第二十三話 迷宮探索
そして当日。合宿生と合同で行う課外授業が始まるのだった。
約束通り青年はワタルをチームに推薦してくれていたようで、ワタルは参加が認められた。
白を基調とした制服を着用し、列に並んで会場に向かうと開会式が行われた。
ファング達の姿もそこにはあった。
目的は魔物の生態調査や素材集めなど、同じチーム内での連携を重要視したものであり、チーム同士で争ったり、学院生の実力を競い合うものではないということを長々と説明された。
開会式の後は会場に散らばり、各自活動を始める流れだ。
サヤと青年は既に準備を進めているようで、ワタルは2人と行動を共にすることにした。
目的地は学院から数キロ離れた海に抜ける巨大な洞窟となった。他のチームは別の場所に潜っており、この洞窟はワタル達のチームともう一組みだけらしい。
この洞窟が迷宮と呼ばれる所以は、その内部の複雑さに起因している。
洞窟を進む道は様々で、大掛かりな迷路のように入り組んでいた。地図は配られてはいるが、行き止まりに遭遇することも少なくないそうだ。
とはいえ、学院生の課外授業で潜るものであるため、救済的に非常口が人工的に作られている。
洞窟へと入ると、ひんやりとした空気が肌にまとわりついた。湿度が高いようでじめっとして感じられる。また壁や床は岩肌が露出しており、ところどころに水たまりができていた。
ワタル達は地図を見ながら進んでいくことにした。
洞窟の中の空気はジメジメとしているが、海が近いということで潮の香りが鼻腔をくすぐった。
青年がサヤに話しかける様子はない。
彼を先頭にワタル、サヤという順になっている。ワタルは気を使って会話を試みるが、サヤは黙っているし、青年はこの期に及んで恥ずかしがっているしで、気まずい空気が流れるのだった。
そしてしばらく進むと分かれ道に差し掛かった。青年は地図を取り出し確認するとこちらに手招きをする。
どうやら今日はこちらの道へ行くつもりのようだ。そちらは一見するとただの行き止まりに見えるのだが……。
しかしよく見ると地面に蓋があり、それを退かすことで進むことができるらしい。もう随分と使われてないのかボロボロと土くれのようなものが落ちてくる。
蓋を開けると地下へと続く階段が続いていた。ぽっかりと口を開けるその空間には海水が流れ込んできている。
青年は先に行き、恐る恐る足を踏み出していたが、何度か頷いている。どうやら水が浸かっている様子は無いようで、安心して進めるようだ。
中に入りしばらく進むと行き止まりになっていた。ここで引き返す必要があるだろうと思っていたのだが……。
青年が壁を押すとガコンという音と共に壁の一部が開いたのだ。そしてそこから梯子が現れたのだった。この洞窟にはこういった隠し部屋がいくつもあるらしく、今回のような仕掛けが施されている場所もあるらしい。
サヤも驚いているようだった。
梯子を上ると、その先は二股に分かれていた。ワタルは身体強化で嗅覚と聴覚を研ぎ澄ませる。右の方から波の音が聞こえた。
3人は右へと進んだ。
しばらく進むと広い空間に出ることが出来たが、そこには魔物がいたのだった。
それは巨大なカニだった。ワタルの身長の2倍以上はあるだろうか?ハサミは重さだけで岩をも砕きそうだ。また、甲羅には鋭いトゲが生えており、あれで突かれたらひとたまりもないだろう。
青年は水の魔法でオノのようなものを作り出すと、その足を切り落とした。
だがカニは怯むことなく太い尻尾を振り回してくる。
サヤはその尻尾による攻撃を盾で受け止めていたが、勢いは止まらずに押されていく。
その様子を見ていた青年が叫ぶように言った。
まずはオノを作った水で剣を作り上げる。それでトゲのついたハサミの処理に取り掛かり、攻撃を受け流すような形で応戦する。
ワタルはサヤを援護するために駆け出して行った。
腕力を強化し、盾ごと押し返すような力を込める。そして地面に押しつける形でそのままハサミを切り落としたのだった。
それでもカニは自由に動ける部分が殆ど無くなってもなお抵抗してくる。サヤはワタルの後ろから飛び出し、その大きなハサミを砂の魔法で切り落としたのだった。
息のあった連携で、ようやくカニは動かなくなった。
「やった!」とワタルは声をあげ、二人とハイタッチをする。
そして、ほらと青年に目配せをした。
青年は恥ずかしそうな表情で、サヤに向かって手を差し出すが、手がどこかぎこちなく震えていた。サヤは微笑みながら青年の手に触れ、軽くハイタッチを試みるが、青年は手を縮こませてしまう。
「ありがとう、サヤ。君の魔法のおかげで助かったよ。」青年がそう言うと、照れくさそうに彼女を見つめた。
サヤは少し笑みを浮かべながら、力強くハイタッチを完成させた。
「こうやってみんなで協力するのって楽しいね。次も頑張ろう!」サヤがワタルだけに聞こえるように言った。
まだまだ打ち解けたとは言い難いが、チームの仲は深まりつつあるようだった。
討伐したカニは生態調査の報告に殻の一部を持ち帰りつつ、身については青年の水の魔法で浄化し、皆で食べることになった。
食事をしている間は、お互いのことについて質問をしたりした。
青年は真名をタクト・シャルカンといい、由緒正しい大魔法使いの家系であるシャルカン家の次男である。そして彼もまた魔法の才を持ち、幼い時から基礎的な知識を学びながら高度な魔法を扱うという厳しい修行を積み重ねてきたようだ。
5つ年上の兄はそれ以上の才能があり、タクトは比較されながら生きてきたが、それでも自分は努力で叶えられることがあると信じ、日々精進を重ねてきた。
学院の主席として活躍する兄の背中を追って。
しかし、その兄は学院を卒業後忽然と姿を消したという。
そしてしばらくの間行方がわからず、今でも国による捜索が行われているらしい。
海賊を討伐するため、独りで海に出ただとか、悪しき者の組織に囚われているのではと噂されたがどれも信ぴょう性の乏しいものだったようだ。
幼い頃、水魔法の使い過ぎによる魔力の消耗が原因で危機に陥った時も、いつも必ず兄は助けてくれたという。
兄のことは今もまだ元気にやっていると信じているし、いつかまた会えると信じたいと思っているのだそうだ。サヤは、その兄のことは知らなかったが、タクトの話を聞いて少し心が痛んだ。そして彼のことを応援したいと思ったのだった。
食事を終えた一行は再び洞窟を進み始めた。
今度は分かれ道もなく順調に進んでいくことができた。
そしてしばらく進むと、また大きな空間に出た。
そこは天井が高くなっており、灯りを持ってしても上が見えない。
地面は岩や砂利などが混ざりあい、歩く度にザラザラと音が鳴る。
広さはかなりあるようで、端から端まで見通すことが出来ないほどだった。
注意深く奥の方を探索すると、何者かが啜り泣くような声が聞こえてきた。
三人は顔をを見合わせ、そちらに進むべきか決めかねていた。
サヤは少し震えているようだったが、勇気を振り絞って足を進めている。
そしてとうとう音源を確認することが出来た。
別のチームの学院生だ。跪き、天を仰ぎながら涙を流しているのだ。
そのチームの3人が寄り添って、身を寄せている。
何事かと声をかけようとすると、ハッと我に返ったようで、怯えた表情になった。
「タクトさん!あれを見てください」
泣いていた学院生のうちの1人が、奥の通路を指さす。
そこに灯りを向けると、山のように何かが連なっている。
さらに上の方を照らすとそれの正体はすぐにわかった。
巨大なカニの魔物だ。しかも何匹も。
ここは巣なのであろうか。
あれほど苦戦した敵がこんなにも状況は絶望的に見えた。
しかし、彼らは襲ってくるどころか、動く気配すらない。
「これもう死んでいる…?」
サヤが恐る恐る口を開いた。
ワタルが近づいてみると、確かにピクリとも動く様子がない。
甲羅は無惨にも砕け、あたりに飛び散っていた。しかしながら腐敗臭などは感じられず、そう時間はたっていないのだろう。
これほどの魔物を倒すようなものがいるのであれば遭遇してしまえばひとたまりもないだろう。泣いていた彼らを引き連れて、脱出を試みる。
他の個体に遭遇することがないように祈りながら……。
洞窟の外へと無事に出ることが出来た一行は、安堵の息をつく。
その時出てきた暗闇の中から轟音が響いてきた。
ひぃと、身を震わせながら学院生が言う。
振り返ろうとする彼を他の者が必死の形相で静止させるのだった。
暗闇から現れたそれは巨大なカニの魔物であった。
魔物が外に出てきてしまった。ここで処理をしなければ、街に出てしまうかもしれない。
しかし、様子がおかしい。何者かから逃げているようにも見える。
魔法使いらしき杖を構えながら、その巨大なカニを追っているのは一人の男であった。
高い背丈、金色の髪。獣のような奇怪な仮面をかぶっているが、その蒼い目が静かにこちらを見据えているのがわかる。
男は慣れた手つきで両腕を伸ばし、腰を落とす。そして勢いよく後ろに振り抜いた手からは黒い渦が広がり魔物を捕らえた。
回転力を維持したまま、一気に地面に叩きつけられた魔物はもがき苦しむようにして光の粒子となって消えていった。
残されたのは男が片手で投げた巨大なカニの甲羅のみだ。その陰には、あの逃げていったらしきカニも息絶えていた。
男はこちらに気づいたようで近づいてくる。警戒をしていると、彼の目が鋭く光り、その冷たい視線が一行を貫いた。彼は堂々と立ち、身にまとった邪悪なオーラが周囲を覆い尽くす。
「おやおや、魔術学院の生徒の皆さんご機嫌よう。邪魔なカニの魔物を倒したのは貴方方ですね?なかなかの手柄ではありませんか。」と大きく拍手をした。
その得体のしれない男からの恐怖で、サヤの体は凍ったように動かなくなった。それでも彼の言葉が途切れると、サヤはようやく声を絞り出すようにして言葉を紡ぎ出した。
「あなたは一体……何者ですか?なぜ私たちのことを……」
その声を聞いて男はさらに強く蒼い目を輝かせる。そしてしばらく何かを思案している素振りをすると、ニヤリと笑って答えた。
「申し遅れました。私は天泣の幹部、ゼフィル。貴方たちをここに連れてきたのは何かの運命でしょう。貴方たちのような若い魔法使いの力を我ら天泣で活かしてみませんか?血は流したくないでしょう?」と手を差し伸べてきた。ゼフィルと名乗った男は、お道化るような声音で誘ってくる。
「ふざけるな。天泣などに力を貸すものか!血を流すのはお前たちのような輩の方だ」とタクトが啖呵を切る。
他の2人は既に恐怖で体を動かすことすらできていないというのに、この青年は気丈だ。
「なるほど元気の良いお子様ですねえ。私と共に来ませんか?お話をしてあげても良いのですが……断るつもりならどうなるか、お分かりですね?」と口元を隠して不気味に笑う。
どうやら彼が攻撃に転じようとすれば、タクト達は真っ先に殺されてしまうであろうことがわかる。誰も言葉を発せない状況がしばらく続くが、それはゼフィルによって破られるのだった。
「まあ、私が手を下すこともないでしょう。お前達。遊んで差し上げなさい。」と彼は一言声をあげると洞窟の中からゾロゾロと武器を持った者たちが現れ、ゼフィルの背後に控える形で整列をした。
「計6人…1人ずつ戦ってもらうつもりでしたが、貴方たちのお仲間の3人…逃げてしまいましたね…」
ワタルはちらりと後ろに視線を向ける。タクトとサヤも、はっとして振り返るが、既にもぬけの殻だった。
タクトが悔しそうに歯噛みをする。
そしてゼフィルの背後から1人の男が歩み出た。
「ここにいる彼らには普段海賊として働いてもらっています。そして我ら天泣に仇なす者を始末するという使命を担っています。サエナの国の者どもに大切な資源を荒らされるのは面白くないですからね。」とゼフィルが言う。
ワタル、サヤ、タクトは臨戦体制に入る。
サヤは砂を操って、2人を拘束した。
タクトは水の魔法で泡を作りだし、海賊の顔をその中に閉じ込めた。ワタルに対して放った技だ。
ワタルは身体強化で敏捷性を上げ、武器を奪い取るとそのまま攻撃を加えていく。
敵は圧倒され、海賊6人をタクトの泡で閉じ込めることに成功した。
「さぁ、俺たちの実力はわかっただろう?ゼフィル。お前もこうなりたくなかったらさっさとそいつらを連れてここから立ち去るんだ」
とタクトは言い放つ。
しかし、ゼフィルはクックッと笑い声をあげた。
足元でもがき苦しむ手下の胸ぐらを掴むと、彼の身がどろりと溶けだし、ゼフィルの身体に吸い込まれるように消えていった。
ひぃと呻き声が響く。
手下達の身体は泥のように変化していき、もはや人の形を保ってはいなかった。
その光景にサヤが短く悲鳴を上げて目を背ける。
次々とゼフィルは海賊を飲み込み続ける。その様子を見て、ワタルは冷や汗を流している。
隙と見て意を決して、ワタルは剣で切り掛かる。
しかし、その剣はいとも簡単に片手で受け止められてしまい、そのまま剣を折られてしまった。
ワタルは信じられないような光景に目を奪われているうちに、いつの間にか首を掴まれて持ち上げられた。
圧倒的な力の前に為す術もない。
それでもタクトが水の魔法でゼフィルの視界を奪ってくれたおかげでなんとか拘束から逃れることができた。
「腹立たしいですね!食事の邪魔をしないでいただけますか?」とゼフィルが叫ぶ。
ドロドロに溶けた手下だったものを一つに集めていく。腕を大きく広げ、胸の辺りから一気に飲み込むように吸収してしまった。
その姿を見てタクトは、 これは……まずい……と呟いた。
その身体は、先ほどよりもさらに大きくなっている。
「さぁ、貴方方にも私の養分になっていただきましょうか。」
化け物め…とタクトはゼフィルを睨みつけながら唸るように一言こぼした。
ワタルはなんとか戦況を立て直そうと、海賊達と戦った際に手に入れた武器を投げつけて牽制をする。しかしそれは無慈悲にも彼の身体の中に吸い込まれていってしまった。
「無駄な足掻きよ…どれ一つ見せて差し上げましょうか!」とゼフィルが叫ぶ。
すると、風を切り裂くようにして、渦を巻いていた槍のようなものが彼の背後から投げつけられた。
その先端は鋭く、一点に全ての力を込めたものだ。ワタルとタクトはなんとか避けようとするが、完全に避けることができずに、サヤだけが狙われてしまった。
迫り来る一撃を見つめることしか出来ない彼女を庇うように、身を呈して攻撃から守った。
しかし、その攻撃の勢いは凄まじく、タクトの肩に突きささり、そのままの勢いで壁に叩きつけられてしまった。
タクトの口から血が滴る。
思わずタクトに駆け寄るサヤだったが、それを庇うようにしてワタルが立ちはだかる。
その様子を見たゼフィルは再び笑うように喉を鳴らしていた。
タクトは動かないようだった。
それでも、ワタルは守られるわけにはいかない。
身体強化で、彼にも劣らない速さで移動し、次々に攻撃を受け止めていく。
サヤと協力し、ワタルは強力な蹴りをゼフィルに放つ。
しかしその攻撃も彼の肉体によってはじかれてしまった。
ゼフィルは余裕の表情で、2人を眺めている。
そして、 彼はその大きな腕を振り下ろした。
ワタルは間一髪で避けるが、その風圧で吹き飛ばされてしまう。
洞窟の岩壁に打ち付けられ、そのまま倒れ込んでしまうが、なんとか意識だけは保つことができた。
このままでは負ける。なんとかしてこの状況を切り抜けないと……
彼の心のなかで焦りが募っていくのを感じていた。
タクトはピクリとも動かない。
彼の足元には、おびただしい量の血が流れている。
サヤはその血を見て、パニックを起こしかけていた。
ワタルが心配で、彼の元へと向かおうとするが、それをゼフィルが止めるように立ち塞がる。
身の回りにあるものを投げて少しでもダメージを与えようとするが全て吸収されてしまう。
時間だけがいたずらに過ぎていく。
どうすればいいんだ……
そんな無力感だけが彼を支配していくのだった。
ゼフィルは、もう終わりですか?とつまらなそうに言い放つ。
ワタルは怒りを力に変え、攻撃に転じる。しかし、それは簡単に受け止められてしまった。
そして、彼はワタルの身体を片手で持ち上げた。
サヤが悲鳴をあげる。
その腕から逃れようとするが、ビクともしなかったのだ。
彼はそのままワタルを地面に叩きつけようとしたその時だった。
その手をすっと止めて無造作にぽいと放りなげる。
何が起きた…?ワタルは身体を起こすとゼフィルはヘラヘラと笑みを浮かべて言った。
「そこの獣人の娘。お前だけは生かしてあげましょう。我が天泣に力を貸しなさい。我らが優れた獣人こそが支配する理想郷を我らが手に収めましょう」
サヤは恐怖で、言葉を発することができなかった。しかし、彼女はそれでも必死に抵抗をしようと、ゼフィルに砂の魔法を放ったが、避けられてしまう。
そして、サヤの身体を片手で掴み上げると、その首筋に鋭い刃物を突き立てた。
サヤの絶叫が響く。
ワタルは意識を取り戻して、すぐにサヤを助けようとする。しかし、彼はそれすらも許さなかった。
「サヤと言うのですね。悪くない一撃だ…ますます貴方の力が欲しくなりました。命が惜しいでしょう…ならば手始めにこの男たちを貴方の手で殺して忠誠を示すのです!」
サヤは解放されたが、もはや恐怖で動くことすらままならない様子だった。
自分が弱いせいで、大切な仲間を死なせてしまう……その責任感と絶望感で涙が溢れ出ていた。
「ならばよろしい。あの青年からまず私がいただくこととしましょうか。」
ゼフィルはタクトに向かって指をさす。
そしてそのまま、一歩ずつ倒れた彼に向かって近づいた。
その行く手を阻むように、ワタルが両手を広げて立ち塞がる。
折れた剣を片手に跳躍力を上げ、地面を蹴り、ゼフィルに突撃する。
しかし、それはいとも簡単に止められてしまった。
ワタルはそのまま彼に馬乗りにされるように押し倒されて身動きが取れなくなる。
「予定が変わりました!貴方から養分になっていただきましょう!」
ゼフィルの胸の辺りが光る。
その時だった。タクトが力を振り絞って立ち上がり水の砲弾を魔法で放ったのだった。
見事にゼフィルの捕食するためにぽっかりと開いた腹部に命中する。
「うぐっ…なんということだ。」
「やはりそうだったか。お前は人間を吸収出来ても魔法は飲み込めない。サヤの攻撃を避けたのはそのためだろう!」とタクトが叫ぶ。
「あまり図に乗ると地獄を見ますよ!!」ヨロヨロと立ち上がり、そして、その大きな腕でタクトの身体を薙ぎ払った。
タクトは吹き飛ばされて、壁に叩きつけられる。
そのままぐったりと倒れ込んでしまった。
ワタルもなんとかして抜け出そうと試みたが、彼の力ではどうすることもできなかったのだ。
サヤはうずくまり、絶望的な光景を目の当たりにして震えてしまっていた。
そして、タクトが倒れたのを見て、絶望にうちひしがれてしまったのだった。





