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【40万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
10章後編 崩壊都市ベルシュテット

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夢のような時間

 交易都市ベルシュテット。


「なんか良い匂いしてきた〜!」


「お腹も空いてきたし、行ってみるか」


 アイトがカンナの手を引っ張り、ゆっくりと歩く。崩れた建物が騒動の事を呼び起こすが、それ以上に再開した店が活気よく商売している。


「はむっ‥‥‥んぅ〜!! おいし〜!!」


「うまっ!? 手が止まらん!!」


 始めは出店を回り、次々と食べ歩き。


「この魔導具ってこんなに値段が‥‥‥」


「じゃ〜ん! これどうかな!?」


「ウサ耳ですか!?」


 次に魔導具や装備店で、ショッピングを楽しみ。


「落ち着いてて、とっても和むね〜」


「コーヒーもすごく美味しい。誰が淹れてるんだろ」


「むぅ〜! 私だって上手に淹れられるもん!! エリスにだって負けないんだからね!?」


 やがて休憩がてらカフェでまったりと過ごし、楽しく談笑する。2人のデートは、すぐに時間が経っていく。


「うわ〜風つよ〜!! でも気持ちい〜!」


「ほんとだっ。しっかり掴まってて」


 景色の良い展望台に登り、海の風を身体に浴びる。当然、カンナは両眼が見えないため景色が分からない。


「ここからの景色、どう?」


「‥‥‥とても、綺麗だよ」


 アイトは高所からの景色ではなく、隣を見て呟いた。風で靡く煌びやかな銀髪。染色魔法で色を変えている自分とは根本的に異なる、彼女の象徴。

 笑顔が絶えない彼女が身に付けている白いワンピースは、眩しいほど輝いていた。肌も白くきめ細やかで、今の彼女の佇まいはまるで絵画のよう。


「やっぱり〜? ちょっと見てみたかったな〜」


 例え両眼を包帯で覆い隠していようが、カンナという優しい少女は変わらない。


「‥‥‥そうだよな」


 ここでようやく、アイトは視線を前に向けて景観を眺める。だが、心は晴れない。


「ありがとね、レスタくん」


 するとカンナが手を離して向き直り、話し出す。


「君と何かするのは本当に楽しくて、まるで夢のような時間だった」


「そんな大袈裟な」


「ううん、大袈裟じゃないよ」


 カンナは微笑み、両手を後ろに組む。僅かに、力を込めて。


「こんなに幸せなら、もう何も望まないって。これからも平気だって‥‥‥」


 だが言葉と反比例するように、彼女の顔は少しずつ下がっていく。


「後悔はしてない‥‥‥いつもの日常に、戻れるならって‥‥‥でもッ!!」


 カンナは、アイトの胸に顔を押し付ける。


「もっとッ‥‥‥君の姿を見たかった!!!」


 カンナの震えた声が、周囲に響く。アイトは何も言わずに彼女を見つめる。


「美味しいもの食べて喜ぶ君をっ、魔導具の値段に驚く君をっ、楽しそうに話す君を見たかったっ!! これからの君を、もっと見たかったよぉぉッ‥‥‥!」


 涙が流れない彼女は、嗚咽を漏らして身体を震わせる。彼女から伝わる寂しさが、悲しさが、悔しさが‥‥‥アイトの胸に届く。


「‥‥‥カンナ」


 アイトは一呼吸おくと、力強く彼女の両肩を掴んで引き離す。そして彼女の顔と距離を詰め、口を開く。


「【スプーリ】」


 それはアイトがこの世界に転生して、初めて使った睡眠魔法。


「えっ‥‥‥‥‥‥」


 相手が油断している時にしか掛からないが、虚を突かれたカンナは抗う間もなく眠りへと落ちた。


「‥‥‥あとは俺に任せてくれ」


 そして脱力した彼女を抱き抱えたアイトは、確かな覚悟を持って宣言する。


「ーーー何してんだお前はァァァ!!!!」


「あぶなッ!!!?」


 するとどこからか姿を現したターナが、勢いよく短剣を振るうのだった。


 ◆◇◆◇


 数時間後。北地区の最北端にある地下室。


「ふぅ‥‥‥」


 アイトは椅子に腰を下ろしたまま、()()()を待ちきれずに息を吐く。


「‥‥‥ん」


 するとベッドに眠っていたカンナが目を覚ます。なぜ自分が寝ていたのか、いつのまに地下室に戻ってきたのか分からない。


「ぇっ‥‥‥」


 だが安堵して息を吐くアイトの姿が()()()()()、理解が追いつかない。カンナは何度も両手で目の付近を触りながら声を漏らす。

 指の隙間からは、もう二度と叶わないと思っていたアイトの姿が‥‥‥はっきりと見えていた。


「見えるっ‥‥‥見えるよぉぉッ‥‥‥!!!」


 感極まったカンナは涙を流した。涙は止めどなく溢れて、頬を伝う。その事すらカンナにとっては嬉しく、涙がさらに溢れ出す。


「ったく‥‥‥見てるこっちがヒヤヒヤしたぞ」


 そんな彼女の背中を、後ろから現れたターナが優しく摩る。端で見ていたディルフィも涙を流し、ネルも感心した様子で眺めている。


「やっぱり‥‥‥レスタくんのおかげなんだね」


 カンナが両手を顔から離し、1人を見つめる。自分のために何か行動したという確信がある、()()をつけた銀髪少年へと。


「‥‥‥今から説明するよ」


 アイトは仮面を外すことなく、『天帝』レスタとして話し始める。


「「っ‥‥‥」」


 するとターナとディルフィが、少し気まずそうに視線を逸らすのだった。

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