1048話 女は強い
仲間の力を借りて上級神になった責任感と、<働神>の魂に刻みこまれた「とにかく働け」精神が合わさり、メグミは昇格の余韻に浸ることなく動き出した。
それを見た<農民><小鬼>同盟のメンバーとモンスター達も、慣れないリソース献上で疲れた身体に鞭打って、互いに「ラストスパート頑張ろう!」と声をかけそれに追随。
替えの効かない重役を担い、表にこそ出さぬものの視界がブラックアウトするまで働いたアスタリアは、仲間達の士気を下げぬよう明るく声をかけつつフェードアウト。
無茶をし過ぎた結果、式神の補助がなければ歩くことすらままならないほど消耗してしまったので、少し休んで気力・体力を回復する必要がある。
「(アスタリア、大丈夫かい?)」
「(平気ですよ。10分休めば後方支援ならできるようになるので、回復次第ソッチに合流します!)」
「(了解! 世話係としてサーシャちゃんを置いていくから、しっかり休んで調子を戻してくれ。頼んだよ、サーシャちゃん)」
「(はい! アスタリア先輩、ひとまずエネルギーをチャージしましょう! 大根おろしたっぷりの冷しゃぶとポーション、ここに置いておきますね)」
「(ありがとう! 美味しそうね〜。助かるわ♪)」
漆黒の労働観に染まった結果、アスタリアの無茶を「素晴らしい奮闘」と認識して「後は任せろ!」という思いで立ち去ったメグミ以外は、皆それなりに心配している。
だが彼女に寄り添いケアをする時間的余裕などないし、心配したところで「そんな暇があるなら戦え」とアスタリア本人に叱られるだけなので、代表のモンティートに対応を任せ……
モンティートも「自分は戦力。戦ってナンボ」という自覚があるため、同性かつアスタリアの弟子であるサーシャに後を託し、メグミに続いて前線へと向かった。
「(<恵のダンジョン>や私達のパーソナルデータを、外敵から護るための式神は配置済み。とはいえ、ダメージがこちらに来る"生贄方式"だから私自身の心身を保つのが最優先ね)」
極限状態であっても、モンティートと共に築いた鉄壁のガードを維持している彼女は……
笑顔でメグミ達を見送った後、守りの要である自身の調子を戻すべく、大急ぎで肉を食べポーションを摂取。
「(肉体的に若返っていて良かったわ〜。年寄りの身体じゃ、足腰の前にまず胃が辛いもの! いくら好きな大根おろしポン酢が乗っているといっても、若い胃じゃなきゃ"しゃぶしゃぶの大食い"なんて厳しいわよ)」
年齢的には大ベテランだが、アスタリアの肉体は若返りグラマーな美魔女になっているため、必要とあらばガッツリ食べられるし回復も早い。
「アスタリア先輩。追加のお肉は要りますか?」
「うん。あと20皿お願い〜。A5の霜降り肉じゃなくて、赤身肉のしゃぶしゃぶ希望で! あと胡麻ダレも欲しいわね〜。少しニンニクが効いたやつ、作ってちょうだい」
「かしこまりました!」
そのうえ無茶のし過ぎで魂を鍛え抜かれた彼女は、モンティート達と同じく器がしっかり育っており、体調が戻りリソースで満たされたら即中級神になれる状態にある。
その影響でいつも以上に健啖家となり、アスタリアの世話に慣れたサーシャが驚く勢いでしゃぶしゃぶ肉を吸い込み、みるみるうちに回復していった。
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愛弟子に尊敬の眼差しを向けられながら、自販機で買った高級和牛のしゃぶしゃぶを爆食し、アッという間に体力回復したアスタリアとは反対に……
<コピイ>を潰して絶体絶命の危機は去ったと思っていたところに、新たな天災に見舞われ生気を吸い取られた闇神は、心の中でかつての行いを悔いていた。
「(ハァ〜。どうして私は、こんなメンヘラ女共を抱いてしまったのだ! 口の裂けたキモいゾンビに生まれ変わってまで、私をATM化しようとするようなクソ守銭奴を、どうして……)」
口裂け女の元になった女神達は、自ら「抱かれたい」と言ったことなど一度もなく、力尽くで凌辱され無念の死を遂げた結果、成仏できず化け出てただけ。
なので闇神の後悔は根本からズレている訳だが、無意識のうちに格下を蔑み虐げる彼に自認を正せるわけがない。
「(こんな性悪女を抱くくらいなら、下界で広まっている"人形"に魂を込めて処理要員を創るべきだった! 過去に戻って、愚かだった自分の過ちを正したい!)」
そのため口裂け女にATM扱いされるたび、ひたすら「可哀想な自分」に同情し、酷い女達と関わってしまった過去の自分に恨み言を吐くことになる。
「ちょっと、そんなにジロジロ見ないでよ。胸元にばかり視線を向けて……この期に及んで、変態気質は直っていないのねー。あと、ちゃんと見物料払いなさいよ」
「ふざけんなっ、貴様の腐った胸に興味などない! そもそも貴様の素体になったその屍は、私の息子の遺体じゃないか!! なぜ金を払って男の胸を見なければならんのだ!!」
「なぜって……肉体が男でも、心が女なら立派な"乙女"だからよ。貴方も、生み出した鎧に開発されてオンナノコになった訳だし……分かるでしょう?」
「分からんし、分かりたくもないわ!!!!」
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