岩崎先生×白衣のポケット
「岩崎先生、白衣のポッケ何入ってるんですか? パンパンじゃないですか!」
この病棟で仲良くしている看護師の笹井悟君が、白衣のポケットを二度見の勢いで見て話しかけてきた。それはそうだろう。
「聞いてよ! さと君!」
「聞きます聞きます。聞きますとも!」
僕の相棒でもある、さと君。その時、陽菜ちゃんの声がした。
「悟、蓮くんのオムツ怪しそうだよ」
「はーい、陽菜先輩ありがとうございま〜す。蓮くん、すぐに悟くんが行きますよぉ〜。岩崎先生、また後で〜」
「おいおい、さと君。えぇ〜」
「岩崎先生、どうかされました?」
「陽菜ちゃん、藤堂先生が僕のポケットに、どんどん可愛くないボールペンを入れてくるんだよ。自分は可愛いボールペンが鎮座してるのに、僕にはほら、製薬会社の宣伝ボールペンなんだよ。もうポケットパンパンだよ」
「あはは。あのボールペンは私があげたんですよ。あれしかなくて申し訳なかったんですけどね」
「僕も可愛いキャラクターがポケットに鎮座して欲しいよ」
「そのボールペンの製薬会社。私の兄の勤め先ですよ」
「じゃあ、コレ。陽菜ちゃんのお兄ちゃんのボールペンなんだね」
「えっ? なんか意味違いませんか?」
「陽菜ちゃん、とっても使いやすいよ。お兄様にお礼を伝えてねぇ〜…………あっ」
陽菜ちゃんは、僕をスルーして藤堂先生の方へ行ってしまった。
──陽菜ちゃ〜ん、僕にもポッケに鎮座する可愛いボールペンを……。
「藤堂先生、検査結果届いてましたよ」
──陽菜ちゃん、僕へはツンデレなんだね。今はツン多めなのね。でも、陽菜ちゃん誰にデレするの? みたことないなぁ。見てみたいなぁ。陽菜ちゃんの甘えたちゃんモード。いやいや、僕がデレちゃうやん。危ない危ない。
「岩崎先生、暇そうですね。ナースステーションで油売ってる暇あったら……」
「あっ、依元師長様、僕は医局に戻ってお勉強してきます。何かあったら遠慮なく呼んでください。それではご機嫌よう」
──危ない危ない。まさかの依元師長.このボールペン陽菜ちゃんのお兄さんのボールペンってわかっただけ良しとしよう。
「さぁ、今日もポケットパンパンだけど頑張ろう」
その頃、蓮君のおむつを替えていた悟は……。
「それにしても、大人なのにあんなにポケットパンパンな人、初めて見たなぁ。全部食べ物だったりして。ねぇ、蓮くん」
訳を知らない悟は、その後しばらく誤解したまま過ごしました。




