NICU×待ち伏せ②
みんなに見送られながら、お昼休憩に向かった。
──妙ちゃんとか祥子ちゃん居るかなぁ。
楽しい事を考えながらNICUを出た。私の名札を見ている視線に耐えながら例の二人の横を通り過ぎた。
職員食堂に着いて周りを見渡す。妙ちゃんも祥子ちゃんもいなかった。休憩室からもらってきた差し入れのフィナンシェとカフェオレをテーブルに置き、私物のスマホを取り出して心配しているであろう藤堂先生にラインを入れる。
「陽菜せんぱ〜い。ここ座っても良いですか?」
悟が、テンション高くやってきた。
「どうぞ」
トレイに、今日のお勧めメニューとご飯が大盛りで乗っていた。おまけの小鉢もしっかりと乗っている。
──若いなぁ〜。
そしてポケットから休憩室に置いてあったフィナンシェが出てきた。
──それも食べるのか!?
「陽菜先輩、大丈夫でした? 扉付近の親子」
「名札ジッと見られたかも。弥生先輩もそう言ってたよね」
「僕は見向きもされませんでした。だから僕がジッと見てあげました」
──いやいや、悟。なんか違わない!?
「大丈夫だったの? あんまり刺激したらだめだよ。何しようとしているかわからないんだから」
「陽菜先輩! 優しいすぎます。ハグしても良いですか?」
悟のその質問に返事をするかのように。
「藤堂に睨まれて仕事押し付けられる覚悟があるのなら、陽菜ちゃんにハグの許可をもらうんだね」
声のした方を見ると鴻上先生が、トレイを持って立っていた。
「鴻上先生、良かったらどうぞ」
そう言ってお誘いしてみると。
「それじゃあお言葉に甘えて陽菜ちゃんのお隣に座ろうかな」
私の横にトレイを置き座った鴻上先生。
「鴻上先生、僕の隣も空いてますよ」
「岩崎先生来たら座らせてあげたらどう? カルテ整理押し付けてあるからいつ来るかわからんけどね」
笑いながらそう言った。
「陽菜ちゃん、師長からの伝言。ひとりで戻って来ないで先生と一緒に戻ってきたら良いからね。だって」
「そういうわけで、ゆっくりしようね。陽菜ちゃん」
「えっ、鴻上先生! 僕は? 僕もですよね」
「さとるんは、早く病棟戻らないと、チビちゃんたちが待ってるよ」
「鴻上先生、僕そんなにあの子たちから人気なんですか?」
このふたりの会話に若干ドン引きしつつ、生温かい目で見守る。
「陽菜ちゃん、ご飯は?」
「食べましたよ」
「何を?」
「休憩室から持ってきた差し入れを」
「あっ、陽菜先輩も持ってきたんですね。師長のお気に入りのフィナンシェちゃん」
「陽菜ちゃん、それご飯って言わないよ」
悟は一人盛り上がり、鴻上先生からは注意を受けた。
「ごめんなさい。なんか朝からの違和感に気持ちが落ち着かなくて。夜からはちゃんと食べるのでお昼は見逃してください」
「約束だよ。藤堂先生には報告させてもらうからね」
──えぇ! なんで! そこは秘密にしておいてくださいよ〜。
「内緒っていう選択肢は……」
「ない。ちゃんと告知しないと」
──先生、病名じゃないんですから、そこは……いや、無理そうなので諦めよう。
「はい」
なんだかんだ言いながらも、心配してくれているので素直にきいておこう。
その後、3人で病棟へと戻った。
この時はまだ、朝からの違和感が明らかになるなんて想像だにしていなかった。




