第四十九話 王都へ
翌朝、仕立師たちは早朝から働き、正装が見事に仕上がった。ハウンの両親は、男女別々の部屋を用意し、みんなが安心して着替えられるように手配した。
ワタル、ファングは用意された部屋で着替えを始めた。豪華な正装は質感もデザインも一級品で、二人は驚きと感謝の念を抱きながら、慎重に身に着けた。
「本当にすごい仕立てだな」とワタルが感嘆の声を漏らす。
「こんなにしっかりしてるのに動きやすいな…」とファングも気に入った様子である。
一方、スノー、ハウン、サヤは別の部屋で着替えを始めた。豪華なドレスに包まれた三人は、互いに見せ合いながら楽しそうに笑っていた。
「このドレス、本当に素敵!ママさんとパパさんに感謝しなくちゃ」とスノーが嬉しそうに言った。
ハウンが鏡に映る自分の姿を見ながら、「こんなに美しいドレス、初めて着るわ。特にサヤ、その伝統衣装、本当にお姫様みたい」と微笑んだ。
「ありがとう。でも、この衣装、祭りで着た時のものに似ていて、なんだか嬉しい…」とサヤは照れくさそうに言った。
「ねえ、ハウンちゃん。私のドレスもどう?ちゃんと似合ってる?」とスノーが笑顔で尋ねた。
ハウンはちらりとスノーを見て、軽く微笑んだ。「うん、似合ってるわ」
それを聞いたスノーは、やや不満そうに眉をひそめた。「えー、それだけ?もうちょっと何かないの?」
ハウンはふふっと笑い、「いいじゃない、スノー。あなたはどんなドレスでも素敵に見えるんだから」とさらりと返した。
サヤはその様子を見て、クスリと笑った。
王家の使者のハーストが答えを聞きに来るのは明日…。もちろん謁見の意向を伝えるつもりだ。
それは、王に認められることで、獣人と人間の平和的共存の実現に向けて大きな一歩を踏み出すことになるはずだ。
陽の光が差し込む中、ワタルたちは準備を整えていた。緊張と期待が入り混じる中、ハーストの訪問が近づいていた。ハウンの両親は、彼らが最善を尽くせるようにと昼食を用意し、送り出した。
「頑張ってね」と母親がハウンに優しく声をかけた。
「ありがとう、お母さん。皆のために、しっかり伝えてくるわ」とハウンは微笑んで答えた。
翌日、秘密基地に再びやってきたハーストに意向を伝え、期日はとんとん拍子に決まり、夏至祭の最終日に決まった。
玄関の前で、王家の使者ハーストが現れた。彼は立派な馬車に乗り、威厳を保ちながら彼らの前に立った。
「皆さん、おはようございます。準備は整っていますか?」とハーストが静かに尋ねた。
「はい、整っています。よろしくお願いします」とワタルが答えた。
馬車に乗り込み、王城へ向かう道中、ワタルたちはそれぞれの思いを胸に抱きながら、静かに風景を眺めていた。ハーストは彼らの表情を見て、微笑みながら語りかけた。
「今日の謁見は、王にとっても重要な意味を持ちます。皆さんの勇気と決意が、平和への道を開く鍵となるでしょう」
「私たちはそのためにここにいます。王に認めてもらい、獣人と人間が共存できる未来を作りたいんです」とハウンが答えた。
「それは素晴らしいことですね…私も同じです。」と彼は大きく頷いた。
ハーストは彼らに一瞬の静寂を与えた後、深い声で続けた。「皆さんには、私の立場について少し説明させてください。私は先代の王の息子であり、現在の王は私の叔父にあたります」
ワタルは驚いた表情でハーストを見つめた。「ということは、いずれハーストさんも王に…」
ハーストは軽く首を振りながら続けた。「いいえ…私は先代の王の意向で王位継承から除外されました。父が亡くなった当時は15と若かったのですが、それだけが理由ではないでしょう…」と自身の翼を指差した。
ワタルは気まずそうに眉をひそめ、頭を下げた。「嫌なことを聞いてしまい、すみません」
ハーストはそれを笑い飛ばし、肩を軽くすくめた。「いや、気にしないでください。今の王は私を大切にしてくださっていますし、私は外の世界をほとんど知らないものですから…文字通り各地を飛び回って仕事をするというのも楽しいものですよ。」馬車が城下町に到着した。
フラハイトの街もたいそう賑わっているが、王城前の賑わいはそれを超えていた。人々は集まり、華やかな装飾で彩られた城と、その門に掲げられた王家の紋章を仰いでいる。
やがて、馬車が王城に到着すると、壮麗な門が開かれ、彼らは中へと導かれた。広い廊下を歩きながら、心臓の鼓動が高鳴るのを感じた。





