75話 ゾンビよりも手強いかもしれない対象のこと。
『ちゅーわけでね、今は作戦中止なうなんだよ。今は制圧した駐屯地内の施設にいるんだ。困ったもんだねえ』
無線機からは、さほど困った様子のない古保利さんの声。
「なるほどお! 流石に無理ですもんねえ!!」
『そそそ、感電させやすいのはいいんだけどさ……これだとこっちまで感電死しちゃうし』
「ご安全にしてくださいねえ!」
『うん、安全第一さ。近くに『敵』もいないからね……っていうかなんか、声が聞き取りにくいね? 今何してんの?』
「ソーラーパネルを! 縛り上げてまァす!!」
ざあざあ……否。
どっじゃどじゃ降りしきる豪雨の中、俺は屋上の入口に置いている無線機に向けて怒鳴るのだった。
神崎さん! 濡れちゃうから中に入ってて……めっちゃキレッキレのバツ! が返って来た!?
詩谷から危険な雨中ドライブをして、神崎さんと式部さんと一緒に高柳運送に戻って来た俺。
国道から原野への田舎道に入った所でゾンビ共は打ち止めになったが、雨脚は一層強くなった。
それは高柳運送まで止むことはないどころかどんどん強くなり……駐車場から社屋へ入るだけで、俺達は風呂に飛び込んだくらいビッシャビシャになってしまった。
それで……子供たちとお土産のトウモロコシを美味しく食べて、就寝。
で、朝起きたら……というか、豪雨の音で5時前に起こされた。
部屋の窓から生まれて初めて級の大雨に見入るサクラを微笑ましく見ていると……神崎さんが部屋に来た。
『雨と風で屋上に設置したソーラーパネルが危ない』という言葉に、俺は早朝早々に豪雨の中で作業をする羽目になったというわけだ。
「ああ糞、加減しろよ馬鹿野郎ォ! ちょっとずつ小刻みに降れってんだ!」
大木くんが設置してくれたソーラーパネルが飛んでいかないように、結束バンドで細かく縛っていく。
街中には山ほどあるだろうが、折角ここまで設置してくれたのに壊れたら勿体ない!
『おけおけ、そっちも風邪ひかないようにね。神崎ちゃん、このまま式部ちゃんのとこまで持ってって~、ちょい報告あるから』
「了解です。田中野さん、お気を付けて!」
「はーい!」
ああ畜生、まるで津波だこいつは。
なんとか全体を固定して……仮止め完了!
これで大丈夫だとは思うが……念のために土嚢で重しをしておこう。
「わふ! わおん!」
「お父ちゃんは大丈夫だ! 飛ばされるといかんからサクラはハウス! ハウース!」
入り口で俺を心配そうに見ているサクラに釘を刺しておく。
子犬なんか毛玉よろしくコロコロ転がっちまうぞ、この状況じゃ!
「イチロー! テツダウ、テツダーウ!」
サクラの後ろから、キャシディさんが出てきた。
あら、いつもはまだ寝てるのに珍しい!
さすがは現役の軍人……こういう時は素早いな!
「『とんでもない雨ね! 素敵な服があって助かったわ!』」
……どこから調達したのか、彼女は目にも鮮やかなビキニ姿だった。
この状況ではむしろ合ってるのか……?
俺も上半身は裸で、下は短パンだから似たようなもんだが!
「あ~、コイツに重しを! サンドバッグ! ヒアー!」
「ガッチャ!」
屋上備え付けの倉庫に2人で走り、中から土嚢を取り出す。
用意しておいてよかった! ……でもなんでここの扉ベッコベコなんだ?
拳の形に歪んでるってことは後藤倫パイセンの仕業なんだろうが、扉を殴る稽古は勘弁してくれよ!
「えっほ」
「エッホ、ンフフ」
担ぎ出した土嚢を、ソーラパネルの足元に敷き詰めていく。
……よし、これだけ置けば大丈夫だろ。
しかしまあ……よく降るな、オイ。
汗はかいてるはずだが、雨にどんどん押し流されていく。
「サンキュー、キャシディ」
「『雨に濡れた筋肉がたまんないわね! 早起きは3ドルの得って本当ね!』」
むっちゃ喜んでるけどなんて言ってるか皆目見当がつかない。
まあ、元気だからいいだろう……
「せんぱーい! そっちは大丈夫ですか~!?」
こっちは大丈夫なので、倉庫の方に叫ぶ。
豪雨で全く見えないが、その中から声が返って来た。
「――パネルはしっかり固定してあるけえ、大丈夫じゃ! じゃけど馬房が雨漏りしとる! そっちが片付いたら手伝ってくれえ!!」
七塚原先輩だ。
俺は屋上に、彼は倉庫に行っている。
馬房が雨漏りだって? そいつは大変だ!
馬がいるんだからな!
「わっかりましたァ! すぐに行きます!!」「ワタシモ~!!」
「うわービッショビショ! おじさん、これタオルね~」
「サンキュー、璃子ちゃん」
屋上をしっかり施錠し、念のために扉の前に土嚢を置いて社屋に戻った。
すると、そこにはサクラと……タオルを持った璃子ちゃんがいた。
「キャシーおねえさんすっご! ビキニ超似合う~!『ボインボインだ! ハリウッド女優みたーい!』」
「『んふふ、武器はしっかり活用しないとね!』」
なんか話し込んでるな。
ササっと拭いて……着替えよう。
どうせすぐに濡れるだろうが、流石に倉庫で動くのに上半身裸は駄目だ。
「ちょっと着替えて外に出るわ。璃子ちゃんたちは中にいろよ?」
「はーい! ゾンちゃんたちをよろしくね!」
「おう、任しとけ!」
インナーと合羽でいいか、どうせ汗だくになるだろうしな。
「玄関にスポドリ置いとくからね! 頑張って~!」
璃子ちゃんの声を聞きながら、部屋に戻る。
この天気じゃ乾かないだろうから、とりあえず脱いだものは部屋に安置しとくか!
「ひひん! ぶるる!」
「よお、お前もこんな雨は初めてか? 前に妊婦さん連れて来た時よりも降ってるもんな~」
合羽に着替えて社屋を飛び出し、馬房に。
キャシディさんも流石に合羽を羽織って一緒に来た。
スッケスケの合羽だが、まあ問題ないだろ……なんでスッケスケ? まあいいか。
馬房では、ゾンちゃんがせわしなく歩き回っていた。
ヴィルヴァルゲは悠然と豪雨を眺めている。
以前にもこんなことを体験したことがあるんだろうか。
「先輩! どんな感じですか?」
馬房には、馬たちの他に七塚原先輩とエマさんがいた。
「おう、アレをみい」
指差す先には……あらら、天井からボタボタと水が落ちている。
「向こう側の雨漏りは放っておいてもええ。こっちのを先に塞ぐ必要があるんじゃ」
「了解です」
ありゃあ、たぶん屋根のボルトかなんかが錆びてるな。
この社屋はそんなに古くないが……経年劣化だろうか。
倉庫の屋根はトタンみたいだけど。
「スマンが田中野、登ってくれるか? わしは重いけえ、踏み抜くかもしれん」
先輩はたしかにそうだろうな……
「ええことに、倉庫にあったもんで修理はできるじゃろう」
ふむん……ブルーシートに、コーキング材があるな。
実家の倉庫を修理したこともあるし、大丈夫だろ。
脚立、脚立……っと。
「わしはエマさんと馬房の掃除をしよるわ。なんかあったら声かけえ」
「『頑張ってねイチロー! 後でハグしたげるわ!』」
「はーい……はい?」
すまんがアメリカ語はサッパリなんだ。
……よく見たらエマさんも水着じゃん、つなぎの下。
流行ってんのか?
脚立を持って豪雨の中に戻る。
うっわ、明らかに雨脚が強まってないか?
やめてくれよな……気分が盛り下がるぜ、朝っぱらから……
今が冬じゃなくって助かったお、凍え死んじまう。
「マカシテ~!」
どうやらキャシーさんが脚立を支えてくれるみたいだ。
よし、気合を入れてとっとと終わらせちまおうか!
「うぐぐぐ……よ、よし! これで完成!」
倉庫の屋根に上って、アタリを付けた場所にあった錆びボルトにコーキング材を塗る。
そして、その上からブルーシートをかぶせた。
屋根の頂点からの距離が近くてよかった……固定するにはこっからじゃないと意味がないからな。
小さい土嚢を縄で結んで、頂点から前後に垂らす……こいつを3セット置いておけば、まあ大丈夫だろ。
「どうすか先輩!」
「止まった! ええぞ田中野!」
先輩からのOKも出た、これで大丈夫か。
「ついでなんで、他の場所も見ておきますね!」
折角屋根に上ったんだからな、この機会に見て回ろうか。
足元に気を付けつつな……!
こんなんで大怪我なんかしたら、末代までの恥になっちまうぞ……!
「うお、水路が溢れそうだ……」
屋根は他に変な所はなかったが、視点が高くなったことで周りの状況がわかってきた。
正門の橋に、増水した水がバシャバシャ当たってるのが見える……!
大丈夫かな、魚ども……流れて、もとい脱走していかんかな?
まあ、今からではどうにもならんし……小学校跡の生け簀にもいるからまあ、大丈夫だろ。
消えたらまた釣ってくりゃいいしな。
ざあざあとよく降るもんだな、本当に……おん? 今ゴロゴロって聞こえたぞ?
うわ光った!?
いち、にい、さん、し、ご……音が来た! こいつは近いな!
撤退! 撤退~!!
・・☆・・
「きゃふ、わふ……くぅん!」
「おお、光ったなあサクラ……う~あったか」
馬房で毛布にくるまり、さらにサクラを抱っこしている。
彼女は稲光に怯えているが、俺がいるからパニックってほどじゃない。
「フシュ」
同居人のヴィルヴァルゲが、毛布から露出した頭にちょっかいをかけてくる。
ゾンちゃん? 朝霞くらい俺にくっ付いて震えてるよ。
お前もあったけえなあ……
「灯油ストーブ、最高……」
馬房の片隅に設置したストーブから、とてもいい熱気が来る。
いやー、ほんとなんでもあって素敵だな、ここ。
屋根の修理を終えた俺は、濡れた服を脱いでパン一になっている。
風呂に入ろうかと思ったんだが、こっちで温まることにした。
ゾンちゃんがなあ、社屋に帰ろうとしたらひんひん鳴いて引き留めるんだもんよ。
あんなに可哀そうに嘶かれたら、ここにおらざるを得ない。
途中で我慢できなくなって豪雨の中を走って来たサクラを加えて、この状態になっている。
動物密度が高いなあ……最高だ。
「ほんと、すげえ雨だ……いつ止むんかねえ」
「ブルル、ヒィン」
そうぼやくと、ヴィルヴァルゲが『ほんとほんと』と言わんばかりに鳴いた。
日中のほとんどを放牧地で走っている彼女からしたら、この状況は嫌だろうなあ。
嫌そうに前かきを繰り返している。
「ゾンビの気配もわからんし……近所まで来てたら嫌だなあ」
あいつら、海を泳げなくて溺死? すんだからさあ……空気を読んで雨に溺れて死んでくれよ。
それくらいのサービス精神があっても罰はあたらんだろうによ。
「ままならん……ままならんなあ」
ままならんので、サクラを撫でる、撫でまくる。
「わふはふ」
雷は怖いが、撫でられるのは大好きなサクラ。
毛布の中で尻尾が大暴れしていてくすぐったい!
「ヒヒン!」
む、社屋のドアが開く音がした。
それに続いて、雨の中を走る音も。
「――わひゃーっ!?」
……一瞬で分かった、朝霞だ。
すぐに我が親戚が、合羽で飛び込んで来た。
「おう、おはよう朝霞」
「おっはよ! にいちゃん! 朝からゴクローサマだし!」
そう言う朝霞の河童は……でっかい。
七塚原サイズだな?
「朝ご飯持ってきたよ~! 一緒に食べよ!」
なんだ、中に朝飯入れてたのか。
「あ~……完全に忘れてた。ありがとな」
作業の疲れもあってな。
「うんしょ」
倉庫に置かれているテーブルを、こっちに持ってこようとしている朝霞。
おっと、手伝ってやろう。
「ヴィルママ~、ゾンちゃん! はい、飼い葉~! お水は……大丈夫だね!」
人間用の朝食を並べた後、馬たちの朝食を先に用意。
犬用の朝食はもう用意しているが、サクラは俺が食い始めるまで待つようだ。
うーん、できた娘よ……よだれがすげえけど。
「ひぃん!」「ブルル」
馬たちは朝食に取り掛かった。
ゾンちゃんも、怖いは怖いが腹も減ってるらしい。
いいこと、いいこと。
「んじゃ、あーしらも食べよ~」
本日のメニューは、握り飯と味噌汁、それにトマトとキュウリのサラダ。
このポストアポカリプス世界でなんと贅沢な事か……あ!
「やっべ、鶏小屋忘れてた!」
将来タマゴを提供してくれる大事なニワトリたちが溺れちまう!
「あ、だいじょぶ! ムガさんが防水は完璧だって言ってたし、あーしもさっき確認したから!」
「……でかした、お前は光のギャルだよ……」
とりあえず撫でておこう。
「んへへぇ、あと3時間くらい撫でてぇ~」
「餓死するからパス」
一瞬で調子に乗りやがるな、コイツ……
「わうぅ! わふるぅ!」
「ああ、ごめんなサクラ……ヨシ!!」
足元で抗議するサクラにOKを出すと、彼女は猛然と犬用ツナ缶にかぶりついた。
ごめんな、腹減ってたよな。
「じゃ、俺達も……いただきます!」「まーす!」
気付けば時刻は8時に近くなっている。
今日は荒れそうだからな、しっかり食っとかないと……お! この握り飯、シソとゴマがまぶしてある……大好物だ!
・・☆・・
「降るなあ」
「降るねえ」
「降りますなあ」
朝食を終え、食器を片付け……しばらく経った。
戻ろうとするとゾンちゃんがこの世の終わりくらい嘶くので、俺はまだ馬房にいる。
だが人間が増えた。
様子を見に来た璃子ちゃんと、それと一緒に来た式部さんだ。
朝霞? アイツはサクラを抱っこしてゾンちゃんと一緒におがくずベッドで夢の中だ。
無敵だよあのJKは……〇び太くんか。
今も世にも幸せそうな顔でむにゃむにゃ言っている。
ゾンちゃんも安心しているようだ。
「すっごい雨! ここに初めて来た時よりも!」
「例年にはないゲリラ豪雨であります……ゾンビなんてものが出るのです、天候くらい滅茶苦茶になりましょうなあ」
式部さんは泰然自若としてるなあ。
「他府県に北から抜けるルート、絶対崩れてますよね。南端の湾岸沿いもどうかな……」
北の高速道路は物理的に塞がってるし、山道は『レッドキャップ』の車両で封鎖されている。
この上南の道まで塞がったら……他府県からは、山を越えるか空でも飛ばんと無理だな。
ああ、あと海があったか。
「でも、この状況下だとむしろ安全か。旅行なんてしてる場合じゃないし」
「この県、田舎だと思ってたケドこうなると最強で最高かもね、おじさん!」
「璃子ちゃんは逞しいでありますな~。先が楽しみであります~、うりうり」
「きゃー! 髪が~! あははは!」
式部さんが璃子ちゃんをもみくちゃにしている。
なんか、こうして見ると姉妹……には見えんな、璃子ちゃん外見は完全に外人だし。
「だ~って、おじさんっていう超逞しい人が身近にいるからね~? 細かいことでクヨクヨすんのは勿体ないし! そんなことしてたら死んじゃうしね!」
なんとも、本当に逞しくなったなあ……璃子ちゃん。
最近じゃライフルから散弾銃までバンバン撃つし……
「はぁ……外で非合法なお薬で逃避してる連中に見習って……もらわんでもいいか。無理だもう無理」
「あの連中はもう無理であります。ただでさえあのお薬類は依存性がストップ高なのであります、こんな状況で手を染めてしまっては……無理無理無理かたつむりであります」
ニコニコしてるし、声は朗らかだけど……式部さんってこういうとこ結構シビアな。
俺もそうだがね……身内意外に目を向けてる暇なんざねえよ、マジで。
……この生活が始まってから『身内』の範囲が広がったからな……
「……生きてっかなあ、親父たち」
「新婚旅行について行ってるんだっけ? 心配だねえ、おじさん」
璃子ちゃんには何かの拍子で教えてたな、そう言えば。
「ま、初手でゾンビになってないなら大丈夫だとは思うけどなあ……親父、アウトドア好きだし」
「外国でしょ?」
「船舶免許も持ってるから、あの親父なら最悪クルーザーとか乗って帰ってくると思う」
妙なバイタリティがあっからなあ、我が一族。
少なくとも、ゾンビが発生してパニックのまま死ぬ……とかは考えにくい。
希望的観測だが、まあ……なるようにしかならんか。
「おじさんのお父さんお母さんが帰ってきたら、私もしっかり挨拶しないとね! えっと……『ふつつかものですが~!』って土下座すればいいんだっけ?」
「全体的に間違ってる。もっと勉強しなさい」
それを言うなら三つ指ついてだし、そもそもキミは俺の嫁さんになるわけじゃないでしょ。
「むがー! 勉強きらーい!」
「それでよく考古学の勉強したいとか言うよなこの子……」
「いーの! 好きな勉強なら苦じゃないんだから~!!」
へいへい、そうですか。
「(ご挨拶……一朗太さんのご両親に! ご挨拶!)」
「ヒヒヒン!?」
式部さん!? なんでおがくずの中を高速横回転してるんですか!?
何、何の修行!?
ヴィルヴァルゲが垂直にジャンプしたぞオイ!? なんだ今の動きは!?
朝入れ替えたから綺麗なおがくずだけどさ……
「おじさんが一番面白いけど、ここって他にも面白い人多いよね~?」
失敬な。
俺のどこに面白要素があるというのか。
「朝霞おねーさんとか」
「それには同意する……アレどんな状況だよ」
璃子ちゃんが指差した先。
朝霞はいつの間にか隅にあるおがくずの山に頭を突っ込んで爆睡している。
サクラまで半分埋まってるじゃねえかよ……ゾンちゃんは落ち着いてるからいいけどさ。
「……今日の昼飯はなんだろな」
「あは! おじさんの食いしんぼ! たぶんトマトスパゲッティじゃないかな~? 缶詰、そろそろ賞味期限だし!」
「最高だな、最高」
粉チーズもパスタも、業者くらい在庫があるからな……周辺で麦も育てるらしいし、ゆくゆくは自家製パスタも食えそうだぜ。
素敵な避難所だなあ……! 狙われないように気を付けよう!
「あ! 正門のとこ見て見て! ブラックバスがムッチャ撥ねてる!」
正門とほぼ同じ高さになった水面で、たしかにブラックバスらしき魚体がパシャパシャしている。
元気で結構! 次に食うまでそうやって体を絞っておいてくれ!
「しちゃう? 釣りしちゃう?」
「雷鳴ってんだから駄目。ウチにあるのカーボン製ロッドばっかりだしな」
釣具屋で高いのばっかり回収したしな。
「どっこいせっと」
おがくずに寝転がる。
雨が止むまで……か、どうかはわからんがしばらく寝ていよう。
今日は朝ムッチャ働いたからな……罰は当たるまいて。
ふわああ……うお!?
横向いたら式部さんが超至近距離にいた!
心臓に悪いなあ……睫毛なっが。
「私も寝る寝る~! おがくずベッド最高~……ふわあ」
璃子ちゃんも加わり、俺達は3人仲良く惰眠を貪ることにした。
「フシュ、フシュ」
「やめろお前おい」
的確に鼻をつつくのをやめろ! 日本ダービーの勝ち馬めが!
コイツ最近慣れてきてどんどん地が出てきてる気がする!
ああもう、娘ともども元気に過ごせよな!
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