永遠×大手術
遂にやってきてしまった、今日この日。午後から陽菜の務める病院の皮膚科で、オペを受ける事になっている。しかし、肝心の妹の陽菜は『処置室で局所麻酔の簡易オペじゃん。そんな手術なんて大袈裟なものじゃないじゃん』と言って相手にしてくれない。
午後3時。皮膚科の外来受付に書類を提出する。処置室から看護師さんが出てきて色々と質問をされる。
「お食事や水分摂取などのお約束事は守られていますか?」
「はい。決められた時間以降、絶飲食しています」
「付き添いの方は? ご一緒じゃないんですか?」
「妹が、こちらの病院の周産期医療センターのNICUで看護師をしています。今日は日勤で勤務しているので、そちらにコールしてくださいと妹が言っていましたが、それでも大丈夫ですか?」
「もちろん大丈夫ですよ。妹さんのお名前は?」
「陽菜です。矢崎陽菜」
看護師さんは、サラサラとメモっていく。
「さぁ、処置室へどうぞ」
そう言って扉を開けて、俺を中に招き入れて扉に鍵をかけた。
簡易ベッドに上着を脱いで肩を出してうつ伏せに寝かされると、右腕に血圧を測量するためのカフを巻かれ、指先に酸素濃度を計測するものをはめられ、心電図のための何かをペタペタあちこちに貼られた。それを流れるように行う看護師さんに、すげ〜と関心していた。陽菜には、まだ無理だな。と勝手に想像する。そして俺の耳に届いたのが。
「只今から粉瘤摘出術を行います」
「15:20開始です」
「矢崎さん、今から麻酔かけますね」
そう言われ肩に注射を受ける。我慢できない痛みではなかった。この先生、注射上手だなぁなどとまだまだ余裕の自分を褒めてから数分。
「これ、痛いですか?」
と、聞かれ何も感じなかったので。
「痛くないです」
そう答えると、それでは処置していきますね。と宣言してきた。コレが結構緊張して変なところに力が入ったりするが我慢する。しばらくすると。
「先生、今日のお昼、キッチンカー並んでましたね」
「そうそう、北村さんは行ったことは?」
おいおい、俺の大手術の真っ最中に何の話してるんだ? キッチンカーより、俺の手術に集中してくれよ〜と思うが、言うわけにいかず黙って聞いている。
「今日、榊原先生に会いました?」
「いいえ、何かありました?」
「髪切ったらしいんですけど、どう見ても野球部か? って感じにしか見えないんですよ。本人曰く、モテ髪らしいです」
「うわぁ、それは見ないとだね。でもあの人、いつも今の流行はコレだぁとかいう割にズレてるよね」
「うわっ、先生ズバッと言いますね」
「あはは」
「あはは」
おいおい、俺の大手術をしながら、医者の悪口かよぉ。聞いてるけど良いの? まぁ、チクることはないけどさぁ、そんな時だった。
「矢崎さん、血液をサラサラにするお薬とか飲んでないですよね?」
と、質問された。
「健康体なので薬飲んでないです」
そう答えると返事がなく、肩を抑え止血しているかのような感覚が伝わってきた。
モニターの波形が乱れたのか。
「ご気分悪くないですか?」
「少し痛いです」
「麻酔もう少し足しますね」
こんなやりとりがあり、また痛みは無くなるものの、肩に何かを施されているのがわかる。そんなのすぐ終わるって言ってた陽菜だか、嘘つき陽菜に格下げだな。終わる気配無いぞ。
1時間後ようやく俺の大手術は終わった。あちこち貼られた物が剥がさせる。指に付けられたパルスオキシメーターも外され、カフも外された。
「お疲れ様でした。ゆっくり起き上がってみてください。クラクラしたりしませんか?」
「大丈夫です」
着替えて大丈夫ですよ。と言われシャツを着る。諸々の準備が整ったら、看護師さんに注意事項を伝えられた。
「気分が悪くなければ術後飲食して大丈夫です。飲酒や喫煙は避けてください。抗生剤と鎮痛剤をお出ししておきます。ガーゼ交換は明日行いますので来院してくださいね。シャワー、入浴は手術当日は不可です。血行が良くなると痛みや出血の原因になるためです。そして、痛み、発熱、気分不快などがある時は、電話で確認後、来院してください。17時20分以降は、救急外来に受診してください。救急外来担当医の診察になります」
色々と説明をしてくれた。陽菜のやつ軽く、大丈夫大丈夫そんなの。とか言ってたのに、こんなに注意深く説明を受けたぞ! 大手術だったって事だろ。陽菜のやつめ。
「ありがとうございました」
「お大事になさってください」
1階の会計窓口へ書類を持って行く。会計をして薬をもらって帰宅した。




