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鴻上先生×イタズラ心

「鴻上先生、お疲れなんですか? 疲れた時には甘いものですよ。糖分補給にどうぞ」


 陽菜ちゃんが、そう言って俺の手のひらに一口サイズの個包装されたチョコをコロコロと乗せてくれた。


「ありがとう。助かるよ」


「今、忙しいですか?」


「ん? 大丈夫だよ」


「それじゃあ、奥の休憩室に少し寄り道していきませんか? 差し入れにマフィンを作って来たんで良かったら食べていってください。コーヒーも淹れますね」


──この子は本当に気がつくなぁ。藤堂先生が溺愛しているのもわかる気がする。まぁ、本人はバレていないと思っているようだが、俺や師長や坂倉さんにはバレバレだ。


「良いの? 藤堂先生に怒られそうだなぁ」


 ぼそっと漏らした言葉に陽菜ちゃんは。


「そんな事で怒りませんよ。マフィンのひとつやふたつで」


──いやいや、そこじゃないんだよ陽菜ちゃん。


 満面の笑みの陽菜ちゃんをみて、藤堂先生の苦労を察した。


「どうぞ」


 陽菜ちゃんがコーヒーを淹れてくれて、手作りというマフィンが目の前に置かれた。


「いただきます」


「召し上がれ。お口に合うと良いんですけど」


「藤堂先生は、もう試食済み?」


「まだです。鴻上先生が初めてです」


──うわっ、俺……藤堂先生に怒られないよね? でも、せっかくなので美味しく頂こう。


「うまっ! 陽菜ちゃん、美味しいよ」


「ふふっ、良かった。それじゃあ、ごゆっくり」


 笑顔で休憩室を出ていく陽菜ちゃんの後ろ姿を見送ると、俺は手作りマフィンを堪能した。


──あっ、医局にいる彼に写メ送ってあげよう。


 マフィンと陽菜ちゃんのメモが写るように角度を調整して写真を撮る。


【昨日作りました。良かったら召し上がってください。   陽菜】


 目的の相手を探して写真を添付。


「美味しく頂いてます……と、よし。ポチッ」


 残りのマフィンを口に放り込むと、スマホがメッセージを知らせる音を鳴らした。


──意外と早い返信だなぁ。どれどれメッセージを開いてみるか。


『鴻上先生、何してるんですか。余ってそうならひとつ確保してきてください』


──ふふっ、仕方ないなぁ。サプライズでも仕掛けようか。陽菜ちゃんに持っていってもらおう。びっくりするだろうなぁ。


 休憩室から病棟を見渡してみると忙しそうにしている陽菜ちゃんの姿があった。


──藤堂先生、ごめん。サプライズは無理そうだ。


 藤堂先生の分をひとつこっそりもらって医局へ戻ることにした。


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