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第六十九話 アルマのあの日

「はぁ…なんでウチ、あんなん言うてもうたんやろ。」心の中で自己嫌悪が渦巻く。怒りに任せて感情をぶつけてしまったが、あの女性が悪いわけではない。むしろ、真摯に向き合おうとしてくれていた。


彼女は目を閉じ、あの魔法使いの女性の瞳を思い出した。そこには非難や敵意ではなく、ただ純粋な理解と心配が込められていた。


「ほんま、なんでこうウチは不器用なんや…」アルマは肩を落とし、再び空を見上げた。


その時、「なーにしてんの?」と背後から軽い声が聞こえた。アルマは振り返ると、紫の髪の女が立っていた。軽い笑みを浮かべながら、こちらをじっと見ている。その女性は派手な装いで、紫色の髪が風に揺れている。


「あんたは…!」とアルマは声を振るわせる。


「そう!リンカだよ!やっと会えた!」大げさに両手を広げてアルマに歩み寄った。その仕草は陽気で軽やかだったが、その目には鋭い光が宿っている。


アルマは後ずさりし、冷や汗を滲ませながらリンカを睨んだ。「寄るな…!来るな!」


しかし、リンカは気にする素振りもなく、足を止めずに歩み寄る。「えー、そんな冷たいこと言わないでよ。やっと会えたって言ってるのにさー。」口元は笑っているが、その目には冷たい執着心が見え隠れしていた。


「何が目的や…?」アルマは冷静さを保とうと努めながら問うた。


リンカはクスリと笑い、「アルマちゃんの“消えるマジック”に興味があってさ~」と軽い口調で言った。「あれ、すっごい便利じゃん?ウチも使えるようになりたいなぁと思って、ちょっと研究材料として協力してくれない?」


「協力…?あんたにそんなこと教える筋合いなんかないわ!」アルマは警戒を強めつつ、身構えた。


「そんなこと言わないで~。」リンカの声色が急に低くなり、その目が鋭く光った。「教えてくれないと、いろいろ面倒なことになるよ?」


「面倒なこと…?」アルマは眉をひそめる。


アルマがその言葉に反応する前に、リンカの手が素早く動いた。紫色に光る円形のチャクラムが手元から弧を描くように飛び出し、アルマのすぐ近くをかすめた。


「わっ!」アルマは咄嗟に後退したが、その動きは完全に間に合わなかった。チャクラムは彼女の頬をかすめ、鋭い痛みが走る。


「ぐっ…!」アルマは頬に手を当てた。血が滲み出しており、鋭い一撃が確かに彼女を捉えた証拠だった。


リンカは軽くチャクラムを手元に戻しながら、肩をすくめて微笑む。「あれ、魔法で消えちゃえば避けられたのに」と、アルマをあざ笑うように言った。


「せっかくだからもうちょっと切れ味を確かめたいんだよね…向こうにいる人とか!」


アルマは痛む頬を押さえながら、リンカの挑発的な言葉に震えた。しかし、冷静を保たなければならないと自分に言い聞かせる。「あんた、何を考えてるんや…?」と、力を込めて問いかけた。


リンカは軽く肩をすくめて、さらに一歩近づく。「別に大したことじゃないよ。ただ、アンタがその消える魔法を使えるなら、私も欲しくてさ。もし教えてくれないなら、どうしても手段を選ばないといけないからね~。」その目は、冷たく、計算された意図を隠していなかった。


アルマは息を呑む。自分が逃げることを選べば、リンカがその後どう出るかは分からない。しかし、もし協力するならば、少なくとも一時的にでも無駄な争いを避けられるかもしれない。


「わかった…協力する。」アルマは歯を食いしばりながら答えた。


リンカはその答えを待っていたかのように、満足げな笑みを浮かべた。「そうこなくっちゃ!」と、声を弾ませながら手をパチンと鳴らす。「それでこそアルマちゃんだよ。」


アルマは一瞬、胸の中で嫌悪感がこみ上げるのを感じたが、ここで無駄に敵対しても、状況は悪化するばかりだと悟った。リンカがどれだけ計算高く、冷徹であるかはよく分かっていたが、この時点では彼女と対立しても得るものはない。


彼女は目を閉じ、あの魔法使いの女性の瞳を思い出した。そこには非難や敵意ではなく、ただ純粋な理解と心配が込められていた。


「ほんま、なんでこうウチは不器用なんや…」アルマは肩を落とし、再び空を見上げた。


その時、「なーにしてんの?」と背後から軽い声が聞こえた。アルマは振り返ると、紫の髪の女が立っていた。軽い笑みを浮かべながら、こちらをじっと見ている。その女性は派手な装いで、紫色の髪が風に揺れている。


「あんたは…!」とアルマは声を振るわせる。


「そう!リンカだよ!やっと会えた!」大げさに両手を広げてアルマに歩み寄った。その仕草は陽気で軽やかだったが、その目には鋭い光が宿っている。


アルマは後ずさりし、冷や汗を滲ませながらリンカを睨んだ。「寄るな…!来るな!」


しかし、リンカは気にする素振りもなく、足を止めずに歩み寄る。「えー、そんな冷たいこと言わないでよ。やっと会えたって言ってるのにさー。」口元は笑っているが、その目には冷たい執着心が見え隠れしていた。


「何が目的や…?」アルマは冷静さを保とうと努めながら問うた。


リンカはクスリと笑い、「アルマちゃんの“消えるマジック”に興味があってさ~」と軽い口調で言った。「あれ、すっごい便利じゃん?ウチも使えるようになりたいなぁと思って、ちょっと研究材料として協力してくれない?」


「協力…?あんたにそんなこと教える筋合いなんかないわ!」アルマは警戒を強めつつ、身構えた。


「そんなこと言わないで~。」リンカの声色が急に低くなり、その目が鋭く光った。「教えてくれないと、いろいろ面倒なことになるよ?」


「面倒なこと…?」アルマは眉をひそめる。


アルマがその言葉に反応する前に、リンカの手が素早く動いた。紫色に光る円形のチャクラムが手元から弧を描くように飛び出し、アルマのすぐ近くをかすめた。


「わっ!」アルマは咄嗟に後退したが、その動きは完全に間に合わなかった。チャクラムは彼女の頬をかすめ、鋭い痛みが走る。


「ぐっ…!」アルマは頬に手を当てた。血が滲み出しており、鋭い一撃が確かに彼女を捉えた証拠だった。


リンカは軽くチャクラムを手元に戻しながら、肩をすくめて微笑む。「あれ、魔法で消えちゃえば避けられたのに」と、アルマをあざ笑うように言った。


「せっかくだからもうちょっと切れ味を確かめたいんだよね…向こうにいる人とか!」


アルマは痛む頬を押さえながら、リンカの挑発的な言葉に震えた。しかし、冷静を保たなければならないと自分に言い聞かせる。「あんた、何を考えてるんや…?」と、力を込めて問いかけた。


リンカは軽く肩をすくめて、さらに一歩近づく。「別に大したことじゃないよ。ただ、アンタがその消える魔法を使えるなら、私も欲しくてさ。もし教えてくれないなら、どうしても手段を選ばないといけないからね~。」その目は、冷たく、計算された意図を隠していなかった。


アルマは息を呑む。自分が逃げることを選べば、リンカがその後どう出るかは分からない。しかし、もし協力するならば、少なくとも一時的にでも無駄な争いを避けられるかもしれない。


「わかった…協力する。」アルマは歯を食いしばりながら答えた。


リンカはその答えを待っていたかのように、満足げな笑みを浮かべた。「そうこなくっちゃ!」と、声を弾ませながら手をパチンと鳴らす。「それでこそアルマちゃんだよ。」


アルマはリンカに黒い霧を発生させる魔法の基礎を簡潔に説明した。リンカは意外にも飲み込みが早く、いくつか試行錯誤を重ねると、薄い霧を作り出すことに成功した。


「へえ~、こんな感じでいいの?」とリンカは楽しそうに霧を手元で操り始める。


「それで十分やろ…これ以上は教える必要あらへん!」アルマは焦った様子で叫ぶ。「さっさと消えてくれ!ウチはアンタと話したくないんや!」


「はいはい、わかりましたよ」とリンカは軽く手を振りながら霧の中に姿を消した。


アルマはリンカの姿が霧の中に消えるのを見届けると、背中に冷たい汗が流れるのを感じた。先ほどのやり取りを思い返し、胸がざわつく。


「まるで、命が削られるような時間やった…」と、小さく呟く。リンカの笑顔には底知れないものを感じる。それが無邪気さゆえか、あるいは何か意図的なものか、アルマには判断がつかなかった。だが、確信していることがひとつある――彼女と関わりすぎれば、自分の身が危うくなる。


たとえ冗談でも天泣と名乗る人物は嫌悪するし、今回は危害を加えられた。


少し震える指で額の汗を拭うと、アルマは深く息を吐いた。「なんであんなやつに絡まれなあかんのや。」


だが安堵する暇もなく、不意に肩を叩かれた


「やあ。」


アルマは魔法使いの弟子に肩を叩かれた瞬間、小さく息を呑み、振り返った。「何や…!驚かせんといてや!」


「さっきのやつのこと見とったか?」と問い詰めるように言う。


「いいや、全く見てないさ」


アルマは少年の答えに不審なものを感じ、目を細めた。


「全く見てない、って…ほんまに?」少年の言葉にはどこか軽さがあり、その目つきもどこか胡散臭い。アルマの中で警戒心が膨れ上がり、気がつけば少年の胸ぐらを掴んでいた。


「なんでこんな開けた場所でアンタが急に現れるんや?ウチがさっきまで誰とおったか、分かっとるんちゃうんか?」


少年は一瞬目を丸くしたが、すぐに小さく笑みを浮かべた。その態度がさらにアルマの神経を逆なでする。


「やめておくれよ。まさか俺を天泣の一員だなんて、疑ってるわけじゃないよね?」少年は軽い調子で言いながら、掴まれた胸元に手を当てて苦笑した。


その言葉を聞いた瞬間、アルマの心臓が一瞬跳ねた。「ああ、さっきウチが出会ったのが天泣の女や盗み聞きしとったんやな…?」


少年はニタッとすぐに口元に笑みを浮かべた。「そんなに怒らないでよ。顔に傷まで作って。可愛い顔が台無しだぞっ。」


「黙れ…質問に答えろや。」アルマの声には明確な怒りが滲んでいた。胸ぐらを掴む手にさらに力が込められ、少年の軽薄な笑みを完全に消し去ろうとしているようだった。


少年は困ったように肩をすくめ、「いいよ、いいよ、落ち着けって」と宥めるように言った。「盗み聞きなんてしてないよ。全部知ってたからさ。」アルマはその言葉に一瞬固まった。彼の手が少年の胸元を掴む力を無意識に強めていく。


「な、何を言ってるんや?」アルマは冷静を装おうとするが、内心では焦りが広がっていく。


「リンカに魔法を教えてくれてありがとう!俺もすぐ覚えちゃったからありがたく使わせてもらうよ。」


アルマはその言葉を聞いて思わず手を離した。少年は胸元を軽く整えながら、悪びれた様子もなく笑みを浮かべ続けている。


「な…何やと?ウチが教えた魔法を…覚えた?」アルマの声は驚きと怒りに震えていた。


少年は無邪気な口調で答えた。「うん、リンカのおかげでね。あの子、すごく面白いよね。君の教え方が上手かったのもあるけど、彼女がちょっと練習するだけで、すぐに使えるようになるなんて驚きだよ。でもさ、俺は彼女のそれを見ただけで覚えた!もっとすごくない?」


アルマはその言葉に背筋が凍る思いをした。「見ただけで…覚えたって…?」その意味を理解するのに数秒かかり、唖然とした表情を浮かべる。


少年はにやりと笑い、手のひらを広げると、そこに薄い黒い霧がふわりと漂い始めた。「ね、ほら、こんな感じだ。彼女みたいに完璧じゃないけど、まぁ、実戦でも使えそうだろ?」


アルマの目が険しく細まる。「…アンタ、一体何者や。普通の人間がこんな短時間で魔法を真似するなんて…」


少年は肩をすくめ、「まあ、普通じゃないのは確かかな。でも、そんなことどうでもいいだろ?重要なのは、この魔法、俺にとってすごく便利そうだってこと。」


「便利…?」アルマは冷たい怒りを押し殺すように呟いた。「アンタ、それをどこで使うつもりなんや?」


「どこで…って、それを知る必要がある?」少年はいたずらっぽく微笑みながら、霧をすっと消した。「君が教えたってだけで、もう十分責任を感じるだろう?心配しないで、俺の方で楽しく使わせてもらうよ。」


アルマの拳が震え、思わず一歩前に出る。「ふざけるなや…ウチがそんなこと許すわけないやろ!」


少年はその威圧的な態度を見てもまったく動じる様子はなく、むしろ楽しげな笑みを浮かべ続ける。「怒らないでよ、アルマ。君も知ってるだろ?この世界じゃ、強いものが生き残る。俺がそれを使って何をしようと、誰も止められないさ。」


「突然姿を現す魔法…不意打ちにはもってこいだね。」少年は言葉を続けながら、足元に再び黒い霧を漂わせた。その薄暗い気配が広がるたびに、アルマの胸には不安と怒りが混ざった感情が渦巻く。


「アンタ、そんなふざけたこと抜かしてると――」アルマが言いかけたその瞬間、少年の姿が霧の中でぼやけ始めた。


「まあまあ、ここで決着をつけるつもりはないさ。」少年の声は遠くなり、霧に溶け込むようにして消えていく。「また会おうね、アルマ。今度はもっと面白い話をしよう。」


アルマは霧が完全に晴れるまでその場を動けなかった。手に汗が滲み、無意識のうちに拳を握りしめていた。少年の存在はただの奇妙な偶然ではない。彼の行動には明らかに何かしらの意図が隠されている。それが何であれ、危険なものであることは間違いない。


「アイツ…一体何者なんや。」アルマは低く呟き、荒く息を吐いた。思い出すのはリンカの無邪気な笑顔と、それを見つめる少年の不気味な視線。どちらも異質で、どちらも計り知れない。



霧が完全に晴れた後、アルマは動揺を抑えながら自分を落ち着かせようとしていた。少年とのやり取りは、彼女の中に消えない不安を残している。


「…何が目的なんや、アイツら…」アルマは額の汗を拭い、改めて辺りを見回した。


そのとき、遠くから聞こえてくる人々のざわめきが耳に入る。異様な雰囲気を感じ取ったアルマは、警戒しながらその声の方へと足を向けた。


アルマが辿り着いたのは、小さな広場だった。そこには兵士たちや野次馬が集まり、何やら騒然としている。中心に向かって押し進むと、見慣れた魔法使いが目に入った。


「…ミヤビ?」


地面に横たわる魔法使いの名を呼んだが、体は動かず、その顔には安らぎとは程遠い苦悶の表情が浮かんでいた。彼女の首元には薄い傷跡が残っており、その傷口からは黒い霧の残滓が漂っているように見えた。






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