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【40万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
10章後編 崩壊都市ベルシュテット

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騒動の首謀者

 交易都市ベルシュテット、中央広場。


「ネルっ、すぐに糸の準備!!」


「もうやってるからー」


 ディルフィとネルが応急手当ての準備を始める。



『よかっ、た‥‥‥』


 数分前、安堵したカンナは限界を迎えて意識を失っていた。意識の無いアイトの上に、覆い被さるように倒れ込んで。


「こんな傷だらけで、無事な箇所を探す方が難しいなんてっ」


「ほんとに辛そー」


 ディルフィが心配そうに、ネルが他人事のように声を出す中。


「ーーーカンナ様っ!! レスタ様っ!!」


 2人にとって、初めて聞く声が耳に入る。それは父親を助けるために別行動を取った、吸血鬼のニーナだった。


「ネル!!」


「りょー」


 ディルフィは咄嗟にアイトたちを庇うように両手を広げて前に出て、ネルは魔力で作った糸を手に絡ませて迎撃体勢を取る。


「私はカンナ様たちの味方です!! カンナ様とレスタさまに助けられ、返しきれない恩がーーー」


 ニーナが説明をしようと続きを話すよりも早く、飛んできた魔力の糸が両手に絡み付く。


「私さっき戦ったから分かるよー? その雰囲気、吸血鬼でしょー?」


 ネルが目を細めて淡々と呟いたことで、ディルフィも警戒心を強めて睨み付ける。吸血鬼を目の前にすれば仕方のない事だった。


「っ‥‥‥そうです。でも本当にカンナ様に仕えると決めたんです!! 敵なら声を出す前に奇襲することだって出来た、違いますか!?」


 ニーナは両膝を地面に付け、糸が絡み付いた両手を上げて無抵抗であることを示す。だが生真面目なディルフィは簡単には信じられない。


「ーーー信じたくないだろうが、この女が言ってることは本当だ。ボクが保証する」


 するとニーナの背後から現れた人物が、ディルフィとネルに話しかける。彼女は2人にとって、敬意に値する存在だった。


「ターナさんっ」


「うわ、じゃあ本当じゃん。そこの人ごめんねー」


 ディルフィが驚く間、ネルは即座にニーナへと謝る。そしてターナはその一部始終が眼中にないのか、すぐに歩み寄ってネルの足元でしゃがみ込んだ。


「レスタ、カンナ‥‥‥こんなに無理しやがって。ボクならともかく、他の構成員まで心配させるな」


 ターナは2人に愚痴を零したが、安堵の息は隠せなかった。その反応を見たディルフィが微笑むと、ターナは咳払いをして2人の容態を確認する。


「これは酷いな‥‥‥ネル、頼む。お前の糸が必要だ」


「りょー」


 ネルの返事と共に2人の手当が始まる。その最中、ディルフィはニーナの元に近づいていく。


「ごめんなさい。疑ってしまって」


「‥‥‥いえ、気にしないでください。仕方のないことです」


 そして謝罪し、ニーナとの問題も解決した。これで、完全に彼女たちのやるべき事は終わるーーーはずだった。



「ーーー動くな。レスタとその一味」



 男の声が聞こえた瞬間、ターナは『しまった』と失敗を悟る。他の人から見れば自分たちは厄介者。アイトたちの治療に意識が向いていて、その場を離れることを忘れていた。


「た、ターナさん‥‥‥」


「うわどうするこれー」


「‥‥‥」


 ディルフィ、ネル、ニーナがそれぞれ反応する。そんな彼女たちに対し、青年は名を名乗った。


「私はアルスガルト帝国軍所属、イーリス・ソードディアス」


 すると彼は隣へ手を差し出し、白い鎧を着た黒髪の少女に注目させた。


「この方はアルスガルト帝国軍所属、ミネルヴァ将軍。今回の交易都市調査の最高決定権を持つお方だ」


 ミネルヴァと呼ばれた少女は、興味なさそうに虚空を見つめていた。だが彼女から立ち込める異質な魔力の気配が、ターナたちを警戒させる。


「グロッサ王国で犯罪行為を繰り返し、指名手配まで掛けられている叛逆者レスタ。今回この都市で起きた騒動の首謀者として拘束する」


 そしてイーリスから宣言された言葉が、ターナたちに過酷な選択を選ばせようとしていた。


 ◆◇◆◇


 同時刻、中央広場の噴水。


「ーーー何をしてるんだ、ナナ!!」


 セシルが話しかけると、噴水の裏に身を潜めていた相棒のナナが眉を顰める。


「静かにしなさいっ」


 そして勢いよく腕を引っ張り、セシルも隠れるように迫ったのだ。


「こんな所に隠れていったい何、を‥‥‥」


「‥‥‥」


 セシルが噴水の向こう側を見て口が止まる。その反応にナナは後ろめたさがあるのか、何も言わずに顔を伏せる。


「‥‥‥天帝レスタを、監視してたのか?」


「‥‥‥」


 セシルの質問に対し、ナナは沈黙を貫く。覗いた先に意識のない銀髪少年がいるのは偶然とは思えない。

 また今は帝国軍の2人が対峙しているため、セシルとナナには誰も気づいていないのだ。


「まさか‥‥‥あの男を捕まえるために」


 セシルが勘付いたように呟くと、ナナは勘弁した様子で息を吐いて答え始める。


「‥‥‥そうよ。吸血鬼が死滅した今、都市の陰謀となる物証はあの男。もともとグロッサ王国で暗躍していた人物だし、捕まえればアステス王国に相当な利益にーーー」


「この都市を守ったのは彼だ。大勢を助けたのも彼だっ。それなのに捕まえるのか!?」


 セシルが思わず大声を出してしまい、ナナは慌てた様子で口を押さえる。そして眉を顰めて話し始めた。


「アステス王国とグロッサ王国は同盟を結んでる。平穏を守るために、レスタを捕らえることは大きな利益になる」


 それはアステス王国のため。彼女はそう言っているが、セシルは目を合わせて言い返す。


「‥‥‥だったら別に、()()が身柄を確保してもいいはず。なのにどうしてナナは自分で捕まえる事に固執しているんだ」


「っ‥‥‥」


 そして疑問に感じていたことを臆さず言い放ったことで、ナナは息を詰まらせた。


『ーーーやっぱりセシルくんは騙せなかったようですね〜』


 すると、突然ナナの懐から響く第三の声。魔結晶越しに聞こえてくる声は、セシルたちにとって上官にあたる人物。


「‥‥‥どういうつもりですか。メイさん」


『メイドのメイです! 無事ですかセシルく〜ん』


「茶化さないでください!!」


『も〜怖いんですからぁ。まあ、お遊びはこれまでにして、と』


 声の正体はアステス王国諜報機関『月蝕』、第二支部長のメイ。幼い外見ながらもセシルたちに時折指示を出す、上官である。


『天帝レスタは吸血鬼の親玉を倒したそうじゃないですか。それほどの力を、野放しにしておくのは勿体無いと思いまして〜』


 メイが意気揚々と話した瞬間、セシルは両手を強く握り締める。


「だから捕らえて飼い殺そうと言うわけですか‥‥‥俺にした時と同じように!!」


『人聞きの悪いこと言わないでくださいよ〜! ‥‥‥まあ取り込むという点では間違ってないですけど』


 一呼吸置いた後の彼女の声に、セシルは悪寒を感じて冷や汗をかく。それは黙り込んでいたナナも同じだった。


『ナナさんは私の指示を聞いての行動をとっただけですから、責めないであげてくださいね〜』


 まるで感情が無いかと疑うほど抑揚の無い冷え切ったメイの声色。ナナを庇うような発言をしているのに、心底どうでもよさそうに感じる雰囲気。


『綺麗事だけでは国の平穏は守れませんよ。どんな手を使っても秩序を維持する。そうやって誰かが裏で頑張っているものです』


 飄々と話すメイの言葉に、セシルは納得いかなかった。


「だからって‥‥‥この都市を救った者を首謀者として捕らえるなんて。都市内の人は皆、彼に感謝しているのに」


『それは帝国の言い分ですよ? 私は罪状なんてどうでもいい。ただレスタという男を()()()()()と言ってるだけです』


「同じことでしょうが!!」


 セシルが大声を出すと、ナナは「やめなさいっ」と小声で嗜める。上官である彼女に、真っ向から反対していることに注意しているのだ。だが、セシルは止まらない。


「命を助けてくれた人へ恩を返すどころか仇を与えるなんて、それが軍人のすることですか!?」


「ちょっ、セシル」


 ナナが必死に止めようとするが、もう遅かった。


『‥‥‥セシルくん。あなたがそこまでお人好しの理想論を語る子だとは思いませんでした』


 メイの声は完全に凍て付いている。先輩のナナですら、一度も聞いたことが無いほどに。


「ま、待ってメイ! セシルはまだこの前軍人になったばかりで、暗い部分を知らないのよっ」


『あの〜、ナナさんは黙っててもらえます? あなたはレスタを取りまく状況の監視を続けてください』


 メイの声色から迸る威圧感を前に、ナナは何も言えずに監視を再開する。すると彼女は突然、無意識に声を漏らしてしまった。


「えっ‥‥‥あれって」


 そして、状況が一変する。

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