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【40万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
10章後編 崩壊都市ベルシュテット

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強者の条件

 時は遡り、8月の夏休み後半。


「何休んでるアイト、さっさと立ち上がれ!!」


「はぁっ、はぁっ、くそがッ‥‥‥!」


 アイト・ディスローグが師匠のアーシャに修行の一環として扱かれていた頃。


「ったくまだまだ弱い。時間が惜しいから、お前が立ち上がるまでに授業をしてやる」


「熱心な師匠で、助かるよッ‥‥‥」


「戦いにおいて自分よりも格上と戦う事は珍しく無い。そんな修羅場を経て、自分自身も強さに磨きをかけていくのだから」


「無視ですか!?」


 仰向けに倒れるアイトが声を荒げてツッコむ間も、アーシャの話は続く。


「そこでだ、お前に1ついい事を教えてやる。それは‥‥‥強者の条件についてだ」


「強者の‥‥‥条件?」


「ああ。じゃあ早速聞くが、お前が思う強者に必要な条件はなんだと思う」


 微笑むアーシャが見下ろしながら質問する。突然の事でアイトは少し考え込むも、やがて答えを出した。


「‥‥‥強い魔法を使えるとか。それか強靭な精神を持っている? つまり、尖った強さを持っているとか」


「なるほど。お前の考えは的外れじゃない。確かに強者はお前が言ったものを持っている可能性は高い。だが、あまりにも抽象的過ぎる」


「ちゅ、抽象的?」


 アイトは納得いかないのか眉を下げて呟く。するとアーシャは両手を振って答えてみせた。


「強い魔法というが、どうやって強弱を判断する。威力の高い魔法だけが強いって根拠か? それなら精神を支配するような魔法は弱いのか?」


「それは、確かにそうだけど‥‥‥」


「精神も同じだ。確かに強い方が有利だが、精神力の違いなんて明確に判断なんてできやしない。尖った強さというのも、説得力に欠ける」


「‥‥‥じゃあ聞くけど、アーシャの思う強者の条件ってなんなの?」


 アイトが訝しげに問いかけると、アーシャは自信満々に口を開いた。


「それはなーーー」


 ◆◇◆◇


 交易都市ベルシュテット、中央広場。


「はぁっ!!」


 アイトは声を出して自分を鼓舞しつつ、右手に持った聖銀の剣を鋭く振り下ろす。アムディスが左手の血の剣で受け止めると、右手を振りかぶる。


「ッ!!」


 アマディスの右フックを、アイトは顔を横に逸らして回避。すかさず反撃として、自分を左足をアムディスの脇腹に叩きつける。


「ほう」


「ッラッ!!!」


 アイトは左足を勢いよく振り抜き、アムディスを後方へ蹴り飛ばす。そしてすかさず剣を握り直して距離を詰め、追撃する。

 だがアムディスも反応速度では負けておらず、アイトの剣撃に対応する。


「ッフ!!」


 アイトは全く臆する事なく距離を詰めて剣撃を行うことで、アムディスの反撃を最低限にまで減らしていた。やがてアイトの剣が彼の肩を掠め、剣が当たり始める。


「人間にしてはよく動く」


 アムディスは膝を抜いて体勢を下げると、その勢いでアイトの背後に回り込む。


(後ろッ!!)


 だがアイトも決して負けていない。自分の背後に来たことを察知すると前転して距離を取り、反転して剣を振りかぶった。

 結果‥‥‥2人の剣が激しく衝突し、鍔迫り合いとなる。


(思ったよりもよく動く‥‥‥私がてこずっている?)


 アムディスは少し驚いた様子で剣越しの相手を見つめる。アイトは決して今の戦闘で余裕があるわけではないが、確かな手応えを感じていた。

 そしてふと無意識に脳裏を過ぎる、師匠アーシャの言葉。


『それはなーーー身体能力だ』


(強敵相手なら、そもそも動けないと魔法を発動する前に殺される。だから身体能力は戦闘を支える土台で必要不可欠。アーシャが言ってた通りだ‥‥‥!!)


 アイトは言葉の意味を噛み締めていた。吸血鬼アムディスとの戦闘で、その真意を理解できたのだ。

 アーシャとの修行は‥‥‥魔法を学びたいアイトの希望に反して、大半が身体を鍛えるものだった。全ては、どんな強敵でも真っ向から戦えるように。

 そんな彼女の実戦的な修行を通して、アイトの身体能力は飛躍的に向上した。


「面白い。少し興が乗ってきた」


 長年生きている吸血鬼アムディスが、『敵』と認知するほどに。


「だからこそ、出し惜しみはやめよう」


 アムディスがそう呟いた瞬間、アイトは目を見開く。自分の視界から見える景色が、一瞬で変わったのだ。

 魔力を瞬間的に燃やして作られた魔燎が、アムディスの身体から周囲へ影響を与える。



「魔燎創造 『血風赤裸けっぷうせきら』」



 自分の視界に映る全てが、赤く染まる。まるで、全てが血に呑み込まれたように。


「これで人間の君に勝ち目はない」


「‥‥‥くそが、吸血鬼も魔燎空間を扱えるのか」


 アイトは無意識に理解した。吸血鬼アムディスの魔燎が作りし独自空間に閉じ込められたことを。


 ◆◇◆◇


 同時刻、南地区。


「早くこの都市にいる人たちを救助しないと!」


 秘密組織エルジュの序列3位、カンナは部下となった(?)ニーナと共に壊された橋へ向かっていた。どうにかして、都市からの脱出手段を作り出すために。


「ーーーっ!?」


 だがカンナは強烈な寒気を感じ、反射的に後ろを振り返る。すると中央の方角に、真っ赤な球体が佇んでいた。


「なに、あれ‥‥‥」


 カンナは目を見開いて震える口を動かす。明らかに異質な光景と、その場にいるはずの人の事を考えずにはいられない。


『どうにか都市内の人たちを助けてあげてほしい。俺は、吸血鬼の親玉を倒す』


 だが、アイトから伝えられた言葉がカンナの気持ちに蓋をしようとする。異常な光景を目にして、アイトが心配でたまらない想いを。


「‥‥‥カンナ様」


 そんな彼女を察し、ニーナが足を止めて肩に手を置く。そして、諭すように話しかけた。


「正直、あの方のことは全く知りません。ですが、カンナ様が心底慕っているのは理解できます」


「っ、ニーナ‥‥‥」


「冷静にあの方の指示を全うするか、それとも後で何を言われようとも駆けつけるか‥‥‥カンナ様が決めてください」


 ニーナはただ、意見を尊重すると宣言する。それによって、カンナはますます迷いが生じる。


(レスタくんの指示は正しい‥‥‥私なんかが行っても、足手纏いかもしれない。でも、でもッ‥‥‥!!)


 カンナは両方の手の平を強く握り締め、目をカッと見開いて走り出した。


「この都市で1番死なせたくないのは、レスタくんなんだもんっ!!!」


 大胆な発言を無意識に叫んだカンナは、無我夢中で走る。そんな彼女の背中を見たニーナは、少し呆れて微笑んだ。


「‥‥‥頑固でめんどくさそうな主です」


「ねぇ何か言ったかなぁ!?」


「いいえ。仕えがいがあると思いました」


 ニーナは微笑みながら首を横に振ると、主であるカンナの後に続くのだった。

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