NICU×非常事態
「今日は風が強いわね。出勤できない子が出るかもしれないわね」
「そうですね。今のところ連絡はないですが、想定しておかないといけないかも知れないですね」
師長は佐倉看護師とシフト表をみて頭を悩ませている。
外は暴風雨。今にも公共交通機関に影響が出そうで心配される。既に遅延が出ているという。
そんな状況を理解したように、日勤の子達はみんな早めに出勤してくれて、シフトに影響はなさそうでひと安心した。
「師長ぉ、もうびしょびしょになりました。いや〜凄いですね。今日の天気」
悟のいつもの元気な声がナースステーションに響く。
全員が揃った時、事態が悪化した。電気が一斉に暗くなったのだ。
「すぐに非常電源に切り替わるから、モニターや機器のチェック。患者の様子を第一に考えて行動して!」
師長のひとことで、全員がそれぞれの行動に移る。医局から藤堂先生、鴻上先生、岩崎研修医もすぐに病棟にきた。
「電源切り替わりました!」
「陽菜ちゃん、こっちフォロー入れる?」
藤堂先生から声がかかる。
「アンビュー代わります」
藤堂先生の必死の処置のおかげで危機に陥る事はなく、鴻上先生の方も落ち着いたようで、病棟全体が安堵の空気に包まれた。師長は、看護部長に病棟の報告をあげ事なきを得た。
「さっきは大変だった様だね。ご苦労様」
そう言って遅れて病棟に顔を出したセンター長は、両手にビニールの手提げを持っていた。
「NICU病棟、今は落ち着き患者全員安定してます」
依元看護師長が周産期医療センターの責任者でもあるセンター長に報告をしている。
「みんなご苦労だったね。これ差し入れのお菓子だからみんなで食べて」
そう言って手提げをひとつ師長に渡しながら。
「産科の方も覗いてくるよ」
と、足早に周産期医療センターの産科へと向かって行った。すると今度は依元師長が。
「休憩室に置いておくから、みんなでいただきましょう」
袋の中を覗きながら奥の休憩室に置きに行った。悟は師長の後ろをストーカーのように付いて回り。
「今日のおやつタイムが楽しみですね」
「ほんとよね〜。それまで頑張りましょう」
このふたりは相変わらずだなぁ。先程までの大変さはどこに行ったのやら。緩急が凄いと感心する。良いチームワークだと思い、その一員でいられることを嬉しく思う。
「悟。差し入れは逃げないから、仕事に戻りなさいね」
「やだなぁ、陽菜先輩。差し入れっていうのは逃げるんですよ。だってほら、食べ物は『足が早い』っていうじゃないですか?」
私が呆れていると真智先輩が。
「あんたは違う世界線なら天才だったかもね」
その一言にNICU内が笑いに包まれた。




