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【40万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
1章 王立学園入学

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天帝の魔法

『え‥‥‥?』


 カンナは目をぱちぱちと瞬きした後、今日一番の大声を上げる。


『うぇぇぇぇぇぇ!? レスタくんが遺跡を吹き飛ばした!? まさかさっきの爆発ってーーー!!』


「知っていたんですね!? レスタの魔法による爆発の余波をっ!!」


『う、うん』


「今から詳しく説明しますので、聞いてください!」


 エリスはどこか興奮冷めやらぬ様子で意気揚々と語り始める。ちらちらと、前にいる憧れの背中を見つめながら。


「‥‥‥‥‥‥」


 そしてアイトは‥‥‥耳を傾けることなく、ただ自分の行動を思い出していた。


 ◆◇◆◇


 アイトたちは空を飛んで、遺跡へと向かっていた。


「アイト様。なぜ遺跡に戻るのですか?」


 2人きりになると呼び方を変える律儀なエリス。


「え? あの遺跡、壊そうと思って」


「こ、壊すのですか?」


 アイトは真顔で物騒な事を口にした。


「ああ。俺たちが侵入した痕跡が残ってるし、死体からエリスたちの力を探られてしまう可能性もある。知られるわけにはいかない」


 勇者の末裔エリス、無色眼のカンナ、呪術師ミア、毒魔法使いリゼッタという‥‥‥唯一無二の能力を持った特別な彼女たち。


(絶対に知られたらダメだ。特に‥‥‥『地獄行(ゴートゥーヘル)』には)


 アイトは危惧していた。彼女たちに危険が及ぶ事を。そして何より、自分の正体もバレたくない。


「私たちのため、なんですね‥‥‥ありがとうございます」


 エリスが頬を赤く染めるが、考え込んでいるアイトは気付かない。




「よし、ここから狙うか」


 そして、アイトとエリスは遺跡の真上‥‥‥上空に浮いていた。


「エリス、カンナたちがどこにいるか確かめてくれ」


「はい。ふうっ‥‥‥」


 エリスが集中した様子で息を吐く。

 『勇者の魔眼』で、カンナたちの現在地を調べているのだ。そして、彼女がハッと閃いた素振りを見せる。


「‥‥‥いました! ここからかなり離れてます。全員脱出したみたいです」


「よかった。これで‥‥‥心置きなく吹き飛ばせる」


 そう言ったアイトは、まるで全てを消し飛ばす魔王のように‥‥‥遺跡に向かって片手を伸ばす。


「‥‥‥‥‥‥」


 そして、しばらく硬直する。夜の風が冷たく、どこか不安を煽る。


(ーーー俺。吹き飛ばせるような魔法撃った事ないじゃん)


 きっかけは、1年半前のラルド戦。

 その時に戦闘用の魔法を準備していなかったことを、当時は相当反省していた。


(やっべ‥‥‥結局何も考えてなかった!!)


 ‥‥‥にも関わらず、今までも実用性がない(本人的には楽しめるため実用性がある)魔法しか練習してこなかったアイトである。


(どうしよっ!?)


 遺跡を破壊しようと意気込んでいたくせに、自分では壊すことができない。そのことをエリスに知られてしまうと、間違いなくマズい。


『ーーーえ? アイトさまって‥‥‥口だけ達者な人だったんですね』


 そんな未来を無意識に予想してしまい、アイトは勝手に焦っていた。


(と、とりあえず色々混ぜればいいよな!?)


 アイトは決心して両手を突き出すと‥‥‥両手の指先に、属性を帯びた魔力を発生させる。


 選んだ属性は‥‥‥火、水、雷、氷、風、土、闇、光、振動、音。


(とりあえず、これくらいで)


 闇と光は希少性が高いが、他の属性は全て基本属性である。振動属性と音属性を選んだのは、指が2本余るのは勿体無いという理由だった。いわば数合わせである。


(こうして)


 とは言っても各属性ごとの魔法の練度は決して高くない。敵を殲滅させるような、高威力の魔法を1つの属性のみで扱うのは不可能だった。

 まさに一般人、器用貧乏といった魔法の素質だった。そう、魔法の素質だけを見るなら。

 

(これを一気に混ぜ合わせて‥‥‥)

 

 両手の親指から小指に至るまで、合計10本の指で属性魔力を発動する。

 これまで花火などの大規模なものを魔法で試行錯誤しながら再現してきた事による‥‥‥常軌を逸した魔力制御。

 昔の行いから培ってきた魔力量と魔力制御。これが、アイトにとって最大の武器と言える。本人は気付いていない。


(よいしょっと‥‥‥)


 各指の属性魔力を、同時に手のひらに寄せて圧迫。各属性同士が反発し合って起こる衝撃と音、そして‥‥‥プラズマ。


「こ、これはっ‥‥‥!!」


 エリスが目を見開いて絶句しているが、集中しているアイトは気付かない。自分の、異質性を。


(普段より激しくなるのは仕方ないか。10個混ぜるなんて初めてだし)


 アイトは自分で花火を作ってきた影響で、既に目の前で起こる現象に慣れてしまっている。


(うわ‥‥‥こうなるんだ)


 そして10個の属性魔力が混ざり合ったものは‥‥‥真っ黒な融合体となっていた。凄まじいプラズマと衝撃を発している。


(これを、攻撃に使えばーーー)


 その黒の魔力を、アイトは軽い気持ちで両手から放出する。


「ーーーやっ」


 ‥‥‥あまりにも締まらない掛け声を乗せて。


「アイトさまっ!!」


 黒の魔力が光線のように飛んでいく。その迫力と音はまるで‥‥‥隕石の落下である。

 遺跡に当たった瞬間、全てを溶かしたような錯覚が起こる。そして、その直後。



      ーーーーーーーーー!!!!!



 文字では表現できないような轟音と共に‥‥‥黒い閃光が炸裂する。

 遺跡どころか‥‥‥その周囲が全て抉れ飛ぶほどの大爆発が起こった。


「こ、これはっ‥‥‥!?」


 発生した爆発音と騒音に、エリスが両手で耳を塞いで必死に耐える。


「‥‥‥‥‥‥???」


 アイトは何も言わず、呆然と見つめるのみ。


「わっ、これは凄いですっ!?」


 その後、アイトたちは凄まじい強風を浴びる。


 アイトは微動だにしなかった。いや、動く余裕が無かったからかもしれない。


(‥‥‥これ、完全にやらかしてしまった!!)


 アイトの考えは、自身の失敗のことで頭がいっぱいになっていた。


「す、すごい‥‥‥なんて破壊力っ!!!」


 エリスが目を輝かせ、ついには涙を溢れさせる。


(やべえっ、消し飛ばしちまったよっ!?)


 一方、アイトは別の意味で涙が溢れている。


「さすがですっ!! やはりアイト様は最強です!!」


「‥‥‥‥‥‥」


 遺跡と呼べるものは、もうどこにもない。

 あるのは、相当な深さの空洞のみ。


 ◆◇◆◇


「‥‥‥ということなんです!! すごかったです!! さすがレスタ様です!!」


 エリスがひたすら褒め称えていた。


「ほんっとうにーーー!!」


 アイトの放った魔法が凄まじかった!

 放った後の後ろ姿に感服した!!

 クールで最強の『エルジュ』の代表!

 自分たちはアイトに仕えることが光栄!!!


 こんな事を、エリスが嬉々として語っている。魔結晶越しのカンナたちに、早口で捲し立てながら。


「‥‥‥‥‥‥」


 アイトは自分のやらかしに気を取られ、エリスの話してる内容を全く聞いてない。


『こっちにまで爆発音が聞こえたもん! さっすがレスタくん!』


『あれってお兄ちゃんがしたんだ!! さすがお兄ちゃん! カッコいい♡』


『レーくん、すごい、だいばく、ばくはつ』


『フン、そのくらいやってもらわねば代表失格だ』


 カンナたちも各々で、アイトのやった事に反応を示す。


「また詳しいことは後日教えます。レスタ様、任務は全て完了しましたよね?」


「‥‥‥ああ」


 エリスの確認に対し、今のアイトは空返事しかできない。


「というわけで任務完了です、お疲れ様でした。今日は拠点に帰って休みましょう!」


『ラジャ〜! おつかれ〜!!』


 カンナがそう言うと、魔結晶の接続が来れる。


「アイト様、私たちも帰りましょうか。アイト様は普段通り、学生寮に戻りますよね?」


「‥‥‥ああ」


「それでは途中までお供致します。私は王都の『マーズメルティ』に戻るので」


「‥‥‥ああ」


 エリスがグロッサ王国目指して飛んでいくのを、ぼんやりしていたアイトが後を追う。


「さすがアイトさまっ!! 私、本当に幸せです!!」


「‥‥‥ああ」


 こうして、王女救出作戦は終了する。


(使い方、もっとちゃんと知ろう‥‥‥)


 アイトは魔法の使用を深く見つめ直すのだった。


「〜〜〜♪」


 両目を閉じて、はにかむエリス。

 そんな彼女が両手で持っている、別の魔結晶には気づかなかった。


 ◆◇◆◇


 次の日。

 エリスが魔結晶で撮った()()は、組織『エルジュ』の本拠地で放送される。


 そのことを知った元訓練生たちは、自分たちの任務を早急に終わらせる。

 そして、『天帝』レスタが放った魔法を見た。



「「「「うぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」」」」



 結果、大歓声が上がる。

 凄まじい威力。神々しさ。

 代表はここまですごいのかと、構成員たちは改めて敬意を表した。そしてみんなが口を揃えて言う。


「こんなの、代表にしか出来ない超絶魔法だ!!」


「さいっこう‥‥‥!! まさに天の器ッ!!」


 代表が放った魔法は‥‥‥『天帝』の魔法は。



   まさに、【終焉】という名が相応しいと。


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