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第六十三話 姿を消す魔法

ファングの行方を求めて、叢雨のボスのアルマのもとへ向かった一向。

彼女がファングの失踪に関わっていることは間違いないようであった。

レフレは彼女を利用してやれと言っていたが、完全に主導権はアルマが握っている。ファングが自ら叢雨と取引し、その証拠がここにある。


「そんな取引は到底受け入れられない…みんな、どう思う?」とワタルは3人の方を振り返る。


「アルマ…私からしたら、信用できないわ。あなたがファングに手を出した…そういう可能性だって捨て切れないの。」と鋭い視線を向けたのはハウンだった。


「…ならどうするんよ?まぁ…死ぬやろうなぁ…あいつ…もうウチには関係ないわな。」とアルマは言い放ち、冷ややかな笑みを浮かべた。


「死ぬってそんなこと!」とスノーは声を震わせながら叫んだ。


アルマは手で耳を塞ぐような態度を見せ、楽しそうに笑った。「そんなに大声出さんでもええやん。ほんなら、あんたらがどうにかするつもりなん?ファングを助けるために、何をするつもりなんや?」


ワタルは無言でアルマを見つめた。心の中で葛藤していた。彼女の言葉には冷たい現実が反映されている。ファングの命が危険にさらされている今、無駄な抵抗はできないかもしれない。仲間たちの目も彼に向いていた。


「私たちは叢雨に協力することはできないわ。」ハウンが冷静に言った。


「せやったら、ウチのとこへは冷やかしに来たんか?」アルマは冷たい目でワタルたちを見返した。その表情には彼らの真剣さを完全に受け入れないという意思が滲んでいた。


レフレからアルマの元へ行くようにとは言われたが、思う通りにはいかない。


ワタルたちはアルマの冷たい笑みに対して、次の一手を考えあぐねていた。


「ファングがどうなるかは、俺たちにも関わるが…お前にも無関係じゃないかもしれない」とワタルは冷静に切り出した。


「何言ってんねん、そっちに流れる話なんて興味ないで?」アルマはあくまで冷淡な表情で見返したが、ワタルは動じなかった。


アルマはワタルたちの無言の反応を見て、冷ややかに笑みを浮かべた。「まあ、これ以上話しても無駄やろな。ウチに用はないなら、もう終わりや。」


そう言うと、アルマは指を軽く鳴らし、身体を覆うように霧のような黒い魔法の煙が立ち昇り始めた。「じゃ、そろそろおいとまさせてもらうわ。」


スノーが一歩前に出て叫んだ。「待って!まだ話は――」


「遅いわ。」アルマは涼しい顔で言い放ち、体が徐々に消えかけていく。黒い煙が彼女の周囲に集まり、まるでその場から完全に姿を消そうとしているかのようだった。


ワタルは瞬時に状況を把握し、すぐに仲間たちに声をかけた。「今しかない!」


その言葉と同時に、ワタル、ハウン、スノー、サヤは全力でアルマの方に飛び込んだ。彼女が完全に消える直前に、その黒い煙の中へと突っ込む。


「何や!」アルマの驚いた声が聞こえた瞬間、ワタルたちは霧に包まれ、まるで別の空間に引き込まれたかのように感覚が揺らいだ。


薄暗い空間には不穏な雰囲気が漂っていた。ここはどこなのか、まったく見当がつかない。


「何してんねん…こいつら…」とアルマが苛立った様子で姿を現した。彼女は明らかに予想外の事態に直面していた。


ワタルたちは呼吸を整えながら立ち上がり、アルマを睨みつけた。彼らは、すんでのところで彼女の消滅を阻止し、一緒に移動することに成功したのだ。


彼女の移動魔法は、確かに一瞬の隙を突かれたものの、通常の状況であればこんなに簡単に制御不能になることはなかった。アルマの魔力が乱れた原因が何かを探るように、彼女は冷静さを取り戻し始めたが、その目にはまだ困惑が浮かんでいた。


森のような場所で、薄い霧が漂い、木々が闇に覆われていた。地面は湿っており、足元には無数の枯れ葉が積もっている。奇妙な静けさが漂い、ただ遠くで鳥の鳴き声がかすかに響くだけだった。ワタルたちは一瞬、自分たちがどこにいるのか全くわからなくなった。

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