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【40万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
終章 王都奪還

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王都奪還作戦

 グロッサ王国、王都ローデリア南地区‥‥‥組織エルジュが管轄する店舗『マーズメルティ』。

 本拠地から王都内へ転移できる唯一の場所で、潜伏拠点として利用している重要な場所。


「‥‥‥これでもう後戻りはできない。王都内に蔓延る魔王軍と全面衝突だ」


 アイトは銀髪仮面の姿‥‥‥『天帝』レスタとして話し続ける。


「『黄昏トワイライト』のみんなには苦労をかける。王都奪還の可否は‥‥‥俺たちに懸かっている」


 アイトの他には、9人の精鋭たち。序列2位から10位までの現組織の最高戦力が集結している。


「おにいちゃんがミアをこんなに求めてくれるなんてっ‥‥‥! 最高っ♡」


 真っ先に声を出したのは序列6位、『黒薔薇』ミア。彼女の身体からは大量の呪力が蠢き、感情の昂りが見て取れる。


「ミア‥‥‥お前たちが失敗したら大勢の死者が出る。もう少し緊張感を持て」


 序列2位、『死神』ターナが注意する。現在、1位の()()が不在な今、2位のターナが最も序列が高い。そのため、強い責任感と覚悟を持っていた。


「まあまあっ! ターナも緊張してるっぽいし、みんなで深呼吸しよっ、はい深呼吸〜!」


 序列3位、『自由人』カンナは大袈裟に深呼吸をし始める。天真爛漫な彼女の存在は、空気を和やかにしてくれる。


「ふぁぁ‥‥‥確かに深く息を吸わないとぉ‥‥‥」


「それ欠伸ですよね!? しっかりしてくださいよアクアぁ!!」


 序列4位『水禍』アクアは相変わらず眠そうで、序列9位『破魔矢』ミストが世話をするのも普段と変わらない。


「ったく、心配になるぜ。本当に上手くいくのかよ」


「僕が上手く援護しますから。皆さんは思う存分暴れてください」


 序列5位『脳筋』カイルがやれやれと肩を回すと、序列7位『瞬殺』オリバーが銃を確かめながら呟いた。


「みんな、がんばりどき。だから、がんばろ」


「リゼッタの言う通り、こんな事態は滅多にないよ。今こそ代表直属の精鋭たちが、力を見せつけるときだね」


 序列8位『腐乱』リゼッタは胸の前で両手を握り締め、序列10位『軍師』メリナは地図を取り出して不敵に微笑む。


「準備できたよ代表。最後の確認しよっか」


 そして彼女が視線を向けた先には、皆を束ねる代表がいる。地図を勢いよく机の上に広げたことで、全員の視線が集まる。


「まず、城壁は全て壊されていて防衛は不可能。これならもう、国民は外に避難させた方が良い」


 アイトは地図に記されている王都を囲う、城壁を人差し指でなぞって話し始める。


「さっきも言った通り、王都奪還において重要な場所は3ヶ所だ」


 アイトは指の位置をずらしていくと、皆の視線も誘導されるようにズレていく。


「1つ目はグロッサ王立学園。王都ローデリアの南地区にあり、多くの学生が軟禁されてる。1箇所に集まってる人の数は、たぶん学園が1番多い」


 まずはグロッサ王立学園に指を差し、アイトは1人と目を合わせる。


「これは代表と私の2人で充分だね。学園の構図は普段学生として生活してるから分かってるし、今も潜伏中のユニカもいる」


 グロッサ王立学園に向かうのは‥‥‥アイト、メリナ。そして今も学生として潜伏しているユニカの事も計算している。


「2つ目は中央地区。王都ローデリアは北、東、南、西の4地区に分かれていて、全地区が中央と繋がっている。つまりここの安全を確保しなければ、国民が避難できない」


 次に王都ローデリアの中央を指差すと、アイトは3人を見つめた。


「りょー。とりあえず敵がいたら倒しとけばいいんでしょー」


「広い場所で助かったぜ。あんまり建物壊しちゃダメなんだろ?」


「任せておにいちゃんっ! ミア1人でも充分なくらいだけどねぇ〜!」


 中央の制圧は‥‥‥アクア、カイル、ミア。国民の避難に関わる重要な場所には、純粋に戦闘力が高い3人を選出した。


「そして3つ目、グロッサ城。王都ローデリアの北地区を超えた先にある。おそらく国王と第二王女はここにいる。他の2箇所を制圧する間、悟られたらダメだ」


 最後にグロッサ城を指差すと、アイトは2人を見て小さく頷く。


「むしろボクとこいつ以外に、この場所は任せられないな」


「で、でも城を監視する敵を片っ端から殺しても最終的には気づかれますからねっ!? なるべく早く終わらせて合流してくださいよっ!?」


 グロッサ城周辺の制圧は‥‥‥ターナ、ミスト。

 生粋の暗殺者である2人が、周囲に悟られないように敵を少しずつ減らしていく事が重要である。


「カンナは王都内にいる国民の避難誘導。オリバーは自己判断で狙撃し皆を援護。リゼッタは王都外の魔物の殲滅を頼む」


「うん任せてっ! まさに総力戦って感じ!」


「なるべく敵に気づかれないようにします。突然銃弾が飛んできて驚くかもしれませんが、ご容赦を」


「うむ、まかされる」


 残ったカンナ、オリバー、リゼッタは与えられた役割に快諾した。こうして、王都奪還における最終確認が終了する。


「既に他の構成員たちは、既に王都外で複数の避難所を作ってくれてる。俺たちだけじゃない、みんなの力が必要不可欠なんだ」


「なんかこういうの、すっごくワクワクするよね!」


 カンナが嬉しそうな声を出した直後、後ろに回り込んでいたターナに頭を叩かれる。


「あいたッ!?」


 そして、カンナの呻き声が店内に虚しく響く。


「こんなにも構成員の皆が一丸となって何かに挑むのは初めてだ。それも、少数精鋭と呼ばれる『エルジュ』の1人1人が」


 アイトはどこか嬉しそうに話し始めた。

 そんな代表の姿と言葉遣いに、ターナたちも確かな高揚感が生まれる。


「それに、みんなの実力は俺が1番知ってる。今まで何度も俺を助けてくれて、頼りになるみんなのことを。そんな君たちが、1つの目標に向かって一緒に戦ってくれるんだ」


 アイトが発する言葉の1つ1つが、ターナたちの心を刺激する。


「じゃあ、たとえどんなに過酷で窮地に立たされても‥‥‥俺たち『エルジュ』が、魔物の集団()()に負けることなんてあるか?」


 そう言ったアイトは不敵に笑った。

 そして、そんな代表の姿を見た‥‥‥ターナたち9人は。


「ふっ、あり得ないな」


「レスタくんっ!!」


「うわ、あつー」


「へっ、言われるまでもねえ」


「おっ、お兄ちゃん♡」


「武者震いって、本当にあるんですね」


「レーくん、かっこいいっ」


「なんか緊張してきましたぁ!?」


「これはアガるね」


 士気が、一気に爆発した。アイトの言葉で、今までにない高揚感を湧き上がらせている。


「俺たちの力で、王都奪還を成し遂げよう」


 先陣を切ったアイトの後ろから、呼応する声が聞こえる。もはや、誰1人として迷いは無い。


「ーーー行こう」


 そしてアイトが扉を勢いよく開けると、皆が一斉に動き出す。


(これが代表としての、最後の仕事だ‥‥‥!!)


 アイトたちの王都奪還作戦が、遂に始まる。


 ◆◇◆◇


 王都ローデリア南地区。


「ふっ」


 鋭い息遣いと共に、短剣が魔族の首に突き刺さる。その近くでも、別の短剣が敵の首を抉り切っていた。


「メリナは何でも器用にこなすよな」


「そんな褒めても、これ以上やる気は上がらないよ?」


 そんな会話をしながら、2人は自分の短剣を魔族から抜き取る。

 まさに阿吽の呼吸。1人ではどうしても暗殺中に気づかれる所を、2人で突破していく。


「魔族は警戒されなければ肉質も柔らかく、暗殺が1番手早い‥‥‥ターナが言ってた通りだな」


「今の私たちを見ても、ターナは『まだまだ』って言いそうだね」


 エルジュ代表『天帝』レスタことアイトは、序列10位のメリナと共に‥‥‥王都の南地区を駆け抜けていた。


「‥‥‥思ったより数が多いな」


 そして目的地であるグロッサ王立学園が見えると、アイトたちは近くの建物へ身を潜める。


「でも見張りは校門と半分の学生が監視されてる訓練場は確実として、あと1箇所はーーー」


「普通に考えて、学園の中だろうね。もし何があってもすぐには逃げられないように」


 そう言ったメリナが顎に手を当てて熟考し始めると、アイトは口を閉じて彼女の言葉を待った。

 組織内随一の頭脳、『軍師』と呼ばれる彼女の能力を信頼して。


「‥‥‥もしかして、ユニカが含まれてる半分の学生って1、2年が多い? あと3年も」


「あ、ああ。あいつの報告だと1〜3年生が訓練場に集められてる。残りの4、5年は一緒じゃないから分からないって」


「やっぱり‥‥‥」


 アイトが返事をした瞬間、メリナが目を見開いて嬉しそうに微笑む。まさに『予想通り』と言った表情で。

 そして彼女は、学園の方を指差して話し始めた。


「王立学園って、1階を除く全てが各学年のフロアになってるよね。2階が1年のフロア、3階が2年のフロア‥‥‥最上級生の5年生は6階って」


「まあ、5学年も集まる王国内最高峰の教育機関だからな。初めて来た時は敷地も建物も広すぎて驚いたし」


 アイトは彼女の言葉に反応し、思ったことを呟く。メリナは『ここから』と言わんばかりに不敵に微笑んだ。


「そんなに広くて大きな学園なら、()()()で過ごす学年ほど外に出るのは大変だよね」


「それはそうだけど‥‥‥まさか!」


 アイトは目を見開いて声を出すと、メリナが嬉しそうに笑って口を開く。


「4、5年生はもしかしたら、それぞれ自分たちの椅子に座らされてるんじゃないかな。廊下に繋がる教室の扉を閉めて、出れないようにする」


「そうかっ‥‥‥もし逃げようとする学生が扉を開けられたとしても、階段に近い廊下を見張っておけば逃げられることもない!」


「それに4年生は5階、5年生は6階。さすがにその高さで窓から直接飛び降りようとする学生はいないと思う」


 次第に2人は会話をしながら、更に思考を練り込ませていく。普段は学生として過ごしている2人だからこそ気づくことがある。


「さすがメリナ。本当に心強いよ」


「あははっ、代表にそんな褒められると皆に嫉妬されちゃうよ」


 やがて照れたメリナが緊張感を戻すために咳払いをする。こうして、アイトとメリナの行き先が決まった。


「俺は訓練場に行ってラペンシアと1、2、3年生を解放する。メリナは学園内の4、5年生を頼む」


「了解。私1人だと心細いから、なるべく早くこっちに来てね」


 アイトは彼女の言葉にしっかりと頷くと、勢いよく飛び出して魔族に襲いかかる。


「! なんだ貴様はーーー」


 魔族が臨戦状態に入る前に足払いをかけて転倒させ、逆手に持った短剣を、首めがけて振り下ろす。


「な、に、を‥‥‥」


 そして同じ瞬間、メリナも淡々と別の魔族を暗殺していた。アイトは先に短剣の血を払いながら彼女に話しかける。


「上手くいったな」


「さすがに緊張したよ。死角が無かったから、どうしても気付かれながらの暗殺になったし」


 そう呟いたメリナが苦笑いを浮かべ、短剣の血を落とす。


「それじゃあ今から別行動だね。もし魔族相手に戦闘になったら、私に勝ち目は無いから‥‥‥助けてね、代表」


「メリナが弱気になってるの、初めて見た」


「もうっ」


 少し恥ずかしそうに彼女が呟く。構成員の中でも特に冷静で大人らしいメリナも、代表のアイトを頼りにしているのが見てわかる。


「すぐに終わらせてくる。無茶はしないようにな」


 アイトは訓練場へと足を動かす。


「代表も、充分気をつけてね」


「もちろん」


 彼女の声を背中に受け、振り向かずに応えながら。


 ◆◇◆◇


 グロッサ王立学園内、訓練場。


(もう何日経ったの‥‥‥)


 エルジュの構成員、ユニカ・ラペンシアは学生の1人として既に数日は監視されている。


(ずいぶん丁寧に、心を折ろうとしてくるわね‥‥‥)


 最低限の食事と水は食堂で与えられ、排泄もトイレでさせてくれる。もし漏らされたら、魔族たちが不快に感じとるからだ。

 つまり、人が生きていく上で最低限の水準は守られていた。


(だからこそ、歯向かう気持ちが徐々に削がれていく。日中ずっと監視されることの不安と恐怖だけが、心に重くのしかかってくる‥‥‥)


 だが、それが魔族たちの罠だとユニカは理解していた。飢餓感や喉の渇き、排泄物を漏らしたことなどによる極度のストレスは、人が何かを踏み切るには充分な要素。それが魔族たちへの反逆行為でも。


(指示を出している奴は相当な切れ者ね‥‥‥もう学生たちの反抗心が弱くなってきてる)


 むしろ他に考える余裕が与えられている今こそ、このまま過ごしていれば生きていられるのでは‥‥‥と、従順にさせるのだ。


(‥‥‥占拠されてから、すぐに動くべきだったの?)


 そして過去に修羅場を何度も乗り越えてきたユニカすら、精神を揺さぶられていた。


(栄養不足で魔力の生成が‥‥‥慢性的な空腹と疲れで呪力も上手く生成できない)


 今の状態では自然に生成される魔力が少なく、感情の激流により生成する呪力も意識が散漫して作れない。ユニカは思わず唇を噛む。

 待つという自分の行動は失敗だったのではないかと、疑心暗鬼になり始める。


(そもそも、ローグくんたちが助けてくれるのだって確定してるわけじゃない‥‥‥もしかしたら魔族に見つかって戦闘になってて、最悪の場合ーーー)


 するとユニカはハッと目を見開くと、両手で自分の頬をパチンっと叩く。


「皆を信じないでどうするの‥‥‥それに()はどんな状況でも皆を助けてきたじゃない」


 そして無意識に小声で呟いていた。それはまるで自分自身に言い聞かせるようだった。



           ガシャン。



 すると突然、訓練場の外で何かが落ちた音が響く。突然の音の発生に、ユニカはもちろん他の学生も一斉に注目する。


「ったく、何やってんだ外の奴らは。俺が一応見てくるよ」


 訓練場の中にいる魔族は3匹。そのうちの1匹が頭を掻きながら音がした外へと歩き出す。そして訓練場の扉を開け、外を確認した瞬間。


「ご、ぶっ‥‥‥」


 外を確認した魔族は、ユニカから見れば当然背中を向けている。その魔族が滝のように青い血を垂れ流し、両膝をついて昏倒したのだ。


「!? 誰かいるぞ!!」


「俺はこいつらを見ておく!!」


 残りの2匹が警戒しながら言葉を交わし、1匹が臨戦体勢で扉へ近づいていく。


「ーーーぁ」


 その瞬間、ユニカは見逃さなかった。自分たちを監視していた魔族が小さな声を上げ、勢いよく倒れ込む姿を。


「っ!!」


 そして馬乗りになった黒い影が、()()()剣を振り抜いた瞬間を。


「きゃぁぁぁぁぁッ!!!!?」


 ユニカの他にそれを目撃した学生が悲鳴を上げる。当然、扉に向かっていた魔族がすぐに振り返る。


「なっ!! 何者だ貴様っ!!!」


 また1匹絶命した現場を目撃した魔族が憤怒し、黒い服と仮面が特徴的な相手に襲いかかる。


(ーーーあなたは来てくれると思ってたわ!)


 ユニカは咄嗟に学生たちの外に飛び出し、右手にかき集めた火属性魔力を勢いよく投げる。それは本当に小さな火の玉だった。とても魔族に効くとは思えない。


「っ!? おい誰だ!!!」


 紙一重で躱した魔族は当然、飛んできた方向から学生たちの関与を疑う。ユニカは既に、学生たちの輪に隠れ込んでいた。

 場をかき乱す、それが彼女の狙い。


「ーーー!!」


 次の瞬間、黒く染まった剣が魔族の首を容易く刎ねていた。そして銀色の剣から離散した黒の魔力が、訓練場を大きく揺らす。

 こうして訓練場の中にいた3匹の魔族は、1人の人間に全て刈り取られた。


(相変わらず凄まじい魔力総量‥‥‥しかも敵への牽制のためか、()()()過剰に魔力を滲ませてるわね)


 そして、その魔力の出現が‥‥‥今グロッサ城にいる魔族たちへ大きな混乱を与えていた。



(たぶん、この周囲も安全になってるわね‥‥‥)


 ユニカは確信していた。聖銀の剣を携えた彼なら、既に訓練場の外にいた魔族も全て始末したのだと。


「ぎ、銀髪に仮面っ。それにあの黒い服‥‥‥!?」


 次第にざわめき出す学生たち。魔族から解放された嬉しさよりも、前に立つ男への恐怖が勝っている。


「‥‥‥質問に答えろ」


 王国を騒がせている指名手配犯‥‥‥『天帝』レスタは、学生たちへ話しかけるのだった。

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