永遠×インフルエンザ
「ひなぁ〜、にぃちゃんのピンチだぞ」
兄からの連絡で起こされた。
「どうしたの?」
「熱ある」
──いい大人が、熱だけで大病みたいに連絡しないで欲しいんだけど……。
「検温したの?」
「陽菜。一人暮らしの家に看護師は居ないだろ。検温しに来ないよ」
「馬鹿なの? 検温くらい自分でできるでしょ」
「お前、病人にそんな冷たい言葉かけする看護師がいるか? ナイチンゲール様が泣くぞ」
──そんなことが言えるくらいなら大丈夫だな。放置していいかな?
「今日の勤務は?」
──うわっ、そこ聞くのか!?
「休みだけど……」
「持つべきものは頼れる妹だよな」
──だよね。そう来るよね。はいはい。
「何か食べるものや飲み物買って行ってあげる。だから病院行ってきなよ!」
「わかった。鍵は持ってるよな?」
「うん。合鍵もらってるから」
仕方なく支度をして家を出る。
兄の家の最寄駅に着くと、スーパーへ寄り必要なものを買い込んだ。
──数日分の食事の支度もしておいてあげよう。
兄はまだ病院から帰ってなさそうだったから、合鍵を取り出して家に入った。
「お邪魔します。うわっ、散らかってる。まずは換気しよう」
窓を開けて空気の入れ替えをする。そして買ってきたものを冷蔵庫に入れると、散らかったものを片付けながら洗濯機を回した。
──私は何してるんだ? お母さんじゃないんだからもう。しっかりしてよねぇ。
そんな事を思っていると玄関が開く音がした。
「陽菜、ただいま」
「おかえり。どうだったの?」
「インフルエンザだって。にぃちゃん高熱で死んじゃう」
速攻で鞄から新しいマスクを取り出してマスクをする。
「陽菜、にぃちゃんをバイ菌扱いしたら悲しいぞ」
「私、NICUナースなんだけど」
「知ってるけど……」
速攻で数日分の料理を作り、タッパーに入れて冷蔵庫に入れる。おかゆは、レトルトだからわかりやすいところに置いておこう。
「お兄ちゃん、そろそろ帰るね。冷蔵庫におかず準備してあるから、体調良くなったら食べて。おかゆはレトルト買ってあるから。ちゃんと食べてから薬飲むんだよ」
「在宅看護は?」
「何かあったら連絡して。すぐ来るから。お大事にぃ〜。大丈夫、鍵はしておくからそのまま寝てて」
「ひぃなぁ〜」
換気のために開けた窓を閉め、しっかり戸締りをして帰る。
──頑張りすぎなんだよ……お兄ちゃん。たまにはしっかり休んでゆっくりしてね。
テーブルの上の置き手紙を見つけたらお兄ちゃんが、どんな反応をするのか見てみたいような気はするけど、置き手紙の意味がなくなってしまうので我慢しよう。
永遠にぃちゃん、
早く元気になって快気祝いしようね♡
陽菜
このときはまだ、置き手紙をしたことを後悔するなどとは、陽菜は思ってもいなかった。




