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第六十四話 暗い森で

「ここは…どこだ?」ワタルが辺りを見回しながら呟いた。


アルマは苛立たしげに、彼らを睨みつけた。「何って…ついて来たんはあんたらやろ?ウチにそんなこと聞かれても困るわ。」


「ハハっ!どうやらアンタ達が邪魔してくれたおかげで、おかしな場所へ飛んでしまったようや…残念やったなぁ」とアルマは、肩をすくめながら冷たく笑った。


「何がおかしいの?」とサヤは険しい表情で問い返した。


アルマは冷たい笑みを崩さず、腕を組み直して彼らを見下ろす。「何がって、あんたらの無鉄砲さや。ウチの魔法に飛び込んで、どこに行くかも分からんまま、助けようってか?もっと賢く生きようや。」



「無鉄砲かもしれない。でも、俺たちは仲間を見捨てるつもりはない。ファングを救うためなら、どんな困難にも立ち向かうつもりだ。」ワタルの声には決意が込められていた。


「なら、さっさと金でも置いておくのが最良の選択肢やったで?このままアンタらはわけわからん場所で当てもなく野垂れ死ぬんやからなぁ」


アルマの冷たい言葉に、ワタルたちは互いの顔を見合わせた。


「全く思慮が浅いんやわ…ウチは移動魔法でいくらでも逃げ切れる。さいならや。」と再び彼女の体が黒い霧に包まれていく。アルマはその姿を完全に消し去る直前、最後に彼らに一瞥を送り、その目には侮蔑の色が浮かんでいた。


ワタル一同はまた霧に向かって飛び込む。同じ轍を踏むまいとアルマは左手から霧を放出する。「同じ手なんて食わんで!」と彼女は叫び、さらに霧の量を増やした。

ワタル達は再び視界が遮られるが、サヤが魔法で砂を巻き上げ、視界を遮るそれを完全に掻き消した。


「くっ…今度こそや…!あれ…?」と必死に身体を振るいながら見るからに動揺しているアルマの姿があった。


左手を振り上げ、何度も黒い霧を放とうとする。しかし、霧はわずかに漂うだけで、その力を失っているようだった。


「なんでや…?どうして…?」アルマは驚愕した表情でつぶやき、必死に魔力を込めようと試みるが、思うように魔法は発動しない。


サヤは頷き、魔法の発動に影響を与える可能性について考えを巡らせた。「私が使った砂の魔法が、大地の力に直接触れるものだから、空間を歪めるような移動魔法と干渉したのかも。」


「大地と空間には深い繋がりがあるから、私の砂の魔法がその繋がりを乱したんだ。アルマの移動魔法は、その安定した空間に依存している。だから、うまく機能しなかったのかもしれない。」とサヤは分析した。


「つまり、アルマ…あなたは逃げられないってことね。」とハウンが冷静に言い放った。


彼女は再度魔力を込めようと試みるが、思うように力が湧いてこない。


「確かに凄まじい魔力やった…ここまで完全に掻き消されてしもうたら、暫くは何も出来へん。ウチの負けやな…」とアルマは吐き捨てるように呟いた。その言葉には悔しさと無力感が滲み出ていた。


彼女の目は、かつての強気な輝きを失い、焦りと絶望に満ちている。黒い霧を操っていたはずの左手は、今やただ虚しく空を切るだけだった。「なんでこんなことに…こんな屈辱、耐えられへん…!」


ワタルたちは、アルマの様子を見つめながら、彼女が完全に追い詰められていることを理解した。ハウンがその隙に気づき、言葉をかける。「アルマ、私たちと戦う理由はもうないはずよ。あなたも分かっているでしょう?」


「ウチはまだ諦めてへん…!もう一度、もう一度だけ…」アルマは自らを奮い立たせるように呟き、再び魔力を込めようとした。しかし、その努力は無駄であることが彼女自身に分かり始めていた。


アルマはべたっと地面に座り込んでしまった。「それでどうするんや?わけわからん場所に迷い込んで…アンタらも帰ることも出来んやろうなぁ…?」彼女は疲れ切った声で呟き、周囲を見渡す。ワタルたちもその状況に困惑しつつあった。確かに彼らも、この場所から簡単には帰れそうにない。


「下手したら野垂れ死ぬ他何もない。ウチもアンタらもや。ざまあないわなぁ」と乾いた笑いを漏らすアルマに、ワタルたちは言葉を失った。



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