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【40万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
終章 王都奪還

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中央地区

「他の学生がどこにいるか、心当たりのある者は返事をしろ」


 エルジュ代表『天帝』レスタが、淡々と学生たちへ問いかける。


「「「‥‥‥」」」


 当然、彼の質問に答える者はいなかった。

 相手は5000万もの懸賞金が掛けられている指名手配犯。これまで何度も王国内に出現し、数々の事件の張本人とされる危険人物。

 彼と平然と話せる人の方が、少ないのは確実だった。



「ーーーどこにいるかは、分かりませんが」


 だが1人だけ‥‥‥緊張した様子で声を出す学生がいた。学生全員が彼女に注目し、動向を見守る。


「数日監視されてる間、最低限の食事を摂らせてくれました。毎回食堂に移動したのですが、1階の廊下や周辺には魔族がいなかったです‥‥‥」


 灰色髪の少女が、一生懸命に話す。少し怯えた様子で、緊張した表情で。その勇気ある行動に、他の学生たちは内心で彼女を応援している。


「‥‥‥わかった。他に何か話がある者はいるか?」


 レスタが小さく頷いた後、他の学生たちに再度問いかける。そして今度こそ、話のある者はいなかった。


「今の王都に、安全な場所は無い。死にたくないなら王都の外まで駆け抜けろ」


 レスタはそれだけ話すと、踵を返して去っていく。彼を止める者は誰もいない。暫くの間、静寂が訪れる。

 そして今度こそ何も無いと分かったのか、学生たちはそれぞれ安堵の声を漏らす。


「ーーーゆ、ユニカさん!! なんて危ないことするんですか!!」


 その中で灰色髪の少女は名前を呼ばれ、苦笑いを浮かべる。


「ったく大した度胸だな。見てるこっちがヒヤヒヤしたぜ」


「カッコよかったわ、ユニカ。私は何も言えなかったから」


 同じクラスの学友たちが彼女の前に駆け寄り、安堵の息を漏らす。


「でも大変なのはこれからよ。早く王都の外へ脱出しないと」


 そして、ユニカ・ラペンシアは友達3人を見つめて話した。


「そうですね。もう監視されながら過ごすのは嫌ですし‥‥‥本当に怖かったです」


 1年Dクラス、ポーラ・ベル。黒髪の三つ編みで眼鏡をかけてる内気な少女。


「でもあの男の話を信じるのか? 王国内随一の指名手配犯だぜ?」


 1年Dクラス、ギルバート・カルス。短い茶髪と大柄な身体は、他に見間違えようがない青年。


「でも実際、学園にまで魔族が来たんだから王都の方が占拠されてるでしょ。あのレスタとかいう男の真意は分からないけどね」


 1年Dクラス、クラリッサ・リーセル。藍色の長い髪が特徴的な美人。少し愛想が悪く、かなりの人見知り。


「みんな次々に避難を始めてる。実際、学園は目立つから留まるのは危険だわ」


 ユニカが話すと3人は納得した様子で頷く。

 先ほどの勇気ある彼女の姿は、3人からの信頼を更に高めていた。


「さあ、みんなで行きましょ。みんな本調子じゃないし、助け合わないと」


 ユニカはそう意気込んで歩き出すが、後ろがついてこないため振り返る。


「もちろんそうだけど‥‥‥ユニカがそんなこと言うなんて意外ね」


「クールビューティーの代表みたいなユニカさんが、私たちのことを想ってっ‥‥‥!!」


 クラリッサとポーラがどこか驚いた様子で見つめてきたため、ユニカは呆れながら歩き出す。ちなみにギルバートは呆れ顔で既に先を歩いている。


(あなたの大事な友達、守ってみせるから)


 ユニカは()()へ宣言するように内心で決心すると、王都の外を目指して移動を始めた。



 そして同時刻。


(‥‥‥さすがラペンシア。的確な情報で助かる!)


 『天帝』レスタことアイトは、自分の作戦に確信を持ちながら学園内へ侵入していった。


 ◆◇◆◇


 王都ローデリア、中央地区。


「なんか魔物少ねえか〜? ここの制圧が重要だって言ってたのに、全然大したこと無いじゃねえか」


 序列5位『脳筋』カイルが呆れた口調で呟く。竜人族の証である2本の角、そして赤い髪を掻いて息を吐く。


「ね〜。なんか眠たくなってきたしぃ〜」


「てめえはいつもそんな感じだろうが!!?」


 序列4位『水禍』アクアは目を細め、長い青髪をかき分けて両耳を塞いでいた。今の微睡を大声で壊されたくないのだ。


「あんたたちっていつも緊張感無いよね。ちゃんとおにいちゃんの話理解してる??」


 そんな2人にキツい言葉を放ったのは序列6位『黒薔薇』ミア。彼女の呪力によって黒と白のまばら髪が不気味に揺らめく。


「どっちもうるさい〜静かにしてよぉ〜‥‥‥」


「ここを制圧すればいいんだろ? 分かってるっつうの」


「絶妙に分かってなさそうね」


 協調性0だが戦闘能力は高い序列4、5、6位の3人が、王都内の安全確保を任されているのだ。


「てかもう制圧したようなもんだろ。そもそも魔物がいねえし、少し賑やかそうなのはあっちだぜ」


 カイルが指を差した方向は、西地区。彼の言う通り、僅かに中央ここまで小さな音が届いている。だがそれは、別に気にならない程度のもの。


「ふぁ〜‥‥‥」


 ちなみにアクアは今も両耳を押さえ、目も閉じながら欠伸している。それを見たカイルが呆れながらも話を続けた。


「しかもこの音の感じは、誰かが戦ってるぜ」


「別にあの程度の音で何でそんなこと分かるの? ほんっとに気持ち悪いよね」


 目を細めたミアが悪態をつくが、カイルは全く気にしていない。彼女の性格と口は、組織内随一で悪いと認識しているからである。


「てめえらがあっちに行きたくねえなら、ここにいればいい。俺は暇だから確認してくるぜ」


「ちょっと! おにいちゃんの作戦はーーー」


()()()()()、だろ? あっちの方に敵がいたら殲滅するだけだ」


 カイルがあっけからんと答えた事で、ミアは面食らって困惑する。


「‥‥‥うっさい。そんなに行きたいなら行ってくれば?」


 それを誤魔化すように語気を強めた彼女に対し、カイルは『めんどくせぇ‥‥‥』と内心で愚痴る。


「んじゃ、ちょっくら見てくるわ。もし困ったら呼んでくれ」


「あそこが何地区か分かってなさそう。そんな奴なんて当てにしてない」


「う、うっせえな!! 目で確認できるからいいだろうが!!」


 こんな会話を繰り広げつつも、カイルが持ち前の身体能力で移動を始め、あっという間に見えなくなる。


「あ〜うるさかった。これで少しは静かになるかな〜」


「あんたって本当にウザっ‥‥‥」


 つまり中央に残ったのはアクアとミア。誰がどう見ても相性最悪な2人。


「うわ、やっぱりこっちもうるさかった〜」


「は? ミアに喧嘩売ってんの??」


 2人はもはや、組織内で1番仲が悪いまである。他の構成員に質問すれば、全員がそう即答するだろう。


「え〜い」


 そして事もあろうか‥‥‥アクアは右手から水を飛ばし、ミアの頭にぶつけた。


「うぶっ‥‥‥!?」


 ミアは当然頭から上半身へと水がしたたり、びしょ濡れになる。


「‥‥‥そんなに死にたいなら殺してあげる」


「え、なんで怒ってるのー。むしろ感謝してほしいくらいなんだけどー?」


「はぁ!!?」


 もはや収拾がつかなくなっていた。アクアの自由奔放な立ち振る舞いは、ミアですら翻弄するほどである。


「あ、なんか変な感じがする〜」


「なに誤魔化してんの?? あんたはこれから串刺しになって赤い血を撒き散らす未来が確定してるから」


「? 知らないの〜? あーしの血ってーーー」


 アクアは首を傾げると、嗜めるような口調で話し出す。


「うぁっ」


 だが突然、近くの建物が粉砕し‥‥‥話そうとしていたアクアが吹き飛ばされる。


「ったく使えない惰眠女ね‥‥‥!!」


 ミアが愚痴りながら警戒を強める。自分とアクアが気付かなかった不意の一撃。

 吹き飛ばされたアクアとは距離が生まれたため、今はミア自身の力が試される。


「ーーーあ、話にあった黒白女だ。しかも本当に変な髪の配色」


 そう呟くのは、両翼をはためかせ着地した1匹の魔族。白い髪と2本の角が特徴的で、どこか中性的な顔立ちな男。


「あんな女の話、信用してなかったのにね」


 するともう1匹、魔族が姿を現した。長い黒髪に2本の角と身体の凹凸が目を惹く女。


「‥‥‥は? なに意味わかんないこと言ってんの?」


 ミアは2匹の魔族と対峙しても、微塵も臆する気配が無かった。



 そして、中央と南地区の間。


「いったぁ〜‥‥‥なにするのいきなり〜」


 壁にもたれて座り込んだアクアは、左頬を摩りながら目を細めた。赤くなった頬には、口から漏れた()()()が滲んでいる。


「その血‥‥‥君も魔族ですか。だったらなぜ、ルシフェル様の邪魔をするんです?」


 アクアと対峙した魔族は、どう見ても幼い少年だった。茶色の髪と大きい目が可愛らしさを醸し出すが、上級魔族の証である2本の角と翼は健在。


「そういえば、翼はどうしたんですか? 角が無いのは下級ということで理解できますけど、翼は有しているものですよね?」


 少年が淡々と話しかける。見た目が幼いと言っても、魔族は長寿な種族。既に人間だと成人を余裕で過ぎている年月を重ねている。


「めんどくさぁ。話す意味ないし」


 アクアは眠たそうな目のまま、頬の血を拭う。


「どうしても教えてください。今話した方が楽ですよ」


 少年は当然であるかのような口ぶりで呟いた。アクアはそんな事に腹を立てる性格では無いが、押し問答される方が嫌なため、渋々口を開く。


「‥‥‥翼は自分で切り落とした〜」


 そう話した瞬間、魔族の少年が目を見開いていた。その反応を隙だと感じたアクアは、右手を伸ばして水を飛ばす。


「ーーー君には負けられません」


 声が聞こえた瞬間、少年の姿が()()()にあった。目を丸くさせたアクアに、少年の右足が迫る。


「同じ魔族として、自分の存在から逃げた君には絶対に!!」


 そして、アクアは勢いよく蹴り飛ばされた。

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