藤堂先生×陽菜×クリスマス③
贅沢な部屋に竹野内へお礼のメッセージを入れ、日常を忘れて過ごしていた。浴室もトイレも、洗面所なども2箇所ずつあり、それぞれ使ってゆっくりしようと話し俺も陽菜ちゃんもお風呂タイムだ。
全て終えたらメインルームでって話していたので、お風呂を済ませるとメインルームのソファに座り、陽菜ちゃんが来るのを待つことにした。すると、急に目の前の電気が一斉に消えたのと同時に陽菜ちゃんの悲鳴が聞こえた。
「嫌っ!」
スマホの明かりを頼りに陽菜ちゃんのところに向かう。
「陽菜ちゃん! どこにいる? 陽菜ちゃん! 入るよ!」
声をかけながら部屋に入り陽菜ちゃんを探した。すぐに明かりは復旧して部屋が明るくなったのだが。見つけた陽菜ちゃんはうずくまっていた。
「陽菜ちゃん?」
声をかけると陽菜ちゃんは、呼吸が乱れて身体が震えていた。すぐに過呼吸だと判断し陽菜ちゃんの処置に当たる。
「陽菜ちゃん、ゆっくり息をするよ。大丈夫落ち着いて」
陽菜ちゃんは、苦しそうに俯いたまま荒い呼吸を繰り返す。俺は陽菜ちゃんの手をとると、しっかり手を繋いだ。傍にいることを伝え、そして声をかけ続ける。
「陽菜ちゃん、息は吐く方に意識して、ゆっくりだよ。大丈夫落ち着いて。陽菜ちゃん、俺を見れる? 顔をあげてごらん」
俯いていた陽菜ちゃんが顔をあげ俺を見つめる。
「うん。大丈夫だからね」
繋いだ手に力を入れる。呼吸を整えるよう声をかけ続ける。
だんだん陽菜ちゃんの呼吸が整ってきた。心が落ち着くまでしばらく抱きしめていた。落ち着いてきたようなのでメインルームのソファまで連れて行こうと思い陽菜ちゃんに声をかけた。
「陽菜ちゃん、ちょっと移動しよう。抱き上げるよ」
そう言って陽菜ちゃんを抱き上げ、メインルームのソファまで連れていきソファに座らせると、ブランケットを掛けた。
陽菜ちゃんは、発作の後で心が落ち着いていないのか俺のパジャマの裾を掴んでいた。
「陽菜ちゃん、手繋ごうか? 肩がいいかな? それとも抱きしめた方が良いのかな?」
陽菜ちゃんににそう声をかけたが俯いてしまい、何かに堪えているような感じがしたのでそっと抱きしめようと思っていたら、陽菜ちゃんと目が合う。思わず。
「おいで」
と声をかけて腕を広げていたら陽菜ちゃんは俺の腕の中に迷わず飛び込んで来たからそっと抱きしめた。しばらくして陽菜ちゃんが、少しずつ話をし始めた。陽菜ちゃんの身体が震え出す。また発作を起こしかねないと判断し話は帰ってからゆっくり聞くことにして、今日はもう休ませようと思った。
「陽菜ちゃん、話は地元に帰ってから時間をとってゆっくり聞くから今日はもう休もう。このまま眠れるなら寝て良いよ。しばらくこうしてるから」
そう伝えた。俺の胸にもたれ息を整える陽菜ちゃんの背中を摩り落ち着かせる。しばらくこうしていると陽菜ちゃんの規則正しい寝息が聞こえてきた。夜中ひとりで過呼吸起こしたりうなされていたら……と心配だったので、俺が使う予定だった寝室へ連れて行き、並ぶベットのひとつへそっと寝かせて少し様子を見ることにした。
眠っていることを確認してから寝室を出る。そして今日の夜勤メンバーを思い出し電話をかけた。
「なろう大学附属病院周産期医療センターNICU坂倉です」
「藤堂です」
「あれ? 今日お休みのはずですよね。どうかされたんですか?」
疑問を持たれるのも仕方ない。陽菜ちゃんの休みの相談の時にバレてるからね。
「依元師長いる?」
「師長ですか。代わりますね」
取り次ぎを待つと、師長が電話口に出た。
「もしもし、藤堂先生。師長室に電話回したから大丈夫よ」
「お気遣いありがとうございます」
さすが師長。たぶんわかってるのかも知れない。それなら話は早い。
「陽菜ちゃんが、過呼吸発作を起こしまして。それで陽菜ちゃんのカルテを開いてもらって心療内科の受診記録を調べてもらっても良いでしょうか」
「急に停電でもありましたか?」
「はい。仰る通りです」
依元師長に軽く受診歴の内容を聞き、担当医は山下先生だと教えてくれた。戻ったら受診させた方が良いかなぁ……。とりあえず今は俺がしっかり見守っていよう。
「ありがとうございました。助かりました」
「藤堂先生、陽菜ちゃんのこと、よろしくお願いします」
「もちろんです。できたら楽しませてあげたいと思ってます」
「頑張ってくださいね。い・ろ・い・ろ! ふふっ。次の勤務が楽しみねぇ。藤堂せ・ん・せ」
「ご期待に添えるかどうか……」
「またまたぁ〜」
ダメだこの人に捕まったら、根掘り葉掘り聞かれる。誘導尋問に引っかかりそうだ。
「陽菜ちゃんの様子も気になりますし、傍に付いていてあげたいので。情報ありがとうございました」
「あら、そう? 仕方ないわね。病棟で聞きましょうかねぇ」
「あはは。それでは失礼します」
電話を終えて、陽菜ちゃんの様子を確認に行く。特に変わった様子もなく眠りについていてホッとした。




