃にふさわしいというのに。
お父様もエリオット様の言葉が不服だったようで、固い声で問いかけている。
「エリオット様、お心は変わりませんか。やはり私どもの意に沿うような結婚は出来ないということですか。それほどまでに殿下の憤りは大きいということでしょうか」
「……そうだ。セラフィーナのことは申し訳なかったと思うが、だからといってセラ以外のシャノン家の令嬢と婚約する気はない」
エリオット様は吐き捨てるようにそう告げる。
憤りとは一体何の話だろう。時折お父様はこういうわけのわからないことを言うが、私には全く理解できない。
エリオット様がシャノン家を嫌っていることと何か関係があるのだろうか。
「我がシャノン家のセラフィーナ以外の娘と婚約するつもりがないということは……このまま娘が見つからなければ、別の家のご令嬢を妃になさるということでしょうか……?」
お父様は、さっきよりも強張った声で尋ねている。
エリオット様の顔が不快そうに歪んだ。
「娘がいなくなったというのにお前は先のことばかりだな。そんなことは考えていない。必ずセラフィーナを連れ戻す」
「しかし、一週間何の手がかりも得られないのであれば、このまま見つからない可能性が高いのでは……。そうなったとき、王子であるあなたが新しい婚約者を選ばないわけにはいかないでしょう。まさか、最近王宮に居座っているアメリアとかいう娘と婚約を……」
「しつこいぞ!! セラフィーナ以外との婚約など考えてないと言っているだろう!! 俺の妃になるのはセラだけだ!!」
エリオット様はお父様に向かって怒鳴る。
その後彼ははっとしたように口に手をあてた。
「……いや、今のは、今さらセラフィーナ以外に婚約者を代えるのは面倒だと言う意味で……。感情的になってすまなかった。セラフィーナが行方不明になったことで、シャノン公爵や姉君を心配させているのはわかっている」
エリオット様は我に返ったようにそう謝罪してくる。
謝罪されようと私は納得がいかなくて、どうにも気分が悪かった。
妹のことでそこまでムキになることはないのに。あんな出来損ないさっさと切り捨てて、私を選んでくれたらいいのに。
お父様もさぞ不満だろうと視線を向けたら、お父様は呆けたような顔でエリオット様を見ていた。
お父様もさすがにエリオット様の言葉に呆れているのかしら。
しかし、お父様は予想だにしない言葉を口にした。




