藤堂先生と陽菜の愛③ NICU×忍び寄る悪意
静かな医局に内線のコール音が響き渡る。近くにいた鴻上先生が受話器をとった。
「了解です。伝えます。はい、失礼します」
受話器を置くなり鴻上先生は俺へと視線を向けてきた。
「藤堂先生、病棟に小田先生が来て師長が対応したらしい。ちょっと注意が必要かも知れないだってよ」
「マジで勘弁してほしい。今日応援依頼で坂倉さんと一般産科に行ったら、現状説明は助産師と看護師からで、主治医である問題の女医は、新生児に対して我関せずな態度で、そのくせ『今日のお礼やお近づきの親睦も兼ねて、お食事しながらお話でも……』ですよ。マジで勘弁してほしいですよ」
「ああいうタイプの女医は自己中心的で、邪魔だと思った人間には容赦しないだろう。だから、もし危害を加えるとするならば、間違いなく恋人の陽菜ちゃんだ。気をつけてやれよ」
「はい。ありがとうございます。困った時は相談させてください」
「ああ。いつでも相談に乗る。俺も陽菜ちゃんには注意を払っておくから、気づいたことがあれば伝えるよ。任せておけ」
「助かります」
その頃ナースステーションでは、意外なところからNICUを守る話が持ち上がっていた。
「師長、今日のマドレーヌしっとり派ですね。いつものも良いですけど、こっちもなかなかいけますね」
「そうよね。私もお気に入りなのよ」
「美味しいもの食べたので、嫌なこと吹っ飛びました!」
「あら、何かあったの?」
師長は何気なく聞いただけだったが、悟の口から語られたのは、嫌な気分のするものだった。
「さっき僕、真智先輩のお使いで病棟出たんです。それで戻って来て入り口のところで、ツンツンした女医さんが僕の横を通り過ぎる時、チッて舌打ちして『邪魔、どきなさい。看護師の分際で私の前を塞ぐなんて、調子に乗るのもいいかげんにしなさい』って言うんですよ。僕、廊下は淵っこ歩いてますから。ど真ん中を偉そうに歩いてたのは、自分なのに文句言われたんですよ。思い出したらイライラしちゃうから、師長思い出させたらだめですよ」
「話してくれてありがとう。悟、私の分のマドレーヌ1個あげるわ。良い仕事したわね! 食べて良いわよ」
「師長、神ぃぃぃ〜」
マドレーヌに浮かれてる悟を休憩室に残して、師長は坂倉看護師を連れ、医局長の元へと向かった。




