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第四十四話 作戦

ミリアの言っていることが本当であるとしたら…ワタルの胸に不安がよぎった。ルシアスという名前には聞き覚えがあった。


「ルシアス…」ファングが呟いた。


「それって、兵士団のアルトが言ってた天泣のボスじゃないか?」とワタルの顔が険しくなった。


「つまり、私たちはずっと敵に利用されていたってことね。」サヤが唇を噛みしめた。


ミリアの見せた記憶が真実であるかどうか、ワタルたちはそれぞれの思いを巡らせていた。記憶の中の光景は鮮明で、ルシアスの冷酷な行動と島民たちの苦しみがリアルに感じられたが、それが幻術や操作された記憶ではないという保証はなかった。


ハウンは眉をひそめ、深い考えにふけった。「でも、ミリアの言うことが本当なら、今までの私たちの行動は全部間違いだったことになるし、それを受け入れるのは簡単じゃないわ。」


その時、ワタルの腹が鳴り、続いて他の皆も空腹を感じ始めた。ミリアがその音を聞き、顔をほころばせた。


「お腹空いてるんだね。よし、ちょっと休憩しようか。」ミリアは明るく言い、皆を案内して近くの果物の木へと連れて行った。「ここに美味しい果物がいっぱいあるんだ。」


果物の木の下に着くと、ミリアは手際よく熟した果物をもぎ取り、ワタルたちに手渡した。「これ、食べてみて。すごく甘くて美味しいんだから。」


ワタルは果物を受け取り、かじってみた。「本当に美味しい!」彼の顔には自然と笑顔が広がった。


「ありがとう、ミリアちゃん。」スノーも微笑みながら果物を口に運んだ。


ハウンも果物を手に取りながら、「こんなに美味しい果物を食べるのは久しぶりね。」と感心した様子で言った。


「ほら、みんなもっと食べて。」ミリアは笑顔で言いながら、さらに果物を配った。


ファングは果物をかじりながら、「この島にはまだまだ知らないことがたくさんあるんだな。」


ミリアは軽く笑って答えた。「この島にはたくさんの秘密があるの。でも、その秘密がみんなにとっていい方向に使われればいいなって思ってる。」


ワタルはその言葉に心が動かされた。彼はミリアの目を見て、彼女が嘘をついているようには思えなかった。もしかしたら、本当に彼女と協力して島を救うことができるのかもしれない。


しばらくの間、皆は果物を食べながら、リラックスした雰囲気の中でお互いのことを話し合った。ミリアの笑顔と優しい声が、彼らの警戒心を少しずつ和らげていった。


「こんな風に話すことができて良かったよ。」ミリアは微笑んだ。


果物を食べながらしばらく談笑していたが、やがてミリアは表情を引き締めた。「ところで、ちょっと真面目な話なんだけど、いいかな?」


ワタルたちは頷き、ミリアの話に耳を傾けた。


「実は、森にいる魔物たちだけど、彼らがこの島に現れ始めたのはエルンがやってきてからなんだ。」ミリアは目を伏せて、少し悲しそうに語り始めた。「エルンたちが意図的に魔物を呼び寄せたんじゃないかと私は考えているの。」


「そう。そして、その魔物たちを追い払うために父が動いている間に、島の人々を苦しめているという情報が広まってしまったの。けれど、それは誤解なんだ。父はただ島を守るために戦っているだけなの。」ミリアは続けた。


「それなら、エルンの様子をすぐにでも探りに行こうよ。」スノーが興奮気味に提案した。


ミリアはすぐに首を振った。「待って、それは危険すぎるわ。エルンがどの程度の戦力を持っているか、まだわからないんだから。まずはパパを説得して、協力を得ることが先決よ。」


あれほど敵意を剥き出しにされた手前、信用を得られるのか不安を感じたワタルたちを見て、ミリアは明るく笑った。「全然だいじょーぶ!パパだって本当は優しいんだから、話せばきっとわかってくれるよ。」と彼らの返答を待つ前に魔法を使って、父の元へと一同を連れて行くのだった。


光の柱が彼らを包み込み、一瞬にして景色が変わった。


新しい場所にたどり着いたワタルたちの前に現れたのは、厳しい表情をしたミリアの父、龍だった。彼の目には明らかな疑念が浮かんでいた。


龍は声を低くして尋ねた。「この者どもを信じるというのか?」


ミリアは一歩前に出て、父の目を真っ直ぐに見つめた。「パパ、彼らは島を救いたいって本気で思ってるの。だから、協力してくれるって信じてるの。」


「そう言って迫ってきた人間にどれほど裏切られてきたか、わかっているのか?」龍の声には怒りと疑念が込められていた。「お前の嘘を見抜く能力は結構だが、それが過去にどれほど役に立った?」


ミリアは言い返す言葉を失い、視線を落とした。


その時、ワタルが一歩前に出て龍に向かって言った。「おとうさん、俺たちはミリアが見せてくれたこの島の悲劇が真実であると信じています。そして、私たちが追っている敵と同じかもしれないのです。信じられないかもしれませんが、私たちもこの島を救いたいと本気で思っています。どうか、協力してほしいんです。」


龍はしばらくワタルを見つめ、そして再びミリアに目を向けた。彼は深いため息をつき、厳しい表情のまま言った。「少しでも妙なことをすれば命はないと思え。しかし、ミリアに免じて話を聞いてやろう。」



ワタルたちはホッと胸をなでおろし、龍の信頼を得るために最善を尽くす決意を固めた。そして、ミリアが見せてくれた記憶や情報を元に、新たな作戦会議を始めるのだった。


ハウンはホッと息をつき、提案した。「私たちは島の外にいる兵士団にこの事実を伝えに行きます。彼らの協力を得ることで、エルンの脅威に対抗できるはずです。」


龍は眉をひそめた。「島を出るだと?お前たちを野放しにするなどできない。私たちにとって敵である可能性もあるのだぞ。」


「そのために二手に分かれるんです。」ハウンが提案した。「スノーとファングはここに残り、龍さんと共に島を守ります。私たちは兵士団に事実を伝えに行かせてください。」



龍は納得のいかない様子で首を振った。「だから何だというんだ?」


ミリアが口を挟んだ。「パパ、私がワタルたちと一緒に行くならどう?それなら、彼らが何か妙なことをしようとしても私が止めるわ。」


ファングはその場で武器を捨て、龍の前に立って宣言した。「抵抗するつもりはないし、ワタル達が妙なことをするのであれば、俺とスノーを殺してくれて構わない。」


「私も?ええ、まあ、同じくです。」

スノーは困惑しながらも賛同した。


龍は一瞬驚いたように目を見開いたが、やがて深いため息をつき、重々しく頷いた。「分かった。お前たちの覚悟は見せてもらった。だが、少しでも怪しい動きを見せれば、その覚悟が無駄になることを覚悟しろ。」


ミリアはワタルたちに向かって微笑んだ。「よし、それなら準備を整えましょう。私も変身していくわ。」


彼女は魔法を使ってスノーそっくりに変身した。


一同は驚愕の表情を見せ、特にスノーは自分の姿を見て目を見開いた。「わ、私!?」


ファングが驚いた声で言った。「すごい、まるで本物のスノーだ!」


ミリアは笑みを浮かべて説明を始めた。「こうして変身することで、エルンに私だと勘づかれにくくなるはず。彼らが私の姿を見れば、怪しまれてしまうからね。」


スノーは自分の姿を見て、満足そうに笑った。「やっぱり私、可愛いね。気をつけて行って来てね。」と笑顔で送り出した。


ミリアは頷き、ワタル、サヤ、ハウンと共に島を出る準備を始めた。ファングとスノーは龍と共に島に残り、エルンの動向を見守ることになった。二手に分かれた彼らは、それぞれの役割を果たすべく行動を開始した。

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