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NICU×待ち伏せ①

 いつも通り更衣室から病棟へ向かっていると違和感を感じた。何がと言われると説明が難しいが、何やら見られてる? 視線を感じるかな? ってくらいの違和感だった。


「おはようございます」


「陽菜ちゃん、おはよう。ん? どうしたの。入り口に気になることでもあるの?」


 瑠璃先輩が声をかけてくれたので、更衣室からここまでのことを話した。


「えっ! ヤバくない? 師長にも話して病棟スタッフ共通の注意事項にしておこうよ。そういう勘って意外と当たるものだよ」


 そう言って瑠璃先輩は、申し送り前に早速行動に移してくれた。


 申し送り時に、この話もされ全員で気をつけていこうということになった。警備員の巡回強化も連絡済みらしい。何かがあってからでは遅いため行動は素早い。


 ここは小さな小さな命を預かっている病棟。念には念を入れるに越したことはない。


 これといって変わったこともなく過ぎていく。


 事が動いたのは先に休憩に入っていたスタッフがNICUに戻ってきた時だった。


「みんな集合して!」


 瑠璃先輩がみんなに声をかけた。


「今さぁ、扉の前で30前後くらいの女の人と、そのお母さん? の2人がいて、ウチらの名札確認してる。誰か探してるっぽいよ」


「えぇっ。怖くないですか? 誰を探してるんでしょう」


「瑠璃ちゃんが目の前を通っても声をかけられなかったって事は、瑠璃ちゃんじゃなかったって事だよね?」


「弥生先輩、確かにそうですよね。探してる人だったら声かけますよね!?」


「警備室連絡入れますか?」


「何が目的なのかだよね。事件性に発展しそうなら速攻で連絡だけど……」


 依元師長が、この場をまとめる。


「身の危険を感じたらすぐに自身の身の安全を優先すること! そして連絡を忘れない事!」


 ピリピリのした空気が伝わる。


「陽菜ちゃん、次休憩よね。気をつけて行っておいで。院内携帯をポケットに入れたまま行きなさい」


「はい。休憩いただきます」


 みんなに声をかけて奥から荷物を持つと、NICUの扉に向かって歩く。瑠璃先輩が言っていたように2人の女性がこちらを気にしているような感じがした。勇気を出して扉を開けて廊下に出ると名札を見られたような気がした。小さな声でヒソヒソ話しているが聞こえてくる。


「もしかしてあの子じゃないの? 陽菜って書いてあったよ。苗字は知らないからなんとも言えないけど」


 えっ? 私なの!? ってか誰? 逃げよう。足早にこの場を通り過ぎようかとも考えたが、着いて来られても嫌だなぁと思い、ダッシュでNICU病棟の扉を開けて戻った。


「陽菜ちゃん、どうしたの?」


 瑠璃先輩が声を掛けてきた。医局から鴻上先生と藤堂先生、岩崎先生がナースステーションに来ていた。


「ん? 陽菜ちゃん。どした?」


 今、扉の向こうであったことを話した。


「じゃあ、目的は陽菜ちゃんって事?」


 瑠璃先輩が、さっと横に来て背中を擦るってくれる。


「陽菜、大丈夫?」


 藤堂先生も、心配そうに声をかけてくれた。


「もう、休憩行かなくていいからここに居ようかな」


「陽菜ちゃん、ご飯はきちんと食べなくちゃダメだよ」


 弥生先輩に言われて、どうしようと思っていると鴻上先生が。


「俺も今からお昼休憩にするよ。陽菜ちゃん一緒にご飯行こうか」


「でも、先生お忙しいので申し訳ないです。大丈夫ですよ。何かあったら院内携帯持ってるんで連絡しますから」


 そう言って病棟を出ようとした時、藤堂先生が。


「陽菜、病院の中だからと油断しないで。本当に気をつけてよ。一緒にお昼行けなくてごめんね。困ったことがあればすぐに俺に連絡して」


 とっても過保護な先生の言葉に心があたたかくなる。


「うん。そうする。ライン入れておくね」


「わかった。いってらっしゃい。しっかり食べてくるんだよ」


「……うん。いってきます」


「その間は気になるけど。ほら、行かないと時間なくなっちゃうよ」


 その言葉を受け、病棟の扉に向かって一歩を踏み出した。


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