藤堂先生と陽菜の愛① 応援依頼×産科医小田
今回から始まる【藤堂先生と陽菜の愛】は数話続きます。
タイトル通り二人の愛を書くに当たり、過激な嫌がらせの表現等がございますので、苦手は方や普段のほのぼのとした話がいいという方は、ここで引き返すことをおすすめ致します。
それでは【藤堂先生と陽菜の愛】をお楽しみ下さい。
今日も平穏な時間が流れていた病棟に、突如内線が鳴り響いた。
「NICU病棟。ナース喜多川です。わかりました。至急向かいます」
内線を切ると同時に、病棟が慌ただしく動き出す。
「一般産科から、新生児の応援依頼です」
瑠璃先輩の声に、依元師長がボードを確認して指示を飛ばす。
「坂倉さん、すぐに産科へ向かって。陽菜ちゃんは保育器持って行って。必要ならフォロー入ってあげて。ドクターに連絡入れます」
真智先輩は、すぐに一般病棟にある産科の分娩室に向かって行った。師長のコールでドクターも向かったと思われる。
「こっちで出来る事は進めておくから、陽菜ちゃんは保育器もって産科へ行ってちょうだい」
「わかりました。いってきます」
病棟内が一気に緊張感に包まれた。
師長は準備を進めながら、弥生先輩と話している。
「このコールまた小田先生よ」
「あの先生、向こうの産科で問題あるみたいですよ。私の同期がいるんですけど、看護師や研修医を下にみる女王様ドクターって陰で呼ばれてるみたいです。研修医からは魔女って呼ばれてるみたいですよ。それに、玉の輿狙いみたいで、口癖が『私はこんな病院の勤務医で終わるような人間じゃないの』って豪語してるらしいです」
「最悪ね。いつもなら服部先生に行ってもらうんだけど、今日休みじゃない。鴻上先生はお昼休憩中だったから、藤堂先生が今行ってくれてるんだけど、ヤバいわね」
「えっ? 何かあるんですか?」
「それは私の口からは言えないから、必要になったらその時に話すわね。何も問題が起こらないことを願うけど、三崎さんの話を聞いたら何か起こりそうな予感がするわ」
その頃、一般病棟の産科へ応援に入った藤堂先生と真智先輩は、新生児の処置に当たっていた。
「臍帯巻絡ですね。もう少し早い時点で対処出来たはずですが、説明してもらえますか」
藤堂先生が産科の主治医である、小田智恵美先生に問いかけた。
「出産までのエコーでは臍帯巻絡は見られませんでした。出生時臍帯が絡んでいて、呼吸が自力で出来ない状況だったのでNICUへ連絡させていただいたんです」
悪びれる様子もなく淡々と応えることに、疑問を感じずにはいられなかった。
「坂倉さん、保育器はどうなってる?」
絶妙なタイミングで分娩室の扉が開いた。
「藤堂先生、保育器遅くなりました。受け入れ態勢は整っています」
「陽菜ちゃん、ありがとう。呼吸は落ち着いてきたし体重もしっかりあるから、二十四時間ウチで呼吸状態など経過観察した後に産科へ戻そう」
「保育器に新生児を寝かせて、酸素機材などをセットして移動します」
私の指導看護師だった真智先輩は、憧れであり尊敬する先輩だ。その無駄のない動きに見惚れる。
そんな事を思っていたとき、この産婦さんの主治医と思われる先生が声をかけてきた。
「今日は急な応援依頼ありがとうございました。私、産科医の小田智恵美です」
そう言って藤堂先生に擦り寄ってきた。
「経過観察をして異常がなければ二十四時間後、産科へ転科という事で。それでは失礼します」
「あの、後程お話させていただけないでしょうか」
「どのような事でしょうか?」
──ん? なんか怪しくない? うわっ、大ちゃん塩対応。いや、馴れ馴れしくしてもらっても困るけど……。
「今日のお礼やお近づきの親睦も兼ねて、お食事しながらお話でも……」
すると藤堂先生は、小田先生の言い終わりにかぶるくらいの早さで返した。
「私は仕事をしたまでですので、お礼は要りませんし、それに親睦も必要ないのでは? 失礼します」
「私達もNICUに戻ろうか?」
真智先輩に声をかけられ、二人で保育器を押して病棟へと戻る。
これからこの小田先生がとんでもない事を巻き起こすなんて、この時の私には想像もつかなかった。




