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悟×災難

 朝の申し送りが終わり、それぞれの持ち場で仕事が進む。


「祐希くん、オムツ替えましょうねぇ。悟君が替えてあげますよぉ〜」


 話しかけながらオムツ替えを進めていくと陽菜先輩に声をかけられた。


「悟、カンファレンス行くから美海ちゃんのオムツもお願いして良い?」


「良いですよ。ここ終わったら美海ちゃんのオムツも交換しておきますね」


「ありがとう助かる。お願いね〜。カンファレンス室いってきます」


「陽菜先輩、手ぶらじゃないですか。看護記録かアセスメント記録用紙持って行かないとダメですよ」


 もう、陽菜先輩は僕が教えてあげないとお忘れ物しちゃうんだから。


「もう準備してあるんだけど、教えてくれてありがとう」


「ほへっ!? いっ……いってらっしゃい?」


「何故、疑問系なの?」


「なんとなく?」


 祐希くんのオムツ替え終わったから、次は美海ちゃんのオムツを替えましょうかねぇ。


「お待たせ〜美海ちゃん、オムツ替えましょうねぇ。今日は悟君が替えてあげますよぉ〜。うれちぃでちゅねぇ〜」


──美海ちゃんのオムツを替え終わったら、看護記録を溜め込むと後から大変だし、今のうちに書いてしまおう! 僕って敏腕ナースまっしぐらだなぁ。


「さぁ、看護記録を書こう」


 そこへ依元看護師長がナースステーションへ戻ってきて「師長会疲れたぁ」と、大きな独り言を吐いた。


──誰もいないと思っているのかな? 僕ここで看護記録書いてるんですけど……。


「あ〜疲れた。肩ゴリゴリだよ」


 そう言うやいなや、思いっきり肩をグリグリ回し始めた。その時凄い衝撃が走った。


 ゴン!


「いたぁ〜!」


 依元師長が肩をグルグル回したとき、悟の鼻に肘が直撃した。


「あら、笹井君! あらら、鼻血出てるわよ」 


「師長。師長の肘が思いっきり僕の鼻に激突してきたんですよぉ。痛いです」


 そこに偶然やってきた岩崎先生。


「さとくん、鼻血祭りなの? 出血大サービスしてるよ」


 相変わらずな返答の岩崎先生に、緊急性を感じた弥生先輩が、鴻上先生を呼んでくれた。すると、僕を診るなり、すぐに耳鼻咽喉科で検査してもらった方が良いということになり、依元師長は、すぐに内線を入れ、耳鼻咽喉科診察室に連れていってくれた。


「笹井君、ごめんね。診察終わったら早退しようか。診察結果次第でシフトも調整するからね」


「あいがとう、ごじゃいまふ」


──ガーゼを鼻に当てているため、なかなかはっきり言葉が発音できていないような……。


 耳鼻科医に診察してもらい、レントゲンを確認すると、ヒビが入っていた。


「結構な力で、喰らいましたね」


 耳鼻科医の水野医師に言われた。


「そうなんですよぉ〜。師長の肘は人間のものとは思えない程の威力がありました。あっ、僕の鼻なくなっちゃいますか?」


「いやいや、笹井君、鼻はなくならないよ。あはは」


──いやいやいやいや、水野先生笑い事じゃないですよ。水野先生も一度お見舞いされたらわかりますよ。


「ちょっと熱を持って腫れてきましたね。炎症を抑える薬を出しておきますね。しばらく飲んで来週また受診してください」


「ありがとうございました。僕の鼻を助けてくださって。水野先生は神です」


 続けて、師長も。


「水野先生、お世話になりました。急に診察を依頼して申し訳ありませんでした。助かりました」


 鼻血も無事に止まり、ふたりで病棟に戻る。

 

「笹井くん、本当にごめんね。今日はもう帰ってお家で安静にしてて。来週のシフトは調整するからお休みで良いわよ。次回の診察でまた相談しましょう」


「わかりました。それではお先に失礼します。師長、看護記録に書いたんですけど陽菜先輩に美海ちゃんうんちしてました。って報告しておいてください」


──危なかった。伝え忘れるところだったよ。ホウレンソウしっかりしろって教わったもんね。人混みを避けながら安全確認しながら帰ろう。


「右よし! 左よし! 肘なし!」


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