第六十二話 ファングの行方
目が覚めるとワタルはベッドの上だった。ちゅんちゅんと小鳥のさえずりが聞こえる。ぐっしょりとかいた寝汗を不快に思いながら、ワタルは身体を起こす。
急いで着替えを済ませ、メンバーの元へと向かう。兵士団員には無理を言って、叢雨のアジトへと行くことを黙認してもらった。面倒ごとを起こせば、対処しかねると念を押されたが、それでもワタルは引き下がるわけにはいかなかった。
アジトについては、スラムの住民曰く、あの一件から人が出入りした様子はないというが、レフレを信じ扉に手をかけると、あっさりと開いた。
中では叢雨のトップ、アルマが待ち構えていた。
「ようこそ、そのうち来るんやないかと思って待っとったんやけど、まさかこんなに早く来るとはな。」アルマは余裕そうに言った。
「聞きたいことは、わかっとるつもりや。ファングとかいう仲間の獣人のことやろ?」とアルマは一同に尋ねた。
「そう。どこにいるのか教えなさい。」とハウンが詰め寄る。
「人に物を聞く態度ちゃうで…まあええわ。ウチはあの男に力を貸したんや。移動魔法でなぁ。」とアルマは目を細めて答える。
「彼はどこに行ったの?」とサヤが聞く。
「あの獣人はウチと手を組むという条件のもと協力したんや。仲間としてタダで教える訳にはいかんのや」とアルマはきっぱりと答える。
「手を組む…?」ワタルは眉をひそめながら、アルマの言葉を反芻した。
「これや。10万Gといったところやな。」と巾着袋から金貨を取り出した。
これをファングが…。
叢雨という組織に金を渡すという行為
はおおよそ信じがたい。
「それで…私たちにも協力しろってこと?」とサヤは聞く。
「そういうこっちゃ。」アルマはニヤリと笑いながら、金貨を弄んだ。
「ファングは金を渡して、ウチと手を組んだ。それが条件やった。あんたらも同じように手を貸してくれるなら、彼の居場所を教えて飛ばしたるで。」
ワタルは顔をしかめた。「ファングが金で解決しようとしたのか…。それに、叢雨に協力するなんて簡単に決められることじゃない。」
ハウンが一歩前に出て、冷静に言葉を投げかける。「あなたの話は信じがたいわ…彼がそんな簡単に金で取引したとは思えないわ。」
アルマは肩をすくめた。「信じるかどうかはあんたら次第や。けど、ウチの話が嘘やとしたら、どうやってファングが姿を消したんや?」アルマは余裕の笑みを浮かべながら続けた。
「それは…。」ワタルは口ごもった。
「誠意ってものは、言葉よりも形で示した方がええ。あの男はそれをよくわかっとる。」と彼女はワタルに1枚の紙を差し出した。
「これは?」ワタルはそれを手に取った。
「これでもウチが嘘を言っていると?」彼女は自信ありげに言った。
それは間違いなくファングの筆跡だった。ワタルは驚きと戸惑いの入り混じった表情を浮かべ、紙をじっくりと見つめた。そこには、ファングが叢雨に対して金銭と引き換えに協力を依頼した内容が書かれていた。細かい契約条件や、移動魔法を用いた取引についても記されており、真偽を疑う余地がないほど詳細だった。





