藤堂先生×本気の証
陽菜のバレンタインのお礼は実はチョコレートをもらってももらわなくてもコレを渡すと決めていた。仕事柄、指輪は嵌めていられない。ピアスも華美なものは着けられない。それに、陽菜の耳にピアスホールがない。という事はどちらにしてもピアスはつけられない。
先日、陽菜とデートでショッピングセンターで買い物をした時に、たまたま横を通ったジュエリーショップのショーケースに並んだ数々の宝石たちをチラッ見て、可愛い!って言った声を聞き逃さなかった俺。店名と陽菜の見ていた宝石のシリーズを覚えた。
陽菜が仕事で俺が休みの日を狙って、このジュエリーショップに出かけた。そして陽菜が見ていたシリーズになっている宝石の中から、普段身につけていられるネックレスを選んで購入しプレゼント用にラッピングしてもらった。ホワイトデーのお礼は買った。後はコレを渡す場所。鴻上先生に相談してみよう。
そしてホワイトデー当日は、俺は当直明け陽菜は日勤だった。一度帰って仮眠をとり陽菜の終わるのを待つ。日勤の終わる時間に職員駐車場で陽菜の出て来るのを待った。
陽菜が職員通用口から出て来るのが見えたから車から降りて陽菜を待つ。俺を見つけた陽菜が走って来るのがわかった。
「大ちゃん、遅くなってごめんね」
陽菜が俺の目の前に走ってきた。バレンタインのお礼のプレゼントを渡したいのを名目に食事に出かける事にしていた。そのお店は鴻上先生のお知り合いの方がオーナーを務めていらっしゃる人気のお店らしく予約を入れるのが難しいと仰っていたが、鴻上先生にお口添えをしていただき無事予約を入れられた。
「大丈夫だよ。そんなに走ったら危ないよ」
まっすぐ俺に向かって駆けてくる陽菜はとても愛らしかった。陽菜を車の助手席に乗せて目的地へ向かった。
「陽菜、仕事お疲れ様」
「大ちゃんは、今日何してたの?」
えっ、何?今日の俺の様子が気になっちゃうの? きっと何気なく聞いたのかも知れないけど、小悪魔だなぁ……。
「鴻上先生から押し付けられた論文書いてたよ」
「ふふっ、私にそんな事言っちゃって良かったんですか?」
「えっ!? 何、鴻上先生に言わないでよ」
陽菜は、そんな事いう子ではないが、軽く乗っかっておく。
「言わないよぉ。大ちゃんが怒られたら可哀想だから……ねっ?」
いやいや、それくらいで怒られたられたりはしないだろうけど
「ありがとう」
「ふふっ、どういたしまして」
こんな何気ない会話も楽しく思う。病棟では気を張っていることの方が多いから、陽菜との何気ない会話が癒される。大切な時間だったりする。鴻上先生のお口添えで素敵なレストランで夕食を堪能して、食後のコーヒーをいただいている。窓からの夜景も手伝っているように陽菜の笑顔がキラキラと輝いている。俺は本来の目的を実行する。
「陽菜、これ受け取って」
そう言って、用意しておいたネックレスのプレゼントを陽菜の前に差し出す。びっくりしたのか
「えっ、私に?」
「うん、陽菜に」
なんで驚くの!? 俺が陽菜以外の人にあげたら問題じゃない!?
「開けてもいい?」
「もちろん」
陽菜の反応を期待しながら待つ。包みを丁寧に剥がしていく。そしてケースを開くと陽菜は
「大ちゃん!これ」
そう言って、瞳に涙が浮かんでいく。嬉しそうに見つめている姿に、抱きしめてあげたいという気持ちが湧き上がる。
「陽菜、つけてあげる」
そう言って、席を立ち陽菜の後ろに行きネックレスを取り出して陽菜の首につけてあげる。陽菜は、俺がつけやすいように髪をまとめてくれた。
「はい。できたよ」
席に戻り陽菜をみる。
「大ちゃん、ありがとう。大切にするね」
「似合ってるよ。陽菜」
プレゼントを渡し落ち着いた頃に、お店の責任者の男性が席にきた。
「藤堂様、本日は当店をご利用頂きましてありがとうございます。鴻上より伺っております。大切な日に当店を選んでいただいた事、嬉しく思っております。当店からの感謝の気持ちでございます」
そう言ってこのお店の人気商品でもあるお菓子の詰め合わせを入れた手提げ袋を俺に手渡してくれた。
「ありがとうございます。これからの記念日や大切な日はこちらを利用させていただきたいと思っていますので、またよろしくお願いします」
素直にそう返事をしていた。
「私、オーナーをしております北大路真斗と申します」
そう言って名刺を渡してくれた。
「必要な時は、こちらに連絡をください」
「助かります。ありがとうございます」
鴻上先生は、何と言って予約を入れてくれたんだろう。大切な日と言っていた北大路さん。明日の出勤が思いやられる。陽菜も嬉しいのか笑顔でお礼を伝えていた。
ふたりで少し余韻を楽しみ、北大路さんにお礼を伝えお店を後にした。
「ごちそうさまでした」
陽菜はそう言って俺の横に並ぶ。手を繋ぎ駐車場まで歩いていく。特別なことは何もできなかったが、喜んでもらえたホワイトデーになったようだった。




