悟×小さなプライド
──今日も食堂のおばちゃん、小鉢にプリンもサービスしてくれたなぁ。おかげで午後からも頑張れる! お腹も満足心も満足!
足取りも軽く病棟に戻る途中。
──あれ?
「どうしたの?」
「ママとにぃにが迷子なの」
小さな女の子が、お目目に涙を浮かべ泣かないで僕に状況を教えてくれた。
「そっかぁ、僕はねぇ、悟君って言うんだよ。お名前言えるかな?」
「あずちゃん、5歳です」
「あずちゃん、偉いねぇ! 教えてくれてありがとう。ママとにぃに、一緒に探してあげるね」
「さと君ありがと!」
さっきまで泣きそうな顔だったのに、ぱぁっと笑顔があふれた。
──とりあえず、現状を病棟に連絡入れておこう。僕が帰ってこなくて誘拐されたと心配されたら大変だもんね!
「これでよしっ!」
真智先輩に伝えたし、心置きなくあずちゃんに付き合ってあげよう。
「さぁ、あずちゃん。どこでママとにぃにが迷子になったか思い出せる?」
「うんとねぇ、にぃにが、痛いのやだぁって言ってた」
「うんうん。痛いの嫌だよね。さと君も嫌だよ」
「あずちゃんも、やだぁ」
「一緒だね」
手を繋いで、とりあえず総合受付で迷子の連絡を共用しようと、一階の総合案内所へ向かう。
「さと君、かんごちちゃんなの?」
「そうだよ」
「にぃにの足、治してあげて」
「にぃにの足どうしたの? 怪我しちゃった?」
「うんとねぇ、サッカーしててポキってなっちゃったんだって」
「あちゃ、骨折かなぁ。痛そうだね」
「さと君も、ポキってなったの?」
「さと君は、骨折した事ないよ。でもねぇ、骨折の人のお世話したことはあるよ」
そう言うと、小さな女の子は、パチパチと手を叩き僕を労ってくれた。
小児外科の近くを、あずちゃんと手を繋いで歩いていると。
「あっ! にぃにだぁ!」
あずちゃんはうれしそうな声をあげると、僕の手をぐっと引っ張った。僕らの先には上手に松葉杖を使って歩いている男の子とお母さんがいた。
「あずさ、どこ行ってたの?」
「さと君が、迷子のにぃにとママ探してくれた!」
あずちゃんの言葉に、えっ? 迷子はあなたでしょ? という顔のお母さん。
「迷子は、にぃにとママだもん」
お母さんはふと我に返りると、僕に向かいこう言った。
「娘がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。そして相手をしてくださり感謝いたします。ありがとうございました」
「いいえ。とんでもないです。あずちゃん、今度は迷子にならないようにね。気をつけてあげるんだよ」
乙女のプライドを傷つけないように言うと。
「うん! わかった! さと君ありがとう」
あずちゃんに手を振られながら、この場を後にして、周産期医療センターへと戻る。
──心がポカポカあたたかいなぁ。さぁ、さと君が戻りますよ。待っててくださいね。
足取りも軽く本来の持ち場に戻っていった。




