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【40万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
終章 王都奪還

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夜空の下

「というわけで、王都ローデリアに行くことになった。んじゃ」


 黒髪青年ジャックは包帯が巻かれた左手を軽く上げ、踵を返して歩き始める。


「ちょっと待てやぁぁぁ!!?」


「もっと説明しろよ!?」


 その進路にB級冒険者ギラファとA級冒険者バージが回り込む。彼らは完全に不機嫌だった。


「ーーー理由なんてどうでもいい!!」


 そんな2人を超える大声を発したのは、後ろにいた魔法使いジェシカ・アルニール。頬を膨らませた彼女が勢いよくジャックへ迫る。


「私たちも連れてってください!! 何かするのでしたら必ず役に立ってみせます!!」


 そして自信満々に言い放ち、数段背の高い相手を見上げて返事を待つ。


「あの子って‥‥‥魔導大国の令嬢では? 『魔導会』の総代であるバスタル・アルニールの孫で‥‥‥」


「たぶんそうだね。そんな子と仲良さげとは、ジャックさんの人誑しは相変わらずみたいだ」


「まあ、口は悪いけどあの顔ですもんね‥‥‥女性の方が貢ぎそうな感じ」


「なんか生々しい話だね」


 その様子を少し遠くで眺めるマリアとルークが小声で会話する。ちなみに2人は銀髪と黒髪に変装済み。


「‥‥‥(ちッ)」


 ジャックはそんな2人を睨んで圧を掛けた後、すぐにジェシカへ向き直って苦笑を浮かべた。


「その意気込みは買うが、今回ばかりは無理だ。別に冒険者の依頼でもなんでもなく、俺の自分本位な理由でグロッサ王国へ行くんだからな」


「それって‥‥‥今も()()()()()()()()()()()()この子に関係してます??」


 するとジェシカが、明らかに含みを込めて聞き返す。そう、ジャックには自分の左半身に強く密着してくる少女がいる。


「ーーーは? それがお前に関係あるの???」


 冷たく言い放つ彼女の名は、システィア・ソードディアス‥‥‥彼の異母兄妹である。


「関係ありますっ! おにいさんとあなたの関係は何ですか!?」


 ジェシカが強く言い返した言葉は‥‥‥システィアの目をますます鋭くさせる。その目線は、ジャックへと向いている。


「‥‥‥ねえ。おにいさんって、何? ねぇ‥‥‥まさか年下の子にそう呼ばせてんの?」


「違えわ!!? こいつが勝手に呼んでくるだけでっ、そんな趣味無いって!!」


 今世紀最大の怒りを孕んだ彼女の視線に、ジャックは思わず声を荒げていた。


「‥‥‥銀髪フェチのくせに」


 耳付近の毛先を弄りながら上目遣いをするシスティアは、あまりにも普段の彼女とは一線を画す。


「ぅぐっ、はいはい関係無い話は終わり終わり!!」


 事実、ジャックは妹の可能性があると分かっているのに狼狽えてしまう。苦し紛れに両手を叩きながら話を終わらせたが。


「仕方ねえから教えてやる。こいつは妹!」


 そして2人が何か言う前に早口で簡潔に説明し始める。


「こいつの家族が王都にいるから助けに行く、以上! それが終わったら一旦はこっち来るから後は頼むわ!」


 そう言いながら、ジェシカの肩に手を置いて頼み込む。


「ひゃ‥‥‥ひゃいっ、、わかりました♡」


 ジェシカが顔を真っ赤にさせて語尾にも違和感を感じたが、ジャックは今時間が無いため踵を返す。


「バージとギラファも頼んだ! ここだって魔物が襲撃してくるかもしれねえから!」


「‥‥‥ったく絶対戻ってこいよ!? 来なかったら嬢ちゃん連れて押しかけてやるからな!!」


「おい、それでいいのかよ兄弟!?」


 こうして3人の了承を得たことで、ジャックは何の憂いも無く歩みを進める。後ろで不機嫌そうなシスティアを無視しつつ。


「あいつらとは暫くつるんでたから、一応伝えときたくてな」


 そして、近くで待っていたルークとマリアに合流して話しかける。


「別に連れてきても良かったんですよ? 戦力は多いに越したことありません」


「鬼か。仮にも命懸けなのに理由も無いあいつら連れていけるわけねえだろ」


「冗談ですよ」


「そうは聞こえなかったけどなぁ?」


 いつもの調子で話すジャックとルークに対し、女性陣2人が呆れながら後を追う。


「ほんとジャックさんとあんたたちってそっくりね。弟のカレンっていう子もそうなの?」


「はぃ? あいつはただの弱虫な泣き虫ですよ」


「じゃあ、似てないわね‥‥‥1人だけ」


「はぃ?」


 システィアは辛うじて『ぃ』を入れて威嚇していた。一応、マリアは年上であるため。

 こんな調子で、4人は交易都市ベルシュテットを出た。するとルーク、マリア、システィアの見る方向が一致する。


「ぁ? じろじろ見んな気持ち悪い」


 それは言うまでもなく、ジャック。最も歳上で実力も文句無し。何より彼はルークの指示など絶対に聞かないという確信を、ルーク自身も感じていた。


「こっから王都へ移動すんだろ? 蒸気機関車や馬車は却下だ。お前らは当然警戒されてんだろ」


 やがてジャックはめんどくさそうに呟き、ルークとマリアを指差す。王子とその精鋭である2人を。


「仕方ねえから、俺が特別に()()()()()()()。準備すっから今は少しでも休んでろ。どうせ碌に休憩せずに来たんだろ?」


「やっぱりお見通しなんですね。なんだかんだ、王国のこと気にしてくれてるんですね」


「うるせえ」


 ジャックは口をへの字に曲げ、両手を擦り合わせてぶつぶつと小声で呟き始める。マリアとシスティアは訝しげに見つめ、困惑を強める。


「懐かしいですね。まだあの方法を使って移動してるんですか?」


 だがルークだけは穏やかに微笑んでいる。4年前の付き合いから、ジャックがこれから何をするのか既に分かっているのだ。

 ジャックは嫌がらせのつもりか、いっさい返事をしない。ルークは一切気にせずに話を続ける。


「そういえば、シャルロットさんに聞きましたよ。吸血鬼騒動の時、アルスガルト帝国に連れて行かれたって本当ですか?」


「えっ?」


「は?」


 その言葉に反応したのはマリアとシスティアだった。話題の当事者であるジャックは特に気にした様子も無く「ああ」と呟く。


「俺の経歴話したら、最年少の女将軍は見事に釣られやがったよ。やっぱ武力国家は食いつき方が違ったわ」


「今ここにいるって事は、あの帝国と折り合いを付けてきたってことですよね?」


「誰がそんなめんどくさいことするかよ。俺は隙を見てトンズラこいただけだ。あの女を撒くのは苦労したけどな」


 あまりにも飛躍している話に、マリアとシスティアは絶句していた。

 国力最大を誇る武力主義の大国‥‥‥アルスガルト帝国。そこの将軍から逃げたという、普通なら信じられない与太話。


「まぁその後、特に報復は無いから実害も無し。半端な奴を刺客に送っても返り討ちに遭うって分かってんだろ。最年少の将軍さまは目利きできそうだったしな」


 ジャックは淡々と話す。自分で言っていた準備を進めながら。


「‥‥‥じゃあそんな貧乏くじを引いてまで、『天帝』レスタとその一味を助けたのは?」


 ルークが笑みをやめて冷静に話すと、ジャックは目を細めて睨み付ける。そんな2人の空気感に、マリアとシスティアは冷や汗を流す。


「‥‥‥不本意だが、お前は俺の事よく知ってんだろ? んじゃ大した理由は無いってことも分かってるよな?」


「そうですね。どれほど接触したか分かりませんが、なんとなく彼の事を気に入りそうだと感じました」


「はっ、分かってるじゃねえか。お前よりよっぽど面白いよ。あの少年は」


 ジャックがどこか穏やかに話したため、マリアとシスティアは安堵の息を吐く。


「さてと、こんなもんだろ。お前、たしかマリアって言ったか? ちゃんと王子様にくっ付いてろよ」


 その言葉にマリアが反応するよりも早く、ルークが彼女の腰に手を置いて力強く引き寄せた。


「ちょっ、ルーク先輩!?」


「あ、兄貴っ!?」


 するとマリアと似たような声色が、システィアの口からも響く。ジャックに肩を引き寄せられたからだ。


「んじゃ、行くぞ」


 ジャックが普段と変わらない声色で話した直後‥‥‥悲鳴が上がる。


「きゃっ!?」


「はぁぁ!?」


 突然、自分の身体が引っ張られ‥‥‥飛んでいるのだ。


「相変わらず、無茶苦茶な魔法ですね」


「うるせーな。お前ら落としてもいいんだぞ?」


 4人は今、()()()()している。ジャックとシスティア、ルークとマリア。2人1組が目にも止まらぬ速さで低空を駆け抜けている。


「な、なんですかこれっ!?」


「兄貴っ!?」


 何が何だか分からない2人の声を置き去りにしていく中、ジャックは渋々口を開く。


「俺たちの背後に強い抵抗を生み続けてるだけだ。不自然に生まれた抵抗に空気が反発し合って、俺たちを今強く押し出してるってわけ」


 厳密には空を飛んでいるわけではない。当たり前のように説明したが、当然分かるわけがない。


「諦めた方がいいよ。この人は言うことやること理解不可能だから」


「お前が分かってる風に話すのやめろ」


 こうしてルークたちは、王都への距離を急激に縮めていく。


(まさかこの移動方法を知ってて、彼を仲間に引き入れた‥‥‥? これなら最短で、馬車や蒸気機関車で移動するより早く王都に行ける‥‥‥)


 マリアは自分の腰を支える金髪青年を見上げる。


(でも、説得できる確証は無かったはず。それに血縁者のシスティアがここに来た事も完全に予定外だった、のに‥‥‥先輩は大して焦った様子を見せなかった)


 ルーク・グロッサは前を向いたまま視線に気付かない。彼の表情はいつも通り飄々としている。


(いったい‥‥‥先輩には何が見えてるの? やっぱり‥‥‥その眼から見る景色は常人とは異なるの?)


 マリアは彼の瞳に刻まれた聖痕を見つめ続けた。選ばれし者の証明である‥‥‥聖騎士の魔眼を。


(ディスローグくん‥‥‥私の方が先に着きそうね)


 こうして、4人は王都ローデリアへと飛んでいく。日が変わりつつある、真っ暗な夜空の下を。

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