第七十一話 アルマとサヤ
アルマは過去をワタル達に語ったのだった。
「転生者や獣人なんて言葉を聞くとな……腹の底から怒りが湧き上がってくるねん。」
その目には、過去の苦しみと怒りが色濃く宿っていた。彼女の言葉は、冷徹でありながらも、どこか深い感情を感じさせるものだった。
「そんなあんたらをこの手で始末したくてたまらんのや…せやけど束になられたら敵わん…馴れ合いもないからな。」とその場から立ち去る。
「ねぇ!待って!ミヤビさんって…」とスノーが引き止めようとするのをハウンが止め、彼女の目を見つめ首を静かにふる。
スノーは触れるべきでないとハウンが暗に言っているのを感じ取り、大切な人のことが気になったがそれ以上は何も言えなかった。
「うっ…何だか頭が…」とサヤが頭を抱え始めた。
「サヤ、どうしたの?大丈夫?」とワタルが心配そうに声をかけた。
「うん……ちょっと頭が痛くて……」とサヤは辛そうな表情を浮かべながら言った。
ハウンが急いで回復魔法を唱えたものの、頭痛はなかなか治らない様子だった。
「サヤ、少し休んだ方がいい。」ワタルが心配そうに近づき、彼女の背中を優しくさすった。
サヤは答えられない。目を閉じて、ただ頭痛を堪え続けていた。突然、彼女の耳に不明な声が聞こえてきた。それは、どこか遠くから、ぼんやりと響く声だった。すぐにその内容がはっきりと浮かんできた。
サヤが突然立ち上がり、「行かなきゃ…!」と叫んだ瞬間、スノーは驚きと共にその場に立ち尽くしてしまった。普段は控えめで、どこか冷めた態度を取るサヤが、こんな風に強い感情を見せることは珍しい。スノーはすぐに駆け寄り、サヤを支えようとしたが、サヤの言葉が彼女を止めた。
「大丈夫。スノー…お願い。待ってて。」とサヤは、まるでスノーを気遣うように優しく抱きしめてくれた。その瞬間、スノーの心は大きく揺れ動いた。
スノーは、サヤの腕の温かさに思わず息を呑んだ。普段、自分に対して鬱陶しそうな態度を取るサヤが、自分を抱きしめるなんて――信じられない気持ちとともに、不思議な安心感が胸に広がっていくのを感じた。
「行かなきゃ…!」とサヤは再び言うと、瞬間的に立ち上がり、アルマが消えた方向へと向かって走り出した。その足音は森の静寂の中で軽やかに響き、振り返ることなく駆け抜けていった。





