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プロクラトル  作者: たくち
氷の世界
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冒険者

「あっ!そこにあるのが冒険者ギルドじゃない?」


 スーリアの街を散策していたユナが声を上げ指を差した先には一際大きな木製の建物がある。

 入り口から複数名の武装した者達が出ている所を見るにそこが冒険者ギルドで間違いないだろう。


 天井の非常に高い建物は酒場としても営業しているのだろう。

 日の暮れた街から多くの冒険者達が集まり、それぞれ知り合いと話をしながら盛り上がっている。


 冒険者ギルドの中に入ったシン達はその中にいる人物の人相を確認していく。

 桃色の髪の女性を中心に森の世界で出会った女性達の姿がないか見渡しているのだ。


 だが目的のSランク冒険者達はギルドの中には居なかった。

 簡単に見つかるとは思っていなかったので落胆する事は無いが、あまり時間をかけたくないシン達にとって、ここに居てくれたら楽であったのは事実だ。


 リリアナの姿に変化したティナの案内のもと受付と思われる場所にシン達は向かう。

 やはり冒険者ギルドに来る者の顔は大体知っているのだろう、初めて訪れたシン達は注目の的となっていた。


「初めての方々ですね、ギルドカードの登録をお願いします」


 受付にいた女性はシン達が到着すると業務的に声をかけてくる。

 彼女達受付はもとに冒険者の顔を覚えている。

 初めて見るシン達が来たと言う事は氷の世界で活動をする新しい冒険者と言う事だ。


「この子以外はギルドカードを持ってないんだ。発行をしてもらえるか?」


 Sランク冒険者の事を聞きたかったが、話の流れを切ると悪い印象を持たれてしまうかもしれないので先にギルドカードを発行してもらう。


 シンの言葉に受付の女性は目を丸くしたが、すぐに発行手続きを始めた。

 まさか氷の世界にギルドカードを持たない者が来るとは思っていなかったからだ。


 だがこのスーリアまで辿り着いた事はシン達にそれなりの実力があると言う判断が出来るので受付の女性と他の冒険者達は名も無い新人にさらに注目していた。


「ではそちらの方のギルドカードを提示下さい。パーティー登録をします」


 シン達の発行手続きを終えるとユナのギルドカードを提示した。

 受付の判断で先にギルドカードを持っていたユナをリーダーと考えていたのだ。

 誰がリーダーであってもシン達に問題はないので受付の女性の言葉に素直に従う。


「えっ⁉︎Eランクですか?」


 ユナのギルドカードのEランクの文字に受付の女性は思わず声を上げてしまう。

 このスーリアまで到達出来るのはBランク冒険者でも困難であり、Eランク冒険者などこの街に存在するのはランク昇格をしない商人やもともとこの世界に生まれた者以外にいないのだ。


「おい、聞いたかよ。Eランクだってよ」


 受付の女性の言葉に酒場にいた冒険者達から失笑が漏れる。

 先ほどまで一目おくべき存在と思っていた者達がまさかのEランクだ。

 シン達に向け嘲りの言葉も発せられている。


「気にするな」


 皇龍刀”契”に手を添えていたユナをシンが落ち着かせる。

 シン達の目的はランクを上げる事でも冒険者として成功する事でもない。

 ここにいる者達にいちいち関わっている暇はないのだ。


「こちらが皆様のギルドカードになります」


 受付の女性から渡されたカードはユナと同じく青色のカードに名前とランクが記されている。

 ティナはその正体を知られる訳にいかないので、リリアナとして登録をした。


 簡単に出来ているようであるが、ギルドカードの発行は犯罪歴などがあると制作する事が出来ない仕組みになっており、これを持っていれば高ランクの者はかなりの信用を得る事が出来る。


「人を探したいんだが」


 ギルドカードの発行を終え受付の女性に桃色の髪の女性についてシンは聞く事にした。

 先ほどの反応を見るに酒場にいる他の冒険者では話を聞いてもらえない可能性が高い。


「どのような方でしょうか?」


 森の世界で出会った女性達の特徴をシンはうろ覚えながらも説明をする。

 だがシンの話が進むにつれ受付の女性の表情が蒼白になっていった。


「本当にその人物であっているのですか?」


 説明を終えたシン達に受付の女性はそう答える。

 先ほどまでの落ち着いた態度と打って変わって怯えたように声を出している。


「ああ、間違いない」


 シンは何故このような態度となったのかわからないが、あのSランク冒険者の特徴を間違えてはいない。


「お、おい!嘘だろ!」


 シン達の話を聞いていた他の冒険者が声を荒げながら近づいて来る。

 その顔も受付の女性と同じく怯えているように感じる。


「”双蒼の烈刃だぞ!お前らは死にたいのか⁉︎」


 どうしてそうなるのかシン達は理解が出来ない。

 あの女性達から危険な雰囲気は感じていなかった。


「これだからニュービーは困るんだ!お前らみたいな奴らに巻き込まれて死ぬなんざ俺はごめんだ!」


 男の言葉に続き次々と冒険者達が怒声を上げギルドから立ち去る。

 気付くとギルド内にはシン達とギルド職員の姿しか無くなっていた。

 残ったギルド職員はその職務をまっとうしなくてはならないので怯えながらも仕方なく残っている様子だ。


「なんなんだ?」


 突然の出来事にシン達も困惑していた。

 ティナですらも何が起こっているのか理解していない様子だ。


「あなた方は太古の呪いを知らないのですか?」


「太古の呪い?」


「”双蒼の烈刃”のメンバーの1人、アイナ・ルーベンスの事です」


「ああ、確かそんな名前だったな」


 桃色の髪の女性は仲間からアイナと呼ばれていたのをシンは覚えている。

 その時の事を思い出し、アイナと言う女性は確かに仲間の金髪の女性から何かを言われていたのを思い出した。


「それがどうしたんだ?」


「アイナさんは2年ほど前に未発見の遺跡を発見しました。その時に遺跡から持ち出した透けて見えるほど薄い青色の双剣を手にして以来、太古の呪いをその身に宿したのです」


 アイナと言う女性は確かに双剣を持っていた。

 その双剣がユナのもつ皇龍刀”契”と同じくらいの業物である事は気付いたが、呪いのように負の印象は受けていない。


「アイナさんはそれ以降、夜は自室に閉じこもるようになりました。お仲間の方が他の冒険者に迷惑をかけないようにした為です。アイナさんの呪いは夜になると強力になり、彼女の力でも抑える事が難しくなるからです」


 受付の女性の言葉にアイナと言う女性は今は自室にいるとシン達は知る事が出来た。

 森の世界の宿でもアイナは仲間の女性に部屋へと連れ戻されていた。


「アイナさんが呪われて以降、謎の人格が現れその体を奪おうとしているとの事です。それにアイナさんは右眼に魔眼を宿し、左腕には刻印を刻まれています。太古の呪いが暴走するのを防ぐ為、それぞれを封印しています。ですが呪いが強まると周囲の人間や建物を見境なく滅ぼすそうです。今はまだ被害は出ていませんが、いつ暴走するかわかりません。その為彼女に近付く事はこの世界では避けられている事なのです」


 先ほどの冒険者達の反応はその暴走を恐れての事だろう。

 アイナに接近しようとするシン達はその呪いを暴走させる可能性がある。


「魔眼か、厄介だの」


 受付の女性の言葉にティナが反応を示した。

 魔眼、と言うからには彼女もその存在を知っているのだろう。


「どういう物なんだ?」


「魔眼はごく稀に宿る事のある異能の力を秘めた瞳だ。魔族の血が薄れている今は持っている者はほとんどおらんと思っていたがの」


 魔眼は魔族の中でもほとんど持つ者はいない。

 強大な力を秘めている事が多く、その能力はどれだけ距離のある場所でも見る事の出来る瞳やシンの虚無の大鎌のように見つめた物や魔術を打ち消したり、未来視の力を持つ事もあると言う。


「腕の刻印はわかるか?」


 魔王であるティナであればアイナの呪いについても何か知っているかもしれない。

 その呪いを打ち消す事が出来るのならば、獣王の情報と交換条件を持ち込む事も出来る。


「いや、わからん。妾の知らぬ呪いの可能性があるからの」


 ティナでも知らない事はある。

 それほど世界の秘密は多いのだ。


「ユナと違って武器に認められなかったのか?」


「その可能性はあるの、妾は契の事を知っておるが、他に妾の知らぬ者が武器に姿を変えて創世から今まで封印されていた可能性もあるからの」


 ユナは契に認められその力を使う事が出来る。

 受付の女性が言う謎の人格は契と同じ存在であると思われるし、アイナはその武器となった存在に認められていない可能性が高い。

 契と違い友好的でない存在であった場合、アイナの体を使用し世界の脅威となる。


 シンがアイナと接触した時は異常はなかったようだが、状況が変わってしまっているかもしれない。

 既にアイナは乗っ取られている場所も考えられる。


 想像していた事とまた違う問題にシンは頭を抱えたくなる。

 どうも嫌な事が起こる気がするのだ。


「アイナって奴はどこにいるんだ?」


「双蒼の烈刃は先週に依頼を受けてスーリアにはいません。ですが予定では2日後が依頼の期限です。もし本当にお会いしたいのなら2日後にここにいらして下さい」


 受付の女性からは言葉とは逆に来るなと言っているような雰囲気が感じられる。

 たまがシン達は退く事は出来ない、シーナを取り戻す僅かな可能性をアイナと言う女性にかけているのだから。

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