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プロクラトル  作者: たくち
森の世界
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シーナ奪還

 ロイズを連れ、シンは宿屋へと入る。

 部屋で休憩していたユナ達を集め、シンはユーギリアでシーナと接触してきた内容を伝えた。


 他の仲間達もシンと同じく獣王になったシーナはその体を何者かに奪われていると答えを出していた。


「先代の獣王が自分を取り戻している事からシーナさんを取り戻す事は可能でしょう。わたくしの予想では獣王任命式で何かがあったと思います。ロイズさんはあの任命式で何をするか知っていますか?」


 シンの話を聞いたリリアナはシーナが変わった原因を任命式だと考えた。

 確かにナナが最初に違和感に気付いたのは、任命式の後にシーナと接触した時だ。


「任命式と言っているが、その時は先代の獣王様と次期獣王様しか任命の間に入る事は出来ない。何があったのか知ってるのは獣王様しかわからない。先代様に聞こうにもその時の記憶は無くなってるだろうね」


 シーナと入れ替わった先代の獣王は任命式の内容を覚えていないとロイズは言い切る。

 それではシーナを取り戻せる可能性がほとんど無い。


「入れ替わっている間のシーナはどこに行ったんだ?」


 先代の精神と同様にシーナ本人の精神もどこかに必ず存在する。

 まずその保管場所を探す事から始めるつもりだ。


「確か新たな獣王様の誕生と同時にユーギリア城には新しい獣王の姿を模した像が世界樹によって作られる。それが怪しいね」


 シンの疑問にロイズはすぐに答えを出す。

 彼を連れて来たのは正解だった。


「どこにあるのかわかるか?」


「ユーギリア城の最上階に獣王様しか入れない場所がある。恐らくそこにあるはずだ、だが入るのは困難だぞ。獣王選定に出てないが使命を果たした強者がユーギリア城には沢山いる」


 ユグンの街中に住む使命を果たしてから働かずにいる者達と違い、ユーギリアに居るのは己を鍛え続けている強者達だ。

 ユーギリア城には千人近いその強者達が居るのだ。

 さすがにシン達でもそこに忍び込むのは簡単ではない。

 ロイズの吸引闇虫も獣王レオル・フリードには見切られていた。


「それに獣王も引きずり出さないとな」


 シーナの精神が入っていると思われる像と獣王レオル・フリードを引きずり出し、入れ替わりをさせなければならない。

 精神を移す方法はわからないが最低でもその2つはやらなければならない。


「獣王はいつもどこに居るんだ?」


「獣王様はユーギリア城の最上階にいつもいる。そこから動く事はほとんどないね」


「なら、先にその像を入手しましょう。その後に獣王に接触し、シーナさんを取り戻します」


 獣王が同じ場所に居るのであれば、先に目標にするべきは世界樹で作られる像である。

 像から何か精神の入れ替えの情報を得られるかもしれないとリリアナは優先順位を付ける。


「ティナは何か知らないのか?」


 長い時を生きるティナならば何か知っている可能性がある。

 ノアが力を使い果たし休んでる今、何か意見が聞けるのは彼女しかいない。


「妾の言える事はないの。強いて言えるのは神の争いに妾は関与しないと言っておくかの」


「それは、獣王に山の神が関与しているという事ですわね」


 ティナの言葉にリリアナがすぐさま答えを出す。

 関与しないと言いながらも答えに近い事を言うティナは優しかった。


「仮に山の神が獣王の側に居るのなら対抗出来るのはシン様になりますわ。ノア様がまだ万全でない以上、神と対峙は危険ですがそうなる可能性が高いですわね」


 山の神サリスに代行者は居ない。

 だがティナから獣王と関与が知らされたサリスを無視する事は出来ない。

 神同士の戦闘は禁止だが、代行者のシンは神とも戦う事が出来る。

 神との対峙は危険だが接触は避けられないだろう。


「さすがに神に勝つのは不可能だぞ」


 シンであっても神に勝つ事は出来ない。

 万全のティナでも勝てるかわからないのだ。

 魔王と互角の存在に挑むのは無謀な事だ。


「山の神が出て来たらすぐに撤退する。これは必ず守ってもらうぞ」


「しかし、どうやってユーギリア城に入るんだい?」


 ロイズはシン達の会話に神の名前が出て来た事を不思議に思っていたが、城に忍び込み獣王の像を入手する事と獣王本人に接触しようとしている事はわかる。


「そこでロイズに協力して貰いたい。ロイズと俺とエルリックで像の入手、ユナとナナは城の前で暴れてくれ」


「シン様達が像を入手した後、獣王の精神をどう切り離しますか?」


 像を入手してもシーナを元に戻すには獣王レオル・フリードの精神をシーナの肉体から移し替えないとならない。

 精神の入れ替えなど聞いた事がない。


「それなら僕が力になれるかもしれない。やった事はないが、吸引闇虫は精神も引き剥がす事が出来るかもしれない」


「ならロイズには像の後に俺と獣王に挑んでもらう。俺が奴を引きつけるからその隙に吸引闇虫の力を使ってくれ」


 獣王と対峙するのはシンとロイズの2人。

 ユナ達にはシン達がユーギリア城に侵入する為に城を攻め、敵を引きつけてもらう。


「城の警備が薄い日はないのか?」


「それなら、獣王様が月に1度山の神サリスに接触する日がある。その時獣王様は世界樹に行く、秘密裏に行われているから知らない人も多いが、その時なら城の警備は薄いはずだ」


 次に獣王が世界樹に行くのは2週間先とロイズは追加で説明する。

 彼は獣王を目指していた事もあり、獣王のする事を個人的に調べていた。


「あんた達、やっと気付いたのね」


 シン達の部屋に1人の女性が入り込んだ。

 身構えるシン達だったが女性に敵意がないのを確認して、元に戻った。


「メリィは獣王の事を知っているんだよな」


 今ならメリィが言った事の意味がわかる。

 シン達にシーナを殺すと言ったのはまさに今の状況の事を言っていたのだろう。


「そうよ、だからシーナちゃんにその役目をさせたくなかった」


 メリィはシーナに悪意を持っていたのではなく、獣王の秘密を知っていたからシーナの邪魔をしていたのだ。

 メリィが獣王の事を知ったのは本当に偶然であったらしく、それを知ったメリィは自分から獣王候補に立候補したそうだ。


「私も協力するよ」


 シン達の話を聞いていたのだろう。

 メリィは協力を申し出た。

 彼女の事をロイズは良く思っていないが、今は少しでも戦力が欲しいところだ。


「ならメリィにはユナ達とユーギリアを攻めてもらいたい」


 炎を操るメリィが暴れれば、全てが木で出来ているこの都市は炎に焼かれる事になり無視出来ない。

 敵の戦力を集めるのにもってこいの能力だ。


「わかった、私も出来るだけ戦力を集めるね」


 メリィの参戦は心強い。

 その能力の高さをシン達は獣王選定で身をもって味わっているし、そのメリィが仲間も集めると言っている。

 それならばユーギリア城への陽動も成功する可能性が高い。


「2週間でどれだけいける?」


「そうね、200はいけるね」


 使命を果たした者を200人集めるとメリィは断言する。

 警備の薄くなったユーギリア城ならば十分と思える数だ。


「俺とエルリック、ロイズはユナ達がユーギリア城を攻めたと確認してから突入する。像を見つけたら通信を入れる。それまで持ちこたえてくれ」


 シーナの奪還は2週間後。

 メリィは仲間を集め、シン達はロイズが精神の引き剝がしが出来るのか調べなくてはならない。


 獣王レオル・フリードに奪われたシーナを取り戻す為、獣王選定で争いをしていた者達が同じ目的を果たす為動き出した。

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