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医局×神隠し

「藤堂先生、この事例なんですけど……」


「鴻上先生、ナースさん達から頼まれたんですけど」


 今日も医局には岩崎先生の声が響く。


「棚橋先生に、オペ依頼の連絡入れておきます」 


「棚橋先生は、オペが詰まってたはずだよ。小児外科宛で良いんじゃないかな」


「わかりました。そうします」


 いつも通りな新生児科医局の日常にホッとする。そんな平穏な医局に突如訪れる嵐。


「岩崎先生、えみちゃんの検査結果届きましたよ。速攻で持ってきました」


「さと君ありがとう!」


「岩崎先生、それとコレ休憩室に置いてあったフィナンシェ良かったら食べてください。内緒ですよ」


「おぉ!これはあの有名なお店のフィナンシェちゃんじゃない!わぁ、ありがとう。さと君!」


「神隠しに遭う前に名前書いておいた方が良いですよ」


「そうだね。さと君。そうするよ」


 岩崎先生は、太いマジックで小さな個包装の洋菓子に名前を書いている。


「岩崎先生、ペンが太すぎて何が書いてあるのかわかりませんけど」


「これくらい書いておかないと無くなっちゃうから良いんだよ」


「そうですか? 個包装が真っ黒に塗り潰されている様にしか見えないんですけど」


 真っ黒に塗り潰されてしまった個包装の洋菓子を冷蔵庫に保管して、業務に戻る岩崎先生。


 内線で急変を知らせる連絡に、医局にいた新生児科医は全てNICUに向かう。


 出先から戻ってきた医局長が、お茶を取ろうと冷蔵庫を開けて、お茶のペットボトルと何やら黒く塗り潰されている個包装の洋菓子を見つけた。


「なんだ?この真っ黒に塗りつぶしたお菓子は」


 取り置きしたけど何らかの事情で不要になったから塗りつぶしたんだな。目立つ真ん中に置いてあるってことはご自由にどうぞの意味。


「ありがたく頂こう。疲れたんだよね今日の報告会」


 医局長は、お茶と真っ黒に塗り潰されている岩崎先生のフィナンシェでエネルギーチャージをして、医局を出た。


 数時間後、岩崎先生が大騒ぎしたことは言うまでもない。またまた岩崎先生の身に起こった差し入れの神隠しは健在だった。

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