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NICU×待ち伏せ③

 鴻上先生が前方を注視しているのがわかる。


「まだ居るね。あの親子。いったい目的はなんだろうね。続くようならセンター長に相談しよう」


「そうですね。目的がわからないから怖いんですよね。せめてここに居る理由がわかれば違うのかも知れないですけど、わざわざ聞くこともないですもんね」


「俺が、こっち側に居るから陽菜ちゃんは遠い方にいてね」


「ありがとうございます」


 すると、若干空気の読めない悟が。


「鴻上先生、僕はどっち側にいましょうか」


「さとるんは、別にどこにいても良いんじゃないかな」


 ふふっ、鴻上先生の悟の扱い方に思わず笑みが溢れる。


「陽菜先輩、何を笑ってるんですか? 酷くないですか!?」


 その悟の言葉にあの親子が反応した。


「今、ひなって呼んだよね。やっぱりあの娘なんじゃない?」


 そんな声が聞こえた。それは私だけでなく鴻上先生も聞こえていたようで。私だけに聞こえるようにこう告げられた。


「陽菜ちゃん、このまま病棟に行くか、戻って裏の職員通路から病棟に戻るか、どうしようか」


「鴻上先生居るし、このまま病棟戻ります」


「わかった。一緒に戻るから」


「ありがとうございます」


 呑気な悟は、お腹いっぱいの満足感で足取り軽く病棟へ向かっていく。その後ろをふたりで進んでいると。


「ちょっと待ってもらえない?」


 そう言って私の手首を掴まれた。


「きゃっ!」


 思わずびっくりして悲鳴をあげてしまった。すぐに気づいた鴻上先生が。


「その手を離してもらえませんか」


 そう言って、わたしの手首を掴んでいる手を離すよう声をかけてくれた。手を離してもらった瞬間、サッと移動して鴻上先生は私を背中に隠すように間に入り、相手と話をしてくれた。


「あっ、ごめんね。でも、どんな娘か会ってみたくて」


「どういう事ですか? ウチのナースに何か用事でも?」


 そうすると、母親らしき人が話を始めた。


「息子が久しぶりに家に戻ってきた時に、部屋で電話していてその相手がどうやら恋人みたいで、ひなって呼んでいて、また明日って言ってたもので、病院関係者だと思って。どんな娘かと思い見に来たの。悪気はないのよ」  


──息子? 誰? 鴻上先生もそう思ったのか。


「息子さんって、どなたですか?」


「あら、ごめんなさい。言ってなかったかしら。こちらに勤務してる藤堂大雅です」


──えぇ〜! 朝から話題の人って藤堂先生のご家族ってことぉぉ〜!


 慌てた様子の鴻上先生が。


「さとっ……笹井君、藤堂先生呼んできて!」


 悟は、かる〜い返事をして病棟へ戻っていった。しばらくすると藤堂先生となぜか依元師長もこちらへ向かって歩いてきた。


「ふたりして何してんの? こんなとこで!」


 こちらに来るなり開口一番、こう言って怒っている。


「大雅が、彼女いるっぽいのにコソコソしてるから、どんな娘なのか気になるじゃない。紹介してくれそうもないし、だったら突撃するしかないじゃない」


 事情を察した、依元看護師長が。


「ここでは目立ちますし、カンファレンス室空いてますから、そちらへどうぞ」


 そう言って藤堂先生のお母さん達を、カンファレンス室へと案内する。師長と藤堂先生はご家族とカンファレンス室へ向かい、私は鴻上先生と病棟へと戻った。


「陽菜ちゃん、手首大丈夫? 掴まれてたよね。ちょっと診せて」


 心配性な鴻上先生が手首を診てくれた。


「赤くなってるね。一部内出血起こしかけてる。冷やしておこうか」


 そう言って匂いのない冷湿布を貼り、包帯を巻いてくれた。


「鴻上先生、少し大袈裟過ぎないですか?」


「はじめが肝心だよ」


 それを見ていた真智先輩が悪ノリで参加する。


「鴻上先生、三角巾で吊りますか?」


──いやいや真智先輩、骨折してませんから!


「半日くらい吊るしておこうか?」


 そう言いながらクスクス笑い出した。病棟の雰囲気も張り詰めていたものがなくなって良かったと思う。しかし、私を見に来たって言うのが素直に喜べないような……。朝から迷惑をかけてしまったことに申し訳なさが募ってしまう。


──無事? 解決したのだろうか?


 カンファレンス室で、どんな話し合いが行われているのか若干怖い感じもするが、今はそれを考えないように、午後からの仕事に戻ろう。


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― 新着の感想 ―
うわぁ! 困った家族〜(>_<; いくらなんでも、突撃とか、初めて会った相手の腕を突然掴むとか、やめて欲しいですね。
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