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【40万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
終章 王都奪還

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切り替わる局面

 王都ローデリア、中央地区。


「ッラぁ!!!!」


 カイルの右腕が、複数の魔物を巻き込んで吹き飛ばす。魔物たちは寄りかたまっている。まるで、命令されてこの場所に留まっているかのように。


「かっこいいー。いいぞがんばれー」


 後ろから聞こえる気の抜けた声‥‥‥また、その隣に座る意識の無い少女。

 魔物たちは、この2人を狙うかのように集まっていたのだ。


「最高に輝いてるー、その調子ー」


「‥‥‥」


 後ろから聞こえる声援(?)。

 カイルは喜ぶどころか、次第に苛つき始める。


「か弱い女の子2人が囲まれてるよー。今こそ男を見せる時だよ脳筋ー」


「ーーーお前らのどこがか弱いんだ!? お前1人でもこれくらいの魔物なら殲滅できるだろうが!?」


 とうとうカイルは声を荒げながら拳を振るい、後ろを睨みつけた。そこには意識が無いまま座り込むミアと、彼女へ寄り添うアクア。


「‥‥‥‥‥‥」


「こんなに身体柔らかいとは知らなかったー。ミストよりも心地いいかもー」


 2人は互いに体重を預け合っているため、なんとか均衡を保って座り込んでいる。というよりアクアは、意識の無いミアを抱き枕として扱っていた。


「早く手伝えや!? 意識無えそいつは適当に寝かせとけ!!」


「むりー」


「あぁ!?」


「さっき、まりょくかいほーしちゃったから。ほとんど身体動かないし、魔力は全く練れないー。だから来てくれて本当に助かったー」


「本当だろうな!? お前ただ嘘付いて楽する気んじゃないんだろうな!?」


「まさかー。動けたらこんなに囲まれる前に対処してるよー。ここまで歩いてくるので精一杯だったー」


「相変わらず気が抜ける声出しやがって‥‥‥!!」


 この通り、アクアとミアは無事だった。持ち前の身体能力で駆け付け、今も1人で魔物の大群を倒し続けるカイルのおかげで。


「だからせめて応援しようと思ってー。がんばれー」


「お前はいつもなんかズレてんだよなぁ!!」


 カイルは声を荒げながらも動けない彼女たちの前に立ち、魔物たちから必死に守り続ける。


(もう少しだけ持ち堪えろよ‥‥‥!!)


 そして彼は一瞬だけ、東地区の方を見つめた。


 ◆◇◆◇


 同時刻、グロッサ城前。


(ミアのやつ何やってるんだっ‥‥‥あんな呪力、王都中から注目されるだろ!)


 エルジュ構成員、序列2位『死神』ターナ。

 彼女は内心で愚痴をこぼしながら、素早く短剣を振り抜く。切り取った魔族のうなじから、青い血が飛び散った。


「どどどうしまょうターナ! あんな派手な事されたら城から敵が出てくるはずですよっ! こっちは既に手一杯なのに、ミアのアホぉ!!」


 同行していた序列9位『破魔矢』ミストが、涙目で短剣の血を振り落とす。彼女の足元には、複数の魔族が転がっている。


「大声を出すなっ」


「むぐぅっ!?」


 ターナは慌てて近づくと、彼女の口を押さえこんだ。だが勢いをつけ過ぎたのか、2人はそのまま倒れ込んでしまった。


「あいたっ!?」


「だから大声を出すなっ」


 その結果、ミストが下敷きとなり口を塞がれる始末。幸いにも、まだグロッサ城の門が開く気配は無い。


「‥‥‥こうなったら今の状況を逆手に取る。ミアの呪力を警戒して、城から偵察に出てくる奴らの首を片っ端から落とすぞ」


「むぅぅぅぅ!!? ぅぅぅぅぅぅぅ!!」


「魔族は警戒が薄ければ刃先も通る。気付かれたら戦闘になって、ボクたちには勝ち目が無い。失敗は許されないからな」


「ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!?」


 ミストが必死に何かを訴えかけているが、ターナは聞く耳を持たずに短剣を持ち帰る。

 そして城門が開いた瞬間、ミストを無視して足早に動き出す。


「ちょっ、待ってくださいよターナぁっ‥‥‥ほんっと我が強い人しかいないよぉぉぉ‥‥‥」


 もはやミストは半泣き状態で、渋々持ち場へと動き始める。


「そろそろ数を減らすのも限界がありますってぇ‥‥‥みんな早く集まってくださいよぉぉぉ‥‥‥」


「弱音を吐くな」



 ◆◇◆◇



 グロッサ王立学園、校舎5階。

 各教室に軟禁されていた4、5年生が次々に廊下を駆け出していく。


「本当に助かったよ。さすが代表だね」


 エルジュ構成員、序列10位『軍師』メリナ。

 強い風が廊下側の窓から吹き込み、長い茶髪が少し乱れる。その窓は少し前に、意図的に開けられたものだった。


「いや、よくここまで気づかれずに魔族を倒してくれた。だから学生たちが無傷で避難できてるんだ」


 エルジュ代表『天帝』レスタこと、アイトは賞賛の言葉を贈る。実際、生徒の場所を割り出した彼女の功績は、間違いなく大きい。


「ふふ、嬉しいよ。でも代表には見られたくなかったなぁ〜?」


 笑うメリナが自分の毛先を指で触り出す。少し前、アイトが自分の元へ駆け付けてきた時の事を呟きながら。


「魔族が3匹もいたんだ。恥じることじゃない。大きな怪我をしなくて良かった」


 それはアイトが廊下側の窓から入り込んだ際‥‥‥メリナは魔族と交戦状態になり、防戦一方になっていた場面。その事について、アイトは慰めではなく素直な気持ちを話す。

 だが、メリナが少し不機嫌そうに目を細める。


「そういうことじゃないんだよねぇ〜。ま、代表の唯一の弱点といったところだね」


「弱点? メリナが言うからには聞いておかないと」


「あ、いや言葉の綾だよ。まあ、私が苦戦してた魔族3匹を一瞬で片付けたのは本当にすごかったけど」


 メリナが苦笑いを浮かべて話を誤魔化そうとした。特に責めるつもりは無いため、アイトは逸らされた話の方へ便乗する。


「まあ奴らメリナに夢中で、俺の事に気付いてなかったから。おかげで楽できたよ」


「まったく‥‥‥もっと代表と話したくなっちゃうよ」


 そう言って微笑むメリナが教室の外窓の方へ歩き出し、その1つを勢いよく開ける。


「学園はもう大丈夫。途中には()()()もいるし、学生の避難は簡単。だから代表、先に行って」


 そう言って振り向き、悪戯っ子のように微笑んでいた。普段は大人っぽい彼女の意外な一面に、アイトは少し面食らいながらも足を進める。


「それにさっきの呪力の爆発。間違いなくミアに何かあったんだと思う。城へ向かう前に中央を通るでしょ? だからーーー」


「ああ。任せてくれ」


 アイトは右足を窓の縁に乗せ、彼女を見つめる。


「ありがとう。この場所の解放に、メリナを選んでよかったよ」


 感謝を伝え、勢いよく身を乗り出すと‥‥‥アイトは外へ飛び降りていった。


「‥‥‥もう。本当に罪な男だね」


 メリナは聞こえないように小声で呟くと、微笑みながら代表の背中を見送った。


(うおっ、やっぱり高いッ‥‥‥!?)


 そしてアイトは‥‥‥5階から飛び降りる初めての体験を、大の字で味わうのだった。

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