悟×復帰
「おっはよ〜ございま〜すぅ」
1週間ぶりに出勤してきた病棟に一歩足を進め挨拶しながら入っていく。
「悟、どう? 調子は」
弥生先輩が声をかける。
「ひたすら安静にしてましたよ。ちょっとだけ大きいくしゃみに堪えられなかった事がありましたけど」
──いやいや、大きいくしゃみに堪えれなかったってなに?
悟のくしゃみって、いつもわざとかってくらい大きくしてるのは自分じゃないかと思うが、ここは大人の判断で言わずに飲みこむ。
「陽菜先輩! ただいまです。お休みありがとうございました」
「おかえり。痛みや違和感はない?」
「陽菜先輩、神ぃぃ〜」
「大丈夫そうだね」
そんな会話をしていると、依元師長がナースステーションへ入ってきた。と、同時に悟が私の後ろに隠れた。
──ってか、何してるの?
振り返ると、私の後ろで鼻を隠して、依元看護師長に見つからないように小さくなっている悟がいた。
──また肘食らいたくないもんね。トラウマになりませんように。
「笹井君、耳鼻咽喉科へ連絡しておいたから、これから行っておいで。本当にごめんなさいね」
依元看護師長が、悟に耳鼻科の受診の声かけをした。私の後ろで鼻を隠していた悟だったけど、背後からチラッとこちらをみて安全確認をしてから、私の横へ並んだ。
引き継ぎを終えて、夜勤帯の看護師が帰って行く頃、悟が耳鼻咽喉科へ受診に出かけて行った。
「耳鼻科へ行ってきた方が良いかしら?」
依元看護師長が、悟の出かけて行った方を見つめてつぶやいた。
「大丈夫じゃないですか?」
真智先輩がそれに答える。
今日からまた賑やかな病棟になった事は言うまでもない。
「由貴ちゃ〜ん、お待たせ。悟君がオムツを替えてあげまちゅからねぇ。うれちぃでちゅねぇ〜。オムツ替えたらミルク飲みまちょねぇぇぇ〜」
昨日まで静かだった病棟が一気に賑やかな病棟にシフトチェンジしていったのだった。




