藤堂先生×陽菜×クリスマス①
今日はクリスマス。休みを合わせてふたりで出かけようと約束した当日を迎えた。
陽菜ちゃんに行く場所は伝えてないけど、お泊まりの準備だけしてきてと伝えてある。喜んでくれると嬉しいな。実は陽菜ちゃんと約束をして直後、夢の国で働く友人にクリスマスの相談をしていた。部屋をふたつ用意してもらった。恋人同士なら一緒の部屋にするんだけど。まぁ、次は……と内心思う事はある。
待ち合わせは、陽菜ちゃんの家の近くにあるコンビニの駐車場だ。最寄駅でと言ってくれたけど、荷物を持って駅まで歩かせるのも可哀想で、家の近くまで迎えに行くことにした。
「そろそろ時間かな」
車の外で陽菜ちゃんを待っていると背後から。
「藤堂先生、おはようございます」
優しい声がして振り向くと、普段の白衣とは印象がガラッと変わり、可愛らしい雰囲気を纏った陽菜ちゃんが立っていた。
「陽菜ちゃん、おはよう。荷物後ろに積もうか」
そう言って陽菜ちゃんの荷物を受け取り、後部座席のドアを開けて荷物を積み込んだ。
「さぁ乗って」
俺は助手席のドアを開け、陽菜ちゃんをエスコートする。
「ありがとうございます」
陽菜ちゃんが乗ったのを確認して、服やバッグを挟まないように気をつける。
「閉めるよ」
「はい」
自分も運転席に乗り、シートベルトを締めると、陽菜ちゃんを確認して夢の国へ向かって発進した。
「陽菜ちゃん、目的地までは時間が掛かるから、途中で休憩挟むけど大丈夫?」
「もちろん大丈夫です。それで、どこに行くんですか?」
「途中でバレちゃうと思うけどそれまで内緒だよ。驚く陽菜ちゃんの顔が見たいからね」
「それじゃあ楽しみにしておきます。到着するまで気づかない様にしてた方が良いですか?」
「あはは……陽菜ちゃん、それはかなり無理があるよ」
陽菜ちゃんが楽しみにしていてくれる様で安心した。半分まできた頃に大きめのサービスエリアで休憩を挟むことにした。
「次のサービスエリアで休憩しようか。乗ってるだけでも疲れちゃうでしょ」
「藤堂先生とのお話楽しいですし、疲れなんてないですよ。大丈夫です。先生こそずっと運転してお疲れでしょうから休憩しましょう」
陽菜ちゃんは、いつも優しい言葉と笑顔をくれるから本当に癒される。程なくしてサービスエリアに入り車を駐車した。
「目的地まではまだあるんだけど、少しゆっくりしようか。ちょっとごめんね。先にトイレ行ってくる」
陽菜ちゃんに気を使わせない様に、俺がトイレに行くと伝えると。
「はい。私も行ってきます」
先にトイレを済ませ、陽菜ちゃんを待つ。そして、この後の予定を頭の中で組み立てる。夢の国って気づいた時の陽菜ちゃんの表情を思い浮かべると自然と頬がゆるむ。
「お待たせしちゃって、ごめんなさい」
「大丈夫。こういう所の女性用トイレって混み合うの当たり前だから気にしなくて良いよ」
「ありがとうございます」
「色々、見て回ろうか。陽菜ちゃん迷子にならないでね。手繋いでおく?」
「先生、私そんなに子供じゃないですよ? でも先生が居なくなっちゃったら困るので手繋いでおきます」
えっ、陽菜ちゃん。この子はほんとにもう。俺をどうしたいんだろう。手を差し出すと、少しはにかんだ表情をして繋いでくれた。
「藤堂先生、疲れてませんか?」
う〜ん、コレだよ。違和感! 周囲の視線。
「陽菜ちゃん、病院じゃないから先生はやめようか。周りからの視線の圧が強い」
「えっ! あっ。そうですよね。じゃあ……」
さぁ陽菜ちゃんはなんて呼んでくれるんだろう。繋いでる手に力を入れて期待してる事を伝えてみる。
「大雅さん? 大ちゃん?……後はぁ……」
悩んでる悩んでる。なんか良いなぁ。
「大ちゃん!?」
俺を見上げてそんな風に呼ばれたら何でも許してしまいそうだ。
「なぁに? 陽菜ちゃん」
照れちゃって。可愛い。あまりいじめても可哀想だから
「飲み物買ってそこに座って休憩しようか」
「あっ、私買ってきますね。せん……大ちゃんは座って待ってて」
「あっ、じゃあ……」
そう言って財布を出そうとしたら陽菜ちゃんが。
「大ちゃんは座ってて。私が行ってきます」
駆けて行く陽菜ちゃんの背中を見送ると、その間に今回の事をお願いした友人に連絡を入れておくためメッセージ画面を開く。大体の予定時間を入れて送信。すぐに了解の返信がきた。きっと俺が連れていく子の事が気になっているのだろう。
「ごめんね。遅くなっちゃった」
コーヒーとカフェオレを持って陽菜ちゃんが戻ってきた。
「ありがとう陽菜ちゃん」
「いいえ、どういたしまして。ふふっ」
「どうした? 急に笑い出して」
楽しそうなのが伝わってくる。この旅行を楽しんでくれているならそれで良い。
「病院以外で藤堂先生と一緒にいるなんて。なんかデートみたいだなぁなんて勝手に思っちゃって。でも、クリスマスを一緒に過ごすの私で良かったんですか?」
「あ〜、陽菜ちゃん。ここでは?」
「あっ、大ちゃん!」
「そうそう。俺は陽菜ちゃんと過ごしたくて誘ったんだよ。それを言うなら陽菜ちゃんだって良かったの? クリスマスを過ごすのが俺で」
今更な質問をお互いにし合っていると思うが、コレをひとつずつクリアしていって繋がっていくんだと思えば、それはそれで楽しまないと。
「嬉しいです。そう言ってもらえて。誘ってもらったのが大ちゃんだったからお受けしたんですよ」
陽菜ちゃん。それは期待しても良いって事ですか? この子は天然だからなぁ。難しい。買ってきてもらったコーヒーを飲み、ゆっくりできた頃。
「そろそろ出発しようか」
「はい。ゴミ捨ててきますね」
「行きながら捨てよう」
席を立ちゴミを捨て、迷子防止と手を繋ぎ車まで戻ってきた。再び目的地へと向かってハンドルを握る。




