藤堂先生×山下先生
クリスマスに出かけた時の陽菜ちゃんに身に起きた原因を陽菜ちゃんは俺に話したいと言ってくれていた。その前に心療内科の主治医は、医大時代からの友人の山下智樹だった事もあり、事前に相談することにした。
「はい、心療内科山下です」
「NICUの藤堂です」
「おぉ! 大雅じゃん、珍しくどうした?」
「電話じゃちょっと。そっち行くわ。智樹の都合に合わせるから時間作ってくれない?」
「わかった。飯食いながらって話でもないんだな」
「悪いな」
「いや、珍しく大雅からの頼みだからな。俺で役に立てるならいつでも言ってくれ」
時間を作ってもらい心療内科の山下の診察室へやって来た。人払いをしてくれてあり山下の配慮に感謝しかない。
「で、どうした?俺に相談なんて。初めてじゃんこんなこと」
「うん。っていうか誰にも言ってない」
「そんな大事なことを俺に相談? なんか怖いな」
そう思うよな。陽菜がお前の患者じゃなければ相談なんてしてなかったもんな。
「今から聞く話は誰にも言うつもりもないから大雅のタイミングで話してくれて良いよ。時間は気にしなくて良いよ」
「ありがと。正直にいうわ」
「おう、なんだよ。こえ〜な。何を言うつもりなんだよ」
「この前のクリスマスに気になってる子と、泊まりで遊びに行ったんだよ」
「お前がか!おう。彼女か?」
お前、そんなに驚くなよ。俺の方がびっくりするわ。
「いや、これから交際を申し込む予定の子なんだけど」
「お前、俺がクリスマス仕事に追われてたときお前はクリスマスお泊まりデートをしてたんだな。しかも告白前なのにな。へぇそうか。うん、まぁ、それで……」
なんだよ。話しづらいなぁ。いちいち感想言うなよ。
「泊まっていたホテルで一瞬だったけど停電になったんだよ。その時、彼女が過呼吸発作起こして、落ち着かせて早めに休ませてから病棟師長に連絡して心療内科受診歴を見てもらったら、主治医が山下って言われて……」
「おい、待て待て。それって俺が主治医をしてるって事か? ってか誰?」
そう言ってパソコンを操作し始め電子カルテを起動させていた。
「なぁ、病棟師長に聞いたって言ったよな?って事は、その子ここの看護師か?」
「そういうこと」
「もしかして、大雅って新生児科医だったよな。って事はNICU。そこのナースって事か!」
そう言ってキーボードをパチパチ打ち込んでいる。どうやら気が付いたか?
「もしかして、違ってたら聞き流せよ。陽菜ちゃんか!?」
って、おい。何でお前が名前で呼んでるんだよ。
「そうだけど。なんだよ」
「マジかよ」
「智樹お前……」
「いや、まだ何もしてね〜って」
何もしてないって何かするつもりだったのかよ。お前、主治医だろ。ちゃんとしろよ!
「睨むなよ大雅。話聞くから」
「今度、陽菜ちゃんが、過去の事を俺に話すって言ってくれてるんだよ。俺は何を聞かされても支えていくつもりだから陽菜ちゃんに心配するなって言ってあるんだけど俺に迷惑かけちゃうって気にしてて話をするって決意してくれて来週ふたりで会うことにしてるんだよ。その時に、発作起きないとも限らないから。主治医のお前に相談に来たんだよ」
「俺の癒しの陽菜ちゃんがお前のものになるのかよ……」
「そんなことより、どうなんだよ」
「真面目な話するな」
ってか、真面目に答えろよ。こっちは真剣に相談してるんだから。
「自分から話すって言ってる時点で、ある程度の覚悟はしてると思う。でも心の奥で当時の怖かった感覚が蘇るんだと思う。でも乗り越えようと頑張ってるんだな。過呼吸発作の対処法は知ってるだろ」
「そりゃ、もちろん知ってるし陽菜が発作起こして対処した」
「だったら問題ないだろ。お前が付いてんならさぁ。チアノーゼ出るようなら連絡くれ。場合によっては救急搬送しろ」
「そうするわ。サンキュ。悪かったな時間取らして」
「いや、良いよ。大雅の恋の行方を見守るわ。俺の癒しの陽菜ちゃんってところが悔しいけど」
「お前、外来看護師のなんちゃらって子は、どうなったんだよ。すんげ〜有名だったぞ」
「妄想さわちゃんね。もう酷かったよ」
「お前もそろそろちゃんとした恋しろよ」
「だったら陽菜ちゃん俺にくれ」
これ以上、コイツ相手にしてると変な方向へ話が逸れる。病棟に戻ろう。診察室の扉を開こうと取手を握ると
「大雅、頑張れよ」
そう背中を押してもらった。コイツにも真剣に恋愛を考える相手が現れることを願っている。




